スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

単体で使えるA4モバイルスキャナーが便利な件

単体で使えるA4モバイルスキャナーが便利な件

 2014年5月20に発表されたブラザーのドキュメントスキャナー「JUSTIO MDS-820W」(以下、MDS-820W)。ニュース記事を読んだときは「ふーん」とだけ思った。のだが、考えてみたら「これかなり便利かも!?」と思ったので借りて試用してみた。

ブラザーの「JUSTIO MDS-820W」。内蔵バッテリーで動作する片面読み取り/手差しのドキュメントスキャナーで、カラー/グレースケール/モノクロのスキャンに対応する。解像度は最大600×600dpi。サイズは約幅30.8×奥行き5.25×高さ4.07cmで、重さは約480g。スキャンデータ保存先は本体に挿したSDメモリーカード。スマートフォンなどからWi-Fi接続してスキャンデータを閲覧可能。実勢価格は2万円前後

 MDS-820Wのどの点を「これかなり便利かも!?」と思ったのかと言うと、純粋に「単体でスキャンできる」ということ。PCやスマートフォンなどの端末と接続せず、MDS-820Wだけでドキュメントをスキャンできる。こういうコトができるスキャナーって案外少ない。

 ちょっとしたドキュメント(って言うかペラ1枚の説明書やメモ書きとか雑誌の1ページとかチラシ1枚とか)をスマホで写真撮って「一応これで内容読めるからスキャンしなくていいや」などとヤッてる俺。このスキャナーがあればスマホと同程度手軽に手元の紙類を電子化できそうだし、スマホでの撮影と比べたらずっと高精細にスキャンできるハズ、と思ったんですな。

 もうひとつ、電源が内蔵バッテリー(リチウムイオン二次電池)であることと、モバイル可能なサイズであること。満充電から約450枚のスキャンが可能だそうだ。サイズは約幅30.8×奥行き5.25×高さ4.07cmで、重さは約480g。十分モバイルできますな。

 実を言うと、出先でスキャナーを使おうと思ったわけではない。前述のようにちょっとした紙類を手っ取り早くスキャンしたいと思ってMDS-820Wに興味を持ったのだが、この電源とサイズなら手軽さUPかも、と思ったのだ。

 要はですね、ちょっとした紙類をスキャンするためにスキャナーを引っ張り出してきてACアダプタつないで……というのがメンドクサイわけですよ。でも、MDS-820Wなら、不使用時は本棚か引き出しに入れといて、パッと出してきて電源オンで即使えそう。使うまでの手間がないので、思い立ったら即使えそうだと思ったのである。

 もうひとつ、スキャンデータ保存先がSDメモリーカードである点。SDメモリーカードならいろいろな機器で読めるから、汎用性が高そうだな~と思ったわけですな。

 そんなスタンスで試してみたMDS-820W。以降、その使用感などをレポートするが、とりあえずの結論から言っちゃうと、コレすっごく便利っす♪ 「自炊はしないけど、週に数枚~十数枚、書類をスキャン保存したい」みたいな人にとってはかな~り重宝すると思う。

 両面スキャン非対応でスキャン速度も速くないのだが、「単体で使えるバッテリー式のスキャナー」という仕様がいろいろな面倒を取っ払ってくれている感じ。また、SDメモリーカードを使う点も良い。後述するが、じつはSDメモリーカード経由でiPadともイイ感じで連係してくれちゃうのだ。

ライトユースには実用的なドキュメントスキャナー

 まずはMDS-820Wの概要から。前述のとおり片面読み取り/手差しのA4ドキュメントスキャナーで、原稿サイズは幅55~215.9mm/長さ90~812.8mmに対応する。本体のサイズ/質量から、モバイル用途に使うのも現実的だ。電源は内蔵バッテリーで、満充電から約450枚のスキャンが可能となっている。バッテリーは交換可能。バッテリーへの充電は、本体のmicroUSB端子からUSB充電する。

 スキャン解像度などの設定は、本体のボタンおよび液晶パネルで行う。本体での設定は、スキャンモード(COLOR/MONO)。スキャン解像度(HQ;600dpi/STD;300dpi)、スキャンデータ保存形式(PDF/JPEG)あたりが行える。なお、前述のとおり、スキャンデータは本体に挿したSDメモリーカードに保存される。

