エルゴで無線でテンキーレスのArc Keyboard

スタパ齋藤
1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコ ンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称 衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。


エルゴで無線でテンキーレスのArc Keyboard

 先月末、2010年2月26日に発売されたマイクロソフトのMicrosoft Arc Keyboard。ちょっとコレ良さそうかも~、とか思ったので早速試用してみた。

マイクロソフトのMicrosoft Arc Keyboard。テンキーレスのワイヤレスキーボードで、本体色はブラックとホワイト(日本限定カラー)がある。実勢価格は4900円前後

 良さそう、と思ったのはテンキーレスでありかつワイヤレスである点。てか、案外ナイんですよ、ワイヤレスで使えるコンパクトでマトモ感のあるキーボードって。それにこのキーボード、外見的にもステキな感じ。

 さておき、まずはMicrosoft Arc Keyboard(以下、Arc Keyboard)の外観から。Arc(h)の名のとおり、アーチを描いた形状が特徴的ですな。マイクロソフトはキーボードを多々出しているが、なかでもエグゴノミクス(人間工学)に基づいた形状のキーボードが得意。このArc Keyboardもエルゴなキーボードなのであった。

Arc Keyboardを上から見たところ。キー配列がなだらかな扇形になっている。両手を自然に置けるエルゴノミクスデザインなのだ水平近くの位置から見たところ。キーボード中央が丘のようにせり上がっている立体的な形状だ斜めから見るとこんな感じ。人間工学に基づいたカーブだが、意匠としても美しい
キーボードの上側から見たところ。カーブにより、キーボード上部中央が机上から浮いているんですなキーボードの上側を水平近くから見たところ。実はけっこー複雑な曲面になっている付属のキーボード用バッグ。Arc Keyboardがピッタリ収まる

 エルゴノミクスっ!! ってほどは気合が入った人間工学的形状ではなく、どちらかと言えばデザイン性を重視しつつ、そのデザインのコンセプトとしてエルゴノミクスを拝借した、的な雰囲気の見栄えだ。

 ちなみに、サイズは幅約310×奥行き約155×高さ約19mmで、質量は約約363g。電源は単4型アルカリ電池×2本で約18カ月駆動する。とりあえず的な不織布の袋(キーボード用バッグ)も付属しており、一応は携帯しても活用できる、てな感じの薄くてコンパクトなArc Keyboardである。

エルゴノミクスの“効き”は?

 前述のようにエルゴノミクスデザインを採り入れているArc Keyboardだが、その人間工学からくる形状、使用感はどうだろうか?

 マイクロソフトからは多数のエルゴノミクスデザインキーボードが発売されている。拙者もそのいくつかを使ったことがあるが、ぶっちゃけた話、俺とかエルゴノミクスなキーボードは苦手っス。

 エルゴノミクスなキーボードって、慣れれば快適にはなるんだが、慣れるまでがけっこー大変。普通のキーボードの感覚でタイプするとミスタイプ続出であり、ある程度意識して「Yを押すときに人差し指をあまり伸ばさない」的に集中する必要がある。

 また、エルゴノミクスなキーボード毎に微妙に形状/キーの位置(距離)関係が違ったりもする。ので、ひとつのエルゴキーボードから別のエルゴキーボードへと乗り換えるときも、やはり若干の慣れが必要になる。ついでに、そうしてエルゴキーボードに慣れたあと、普通のキーボードに戻ると、これまたミスタイプ続出したりも。

 てな経験をしているので「Arc Keyboardも使い慣れるのがタイヘンなのでは……」とか微妙に不安に思っていた拙者。だが、実際はスンナリと使い始めることができ、すぐにタッチタイプも可能に。

 拙者的結論から言えば、Arc Keyboardはエルゴノミクスキーボードのなかでは最も“慣れやすい”製品のひとつだと思う。つまり人間工学的形状を持つキーボードであるものの、多くの人にとって常用へのハードルが低いという印象。

 また、使い続けてみると確かに、手首や指に感じるある種の緊張が薄れることがわかる──フツーのキーボードを使い続けているとイマイチわからないコトなんですけど、Arc Keyboardからフツーのキーボードに移行すると、「あ、さっきより少し、指(第二~第三関節あたり)に力が入っている感じ。手首もちょっと手前に引いてる気がする」的な発見がある。

 ただ、こういった指や手首の緊張を緩和する効果は、Arc Keyboardよりもさらに極端(!?)な形状のエルゴノミクスキーボードのほうが高いと思う。たとえばMicrosoft Natural Ergonomic Keyboard 4000Microsoft Wireless Laser Desktop 4000などは、指をホームポジションに置いて少しタイプすればすぐ「あ~なるほど、指も手首もリラックスしてるわ」と感じられる。ただ、これらはこれらで、打ち慣れるまでに時間かかりますけどネ。

 てな感じで、Arc Keyboardは慣れるのが容易なエルゴノミクスキーボードだけど、その分、エルゴノミクス形状からの恩恵はそんなに多くないキーボードと言えそうだ。ま、ぶっちゃけ、デザインがキレイだし、ちょっとくらいは指や手もラクになる、てな印象ですな。

キー配列や打鍵感はどうか?

