スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

Wi-Fiに対応したモバイルタイプのScanSnap

Wi-Fiに対応したモバイルタイプのScanSnap

 今回のブツはPFUのドキュメントスキャナー「ScanSnap iX100」(以下、iX100)。2014年6月20日に発売予定の製品だが、個人的にちょ~っと興味深い仕様だと感じたので、発売前に実機をイジくってみた。

PFUの「ScanSnap iX100」。Wi-Fi/USBに対応し、書類などをパソコンやスマートフォンやタブレットなどへスキャンできるドキュメントスキャナーだ。サイズは約27.3×4.75×3.6cmで、質量は約400g。PFU直販サイトでの価格は2万1112円(税抜)。本体とは別売となるが、ソフトケースが2700円(税抜)で発売されるほか、ハードケースも7月下旬に発売される

 iX100のどこが興味深かったのかと言えば、Wi-Fi対応という点。大雑把に言えば、「パソコンやタブレットなどと無線接続できるコンパクトなScanSnapがあればイイのになあ」と思っていたんだが、まさにそういう仕様のScanSnapであるiX100が登場したというわけだ。

 ところで、現在使っているScanSnapは3台。ややハードなビジネス用途および自炊向けのドキュメントスキャナーとしてド定番の「ScanSnap iX500」、「非接触・非破壊スキャナー」こと「ScanSnap SV600」、そしてコンパクトでありかつUSBバスパワーで使える「ScanSnap S1100」である。

 俺の場合、本や雑誌の自力での電子化すなわち自炊をやっていたが、最近は「自炊しきった」感じ。なので現在、自炊と言えばコレ的なスキャナーの「ScanSnap iX500」の出番は少なくなっている。

 その先進性から一時期無闇に使った「非接触・非破壊スキャナー」の「ScanSnap SV600」は、正直あまり使っていない。大きな原稿や立体的な原稿のスキャンを手軽に行えて便利だが、そういう原稿自体も既にスキャンしきってしまった感じ。

 そして小型の「ScanSnap S1100」。じつはコレがいちばん活躍していたりする。コンパクトでUSBバスパワー駆動というのが扱いやすい。いつもはしまっておいて、必要なときに出してきてパソコンにUSB接続すれば即使える。手差しで片面スキャン、毎分8面(A4)スキャン可能で、iX500などと比べると機能も性能も見劣りする感じではあるのだが、その手軽さから多用している。

PFUの「ScanSnap S1100」。コンパクトでUSBバスパワー駆動の手差し片面スキャナーだ。その手軽さが魅力。新型のiX100と比べるとサイズ感や外見はあまり変わらない

 で、新型のiX100。活躍中のS1100がWi-Fi対応し、さらに内蔵バッテリーで動くようになった、てな感じの機種がiX100だ。USBケーブルさえつなぐ必要がない(USBケーブルでつないでも使える)ってんだから、コレは便利なハズ!! というコトで前のめりで試用したわけですな。

 てなわけで以降、iX100の機能や使用感についてレポートしたい。が、ザッと使った俺的印象を先に言うと、かなりコナレ感のあるScanSnapだと感じられた。便利でイイっす。自炊などスキャンの速さが求められる用途には向かないが、ほか一般には向く汎用性の高さがある。Wi-Fi設定を含めた導入もヒッジョーにラクなので、初めて買うドキュメントスキャナとしてもオススメできるように思う。

iX100はこんなスキャナー

 まずはiX100の概要から。前述のとおりコンパクトなモバイル向けドキュメントスキャナで、サイズは約27.3×4.75×3.6cm、質量は約400g。ビジネスバッグにスコッと収まり、比較的に軽量で、後述のとおりバッテリー駆動なので持ち歩いてどこでも使える。出張なんかにも向きますな。

 インターフェースは、USBにもWi-Fiに対応している。パソコンとはUSB接続してもWi-Fi接続しても使え、スマートフォンやタブレットとはWi-Fi接続して使える。Wi-Fi接続形態は、Wi-Fiアクセスポイント/ルータを経由しての「アクセスポイント接続モード」と、iX100に直接機器を接続する「ダイレクト接続モード」を使える。