本体右側に操作部と電池室がある。本体左側背面には充電用/PC接続用のmicroUSBポートとSDメモリーカードスロットがある

 スキャン速度は、カラー/モノクロとも300dpi(まで)が1枚8秒(片面)で、600dpiだと1枚15秒(片面)となっている。実際に試した印象としては、自炊向けの高速ドキュメントスキャナーなどと比べたら「遅い」という印象になる。が、A4数枚くらいのスキャンなら、300dpi(8秒)でも600dpi(15秒)でも「まあこんなモンだろ」とイラつかずに待てる時間だと感じる。

 ちなみにこのスキャナー、電源ボタン押したらすぐ使える状態になる。ので、MDS-820W本体を机上に置いて電源ボタンをポンと押して原稿を差し込めばスキャン開始というイメージ。置いてから使用開始までの手間が非常に少なくクイックにスキャンを開始できる。ので、実際に使ってみると、8秒や15秒のスキャン時間がかかるものの、「あらもう済んだ♪」という手っ取り早さ的な印象のほうが強い。

 次に、どんな品質でスキャンできるのかを少々。「DOS/V POWER REPORT」誌の2014年7月号26ページをスキャンしてみたので、その結果を画像でご覧いただきたい。

600dpi/JPEGでスキャンした結果。左が全体をリサイズしたもの、中央と右が各部のドットバイドット画像。十二分な解像度がある
300dpi/JPEGでスキャンした結果。左が全体をリサイズしたもの、中央と右が各部のドットバイドット画像。図表の非常に小さな文字は若干見づらいが「読めない」というレベルではない。ドキュメントスキャナーとしては問題なく実用範囲だと思う

 フツー的なドキュメントをスキャンするなら、300dpiで十分ツカエルって感じですな。300dpiだと1枚(1面)8秒でスキャンできるので、日常のちょっとした紙書類のデジタル化をサクッとこなしてくれそうだ。

 俺の場合、「これスキャンしておきたいな~」と思う紙類は、たとえばメモ書きやハガキ、数枚の通知、チラシ、小さいサイズの説明書あたり。あーあと雑誌の特集記事数ページとかも。

 メモ書きは用事が終わったら捨てがちではあるが、後から見かえす必要が出て「あーアレ捨てちゃった~」となることもアリガチ。バックアップを取っておきたいんですな。ポストイットにメモ書きすることが増加中なのだが、MDS-820W付属のキャリアシートに挟めばノリ付き付箋紙も問題なくスキャンできる。雑誌や新聞の切り抜きなど、不定型な紙類も同様ですな。

 あと、契約番号とか問い合わせ番号とかそーゆー「一応取っておかなきゃならない情報」が書かれた紙類。あるいは申込書とか控えとか、これまた「一応は保存しておくべき書類」あたり。MDS-820Wならそーゆー紙類を逐一デジタル化していけそう。枚数の多いスキャンには向かないが、ちょっとした日常使いにかなり便利そうな予感だ♪

スキャン方法と閲覧方法

 MDS-820Wでのスキャン方法は、基本的に2通りある。ひとつはMDS-820W本体のみでのスキャン。電源入れて原稿を差し込むと自動的にスキャンが始まり、スキャンデータを本体内のSDメモリーカードに保存してくれるんですな。

 もうひとつは、PCとUSB接続してのスキャン。スキャンのための専用ソフトである「Mobile Document CAPTURE」を使って、一般的なスキャナーと同様にスキャンするという使い方だ。MDS-820W本体上ではできない細かな設定を変更しつつスキャンをしたいなら、PCと接続して使ってネ、的な。

MDS-820WをPCとUSB接続して使う場合、付属の専用ソフト類をインストールする。PCを操作してより細かな設定をしつつのスキャンができる

 ちなみに、PC用の「Mobile Document CAPTURE」を使ってスキャンした場合は、ドキュメントに対して傾き補正処理が施される。が、MDS-820W本体のみを使ってスキャンした場合は、残念ながら傾き補正処理は行われない。ただし、MDS-820W本体のみを使ってスキャンした後、スキャンデータ(ファイル)を「Mobile Document CAPTURE」で認識させれば傾き補正処理が施されるとのことだ。

 それから、スキャンデータの閲覧方法。スキャンデータはPDFもしくはJPEGといったファイル形式で「SDカード上に保存される」ので、ぶっちゃけた話、SDカードが読めてPDFやJPEGを開ける環境ならなんでもOK。SDカード経由なら、一般的なノートPCでスキャンデータを閲覧できますな。