 なお、スキャンのためのアプリケーションは、ScanSnap本体購入時に1ライセンス付与される「ScanSnap Manager」と、無償で入手できる「ScanSnap Connect Application」がある。iOS端末やAndroid端末では、この「ScanSnap Connect Application」を使ってスキャンする。

iOS用「ScanSnap Connect Application」アプリの表示例。Wi-Fi経由でiX100からiOS端末へスキャンできる。スキャンデータ(PDF)はアプリ内に保存されるが、そのデータをほかのアプリで開くこともできる。アプリ上でiX100の設定も行える
左はWindowsパソコンからScanSnapを使える「ScanSnap Manager」。右はパソコン上でスキャンデータを管理できる「ScanSnap Organizer」

 iX100のスキャン解像度は最大600dpiで、スキャン速度(A4縦方向)はカラー/300dpiまでが1枚あたり5.2秒、カラー/600dpi設定で1枚あたり20.4秒かかる。前述のS1100は、カラー/300dpiで1枚あたり7.5秒だったので、けっこー高速化してますな。

 A4のカラー原稿を300dpi設定でスキャンしてみた印象は、まずまず速いという感じ。手差しなので枚数が多いと手間がかかって少々面倒だが、10枚程度までなら大したストレスにはならない。手差ししつつ10枚スキャンしても、まあ手作業まで含めて2分もあれば終わるというイメージですな。ライトユースのスキャナーとして、速度的には十分実用的だと思う。

 画質だが、以下に各dpi値でA4原稿をスキャンした結果があるのでご参照いただければと思う。画像は、左からスキャンデータ(JPEG)をリサイズしたもの、テキスト部分のドットバイドット画像、図表部分のドットバイドット画像とした。原稿は「DOS/V POWER REPORT」誌の2014年7月号26ページだ。

画質設定「ノーマル/カラー150dpi」でのスキャン結果。だいたい読めればいいというレベルなら、この設定でも十分ですな。ただ、図表の細部の文字は読めないこともある
画質設定「ファイン/カラー200dpi」でのスキャン結果。200dpiを超えると、可読性を確保しつつ様々なドキュメントをスキャンできる
画質設定「スーパーファイン/カラー300dpi」でのスキャン結果。十分高い可読性をもってスキャンできる。この設定が画質面でもファイルサイズ面でもいちばんいいような
画質設定「エクセレント/カラー600dpi」でのスキャン結果。非常に小さなグラフィックまで確認できる。テキストの「お」「よ」の上部の残像のようなものは、原稿にはない影だ。紙送りが一瞬滑ったのかもしれない

 てな感じで、解像感も発色も、ドキュメントスキャナーとして使うなら問題ナイ感じ。「エクセレント/カラー600dpi」でのスキャンでは、紙送りが一瞬滑った(!?)ことからくる滲みのようなものが出た。手差しなので原稿が斜めに入ったからかも!? でもまあ、ここまで拡大して読むことはないので、大きな問題ではない気がする。

 それから電源。前述のとおりiX100はバッテリー駆動だが、満充電からA4カラー(片面)のスキャンを最大約260枚行えるとのこと。なお、バッテリーへの充電はUSB充電。

 ちなみに、電源は内蔵バッテリーのみで、PCやUSB ACアダプタなどとUSB接続すればバッテリーへの充電はなされるが、USBバスパワーを電源として駆動することはできない。このため、充電中であってもバッテリー残量が少ない状態でiX100に大きな負荷がかかると、バッテリーへの充電が間に合わず、バッテリー残量がなくなってiX100を継続使用できなくなることがあるそうだ。

 ただし、5V/1.5Aの電力を供給できるUSB ACアダプタを使えば、バッテリーの電力消費速度を上回って充電可能なので、「充電しつつ使用できる」とのこと。1.5A出力のUSB ACアダプタは市販品にも多い。また、PFUダイレクトではこの条件を満たすUSB ACアダプタとして「USB電源アダプタ FI-X10AC」が1800円(税抜き)で販売されている。

あーら簡単♪ ほぼお任せのセットアップ

 iX100を使ってみて、「あれ? こんなだっけ!?」と思ったところがある。それはセットアップの簡単さだ。こーんなに簡単に、全体的にインストーラ任せで、できるモンだっけ? みたいな。パソコンを使ってのセットアップでそう感じたのだが、とりあえずそのスクリーンショットを追いつつ説明してみたい。

 あ。セットアップの簡単さとかに興味のない方は、この章、読み飛ばしちゃってください。iX100買おうかナ~でもWi-Fiとかの設定面倒だったらヤだな~、てな方はぜひお読みください~。

iX100付属のソフトウェアインストール用CD(Windowsパソコン用)。パソコンとiX100をUSB接続して設定していくわけだが、インストール(セットアップ)を開始すると、ウィザード形式で指示や説明が表示される
Windowsパソコン用スキャンアプリの「ScanSnap Manager」がインストールされる。このソフトとiX100を組み合わせて正しく動作するかどうかのチェックも、ウィザード形式で進んでいく。問題なくセットアップできたようだ
次いで、Wi-Fiの設定。設定の前に、iX100の無線LAN機能は、どんな機材やシチュエーションでどう使えるかが説明される。この調子で、説明書の類をほとんど読まずに、このウィザードだけでiX100の使い方を理解していける
説明が終わるとWi-Fi設定に移行。指示通り進めればOK
Wi-Fi接続設定は手動(SSIDの選択とセキュリティーキーの入力)で行ったが、WPSを使った自動設定も行える
パソコンとiX100のルータ経由の無線接続設定は自動で行われる
ハートマーク入りで完了の通知が。あらニャわいい(←カワイイの意)。次いでモバイル機器とiX100の接続設定に進む。モバイル機器にアプリをインストールして設定を進めよ、との指示が
指示通りに「ScanSnap Connect Application」をインストール。そして起動する。モバイル端末とiX100はWi-Fiルータ経由で接続されている
アプリにパスワードを入れればモバイル機器の設定完了。Wi-Fiルータ下であれば、モバイル機器からiX100を使ってスキャンできるようになった。出先にてモバイル機器とiX100を接続する方法もウィザード上で説明される

 てな感じで、ほとんどセットアップウィザード任せで設定を完了できるiX100なのであった。唯一、モバイル機器とiX100を直接接続するダイレクト接続モードを使うには、モバイル機器からアクセスポイントとしてのiX100を探し、iX100背面に書かれたセキュリティーキーを入力する作業が必要だが、他は至って簡単……というか、迷うところがないくらい容易&平易に設定を済ませられる。

 じつは、iX100には「スタートアップガイド」という情報量の少ない説明書きくらいしか、説明書らしきものが付属していない。ので、開梱すると「え? なに!? どうすればいの?」と焦りがち。

 しかしそのスタートアップガイドのとおり、インストールCDを起動してみると、セットアップウィザード上の表示から知りたいことが次々とわかる。iX100本体の電源の入れ方、スキャンに使うボタンやソフト、Wi-Fi接続モード、スキャンをパソコンでするかモバイル機器でするかの切り替え等々、わかりやすく的確にユーザーへと伝えてくれちゃうんであった。よくできてますな。さすが老舗のコナレ感という印象である。

家でも外でも「ちょっとしたスキャン」が即デキてイイ♪

 iX100を自宅や出先で使ってみると、意外なほどのスムーズ感があって良い。使用時にボタンをどうこうしたり、モードを切り換えたり、みたいな面倒が非常に少ない気がする。

 たとえば、自宅でiX100に電源を入れると、設定済みのWi-Fiアクセスポイントへと自動接続する。ので、パソコンで「ScanSnap Manager」を使うなり、設定済みのモバイル機器上の「ScanSnap Connect Application」アプリを使うなりして、スキャンすればいい。

 この切り換えも容易で、モバイル機器へスキャンしたい場合はモバイル機器上で「ScanSnap Connect Application」アプリを起動すればいい。そうすればiX100は自動的にモバイル機器と接続する。このアプリを起動していなければ(アプリを終了すれば)、iX100は自動的にパソコンと接続されて、パソコンへスキャンできるようになる。文字で書くとちょっとわかりにくい感じがするが、実際に行うと「スキャン先のデバイスを選ぶために操作の類がほとんど要らずにでラク」というイメージだ。