 MDS-820WはWi-Fi対応で、Wi-Fi経由でスキャンデータを閲覧することもできる。具体的には、MDS-820W(Wi-Fiアクセスポイント)に対してPCやスマートフォンでWi-Fi接続すれば、Webブラウザや「ScanHub」アプリ(WebDAV用クライアント/iOS用もAndroid用もある)を使ってMDS-820Wに挿したSDメモリーカードの内容を読める。ブラウザからMDS-820Wの設定を変更することもできる。

Wi-Fi接続でiPad AirからMDS-820Wにアクセスした様子。Webブラウザを使ってSDカード上のスキャンデータを参照できる。MDS-820Wの設定変更なども行える
iPad Airで「ScanHub」アプリを使っているところ。これもまた、Wi-Fi接続したMDS-820W上にあるSDメモリーカードの内容を参照できる

 スキャンデータをSDメモリーカードに保存する、という仕様はイイっすネ。スキャンデータを読み出す方法がいろいろあるという利便が良い。SDメモリーカードはいろいろな機器で使えますからな……と思ったところで、ひとつ試してみたいことが浮かんだ。

iPadにスキャンデータ取り込めたりする?

 試してみたのは、「MDS-820WのSDメモリーカードを抜いて、iPad用SDカードリーダーを使って、スキャンファイルを直接iPadに読み込ませる」ということだ。iPadシリーズって、デジカメのSDカードの画像を直接読み込めるアクセサリがある。「Apple iPad Camera Connection Kit」とか「Lightning - SDカードカメラリーダー」とかですな。これらを使うと、MDS-820Wのスキャンデータが入ったSDメモリーカードを、iPadから直接読めるかも!? と。

 そんなコトを思ったのは、MDS-820Wで使ったSDメモリーカード内のフォルダ階層を見たから。SDメモリーカード内に「DCIM」フォルダが作られて、そのなかにスキャンデータが書き込まれていたのだ。

MDS-820Wで使ったSDメモリーカードをPC上で開いてみた。ら、DCIMフォルダがあったりして、デジカメで使ったSDメモリーカードのフォルダ階層と同じような……。

 このスクリーンショットのようなフォルダ階層を見ると、「スキャンをJPEG形式で行っていればiPadに読み込めちゃうんじゃない?」とか思いがちですな。で、試してみた結果、フツーに読めちゃいました♪ なお、試したのはiPad Airと「Lightning - SDカードカメラリーダー」の組合せのみ。ほかは試していないが、なんかデキちゃいそうな予感ではある。

iPad Airに「Lightning - SDカードカメラリーダー」をつなぎ、そこにMDS-820Wで使ったSDメモリーカードを挿したら……あらスキャンファイル(JPEG)がズラリと。もちろん、それらファイルをiPad Airに読み込めた。Retinaディスプレイでのドキュメント表示はヒッジョーにキレイ♪

 あ~ら便利♪ スキャンデータの読み込みはWi-Fi接続時より速いし、アダプタとSDメモリーカードを使うだけなので手間も大してかからない。それに、iPad AirなどにJPEGファイルとして読み込めるということは、フォトストリームでほかのiOS端末やMacでも共有できるということになる。

iPad Airに読み込まれたスキャンファイル(JPEG画像)は、PCのフォトストリームフォルダにも現れる(左)。手持ちのiPhoneのフォトストリームにも自動的に現れた(右)

 MDS-820Wでスキャン→SDメモリーカード内のスキャンデータ(JPEG)をiPadで読み込む→iOS端末やMacやWindows PCでもスキャンデータを共有完了♪ って、なんか、手軽なわりには凄く活用幅広くて実用性高くないすか? てゅーか、iPad使ってる人にはとりわけ刺さる気がするMDS-820W。

 そう言えば、こないだtwitterのタイムラインに「子どもが学校から持ってくる通知書類をササッとスキャンしたい、けど、自炊用とかそういう本格的なスキャナーは置く場所ないし高いんでイヤ」的な話題が流れていた。そーゆー人にはMDS-820WとiPadとSDカードカメラリーダーの組合せがハマるのかもしれない。

 そんな感じのMDS-820W。小型軽量&バッテリー駆動なのでいつでもどこでも使えるし、単体でスキャンできるし、PCやスマートフォンとの連係もフツーに可能。スキャンファイルの保存先がSDメモリーカードなので、制限のない幅広い利用も容易だったりする。

 なお、上記のiPad連係についてはメーカー保証外でありつつメーカーも把握していない利用法だったので自己責任でアレしてナニして欲しい。でもこういうコトまでデキちゃうドキュメントスキャナーってなっかなかないと思うので、興味のある方はぜひ一度チェックしてみてほしい。

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。