 もちろん、外出時に一度iX100とモバイル機器を接続していれば、つまり自宅のWi-Fiアクセスポイントから離れれば、iX100とモバイル機器が自動的に接続する。モバイル機器がインターネット接続のためのWi-Fiアクセスポイントにつながってしまうこともあるわけだが、その場合は手動でモバイル機器をiX100につなぐことになる。

 こんなふうに、Wi-Fi周辺の細々した使い勝手が良いわけですな。接続先切り換えとか、Wi-Fiのオンオフみたいな操作を、ユーザーに極力させないスキャナー、てな感じ。

 あとのこスキャナー、ちょっとイイ感じのスキャン機能が2つある。「見開きページを自動合成」機能「デュアルスキャン」だ。各機能が具体的にどんなモノかは、それぞれのリンク先をご覧いただきたい。

 まず「見開きページを自動合成」機能だが、A4サイズのカタログなど、の、見開きページを1枚としてスキャンできるというもの。片ページずつスキャンして、前述の「ScanSnap Manager」上で自動認識・自動合成する。結果、A3サイズの原稿をスキャンできたことになる。たま~にA4の雑誌やカタログの見開きページをスキャンしたいと思うので、これはちょいと便利ですな。なお、この機能は「ScanSnap Manager」によって実現されている。ので、パソコンへのスキャンのときにしか利用できない。

 ちなみに、原稿を半折りにしてスキャンするわけだが、キャリアシートのようなものに原稿を挟む必要はない。半折り状態があまり厚い原稿は送り込めないが、一般的なカタログ程度ならキャリアシート等に挟まなくても問題なく原稿が送り込まれる。

 もうひとつの「デュアルスキャン」機能。これは名刺やレシートなど、小さめの原稿を2枚同時に読み取れるというもの。2枚同時に読み取らせても、それぞれを別の原稿だと自動認識してくれるので、2枚はそれぞれ別ページとして保存される。

 この機能、「同時に2枚」ということで、枚数に限りはない。ので、右手と左手で次々と原稿を手差ししていくようにすれば、たとえば何十枚もの名刺を連続的にスキャンしていける。ADF(オート・ドキュメント・フィーダー)ならぬMDF(マニュアル・ドキュメント・フィーダー)? 名刺やレシートなどの原稿を巧く連続手差ししてやれば、かな~り効率よく小サイズ原稿を連続スキャンしていけて、けっこー実用的な機能だ。また、この機能はパソコンへのスキャンでもモバイル機器でのスキャンでも使える。

 ただし、片面スキャンなので、名刺の両面を効率良くスキャンするような用途には向かない。また、iX100のスキャン速度は「A4縦方向/300dpiまでで1枚5.2秒。A4サイズでこの速度。けっこー速いので、名刺などは1秒くらいでスキャンしきってしまう。うかうかしているとスキャン速度に手差しが追いつかないこともありがちではある。

 てな感じのiX100。全体を通して感じるのは、思い立ったときにすぐ使える利便だ。「あっこの資料、今スキャンしちゃおう」「このメモ、サッと電子化しちゃおう」というようなコトを、億劫がらずに即ヤレる。こういう即時性は、バッテリー駆動でありかつ小型軽量で場所を取らないドキュメントスキャナーの良さですな。

 俺的には、iX100にさらにメモリカードスロットがあって、スキャン先がパソコンやモバイル機器だけではなく、本体内にもスキャン可能になって欲しい。つまりブラザーの「JUSTIO MDS-820W」みたいに、iX100単体でも利用できたらさらに嬉しいんだけどナ~、的な。

 でもiX100、前述の「ScanSnap S1100」と比べると、使い勝手的にかな~り進化している。スキャン速度も十分速くなったし、画質も上々、機能的にも洗練されている。そのあたりはサスガのPFU、ドキュメントスキャナー本家の安定感といったところか。

 これでお値段……直販価格が2万1112円(税抜)。その実用性を考えると十分買いやすい価格のモバイルドキュメントスキャナーだと感じられる。ので、汎用性が高いドキュメントスキャナーが欲しいという方はぜひ一度iX100をチェックしてみてほしい。

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。