 案外使い始めやすいエルゴノミクスキーボードであるArc Keyboard。では、肝心のキー配列や打鍵感はどうなのか?

 Arc Keyboardは、だいたいフルキーボードと同様のサイズのキーを備える。キーピッチ(アルファベット部)は横方向が19mmで縦方向が19~20mm、キーストロークは2mm程度。このテの薄型キーボードとしては平均的な感じですな。

 キー配列は下の写真のとおり。カーソルキーがひとつのキーにまとめられていたり、ファンクションキーの[F7]~[F12]は[Fn]キーと同時押しで使うスタイルになっていたり、ちょいと特殊な部分もある。ちなみに、電源のオンオフは[Fn]+[Esc]の長押し。

キー配列はこんな感じ。プチ変則配列の日本語キーボードですなファンクションキーの[F7]~[F12]は[Fn]キーと同時押しで使うスタイルミュートやボリューム調整のキーもある
[Fn]キーはこの位置。その右隣には4方向に押下できるカーソルキーがある各キーが独立したアイソレーションキーボードだが、キーが垂直にカットされておらず、斜めのスカートがあるのが特徴的裏面には電池室とUSB無線アダプタを(磁石で吸着して)格納する窪みがある

 人によって意見が大きく分かれそうなキー配列だ。

 たとえば拙者の場合、英語配列じゃなきゃイヤ!! とかいうのは横に置いといて、原稿をビシバシ書くなどの普段使いにはさほど大きな問題のない配列だと感じた。少々の違和感として、[BackSpace]キーが小さいこと、それからアサッテ的な位置に[Del]キーがあることが挙げられる。このあたりは慣れるしかないかな、と。

 また、気になっていた“ひとまとまりのカーソルキー”だが、わりとイイかもしんない、とか思った。これ、本来は4つあるカーソルキーが、4方向ボタンとして1つで実装されているカーソルキー。ゲーム機の4方向キーと同様に使うが、使用感は悪くない。使い慣れれば、Arc Keyboardのコンパクトさに一役買っているキーとしてナイス感が高まるのではなかろうか。

 というのが拙者的見解だが、しかし、このキー配列を見てアッタマ来ちゃう人もあると思う。こんなキー配列ならゼッテー買わねぇ!! 的に。

 たとえばファンクションキーを常用する人にとって、[F7]~[F12]は[Fn]キーとの同時押しってのはナイですな。[Home]や[End]や[PgUp]や[PgDn]を常用する人にとっても同様、こんな位置は有り得ない!! と思うだろう。大胆というか極端に、本来とは全然違う位置や使い方のキーがある点に要注意のArc Keyboardである。

 それから打鍵感だが、拙者的観点では、薄型キーボードとしては良好な部類だと感じた。少しのクリック感が指に伝わる軽めの打鍵感で、小気味よくタイプしていける。また、キーボード自体の剛性も高く、アイソレーションキーボードということもあってか、キーボード面のたわみなどはほとんど感じられない。ビシバシ打っても安心ですな。

 ただ、キーボード上端に並ぶ[Esc]~[Del]までのキーに関しては大きな違和感がある。ハッキリ言っちゃうと、ほかのキーと比べて極端に硬いし、それなのにフニャフニャしてるし、なんつーか激安ガジェットのあんまり使わないテキトーなボタン類のような感覚。

 これらキーについて、拙者的見解としては「この押下感の[Esc]キーと[Del]キーは超残念だけど、ほかのキーはほとんど使わないから、ま~いっか」みたいな。クリティカルな問題とは感じなかった。

 しかし、この上端の一連のキーを多用する人にとっては「ふーざけんなマイクロソフト!! もーテメェんトコのキーボードは買わない!!」的な拒否反応を示すかも知れない。多用するキーの押下感が悪く、その位置や使い勝手も悪いとなれば、拒絶反応ってよりも購入に至りませんな。

 ……にしても、なんでキーボード上部にこんなキーを採用しちゃったんでしょうねえ。ほかのキーは良好なのに、上の細いキーだけこういう打鍵感だと、なんかこう、台無し感が漂ったりしてArc Keyboardがモッタイナイですな。

 ともかく、キー配列についても打鍵感についても、その一部に独特のクセがあるArc Keyboard。しかしその一方で5000円弱にしては非常にキレイに作られているプロダクトでもあるので、ぜひ一度実機に触れてみてほしい。

デザイン重視派には超魅力的なArc Keyboard

 キー配列や打鍵感について、若干マニアックな視点から前述した拙者なんですけど、ソコまで細かく拘らないならイロイロな方向でオススメできるArc Keyboardだと思う。

 やはり魅力なのは、そのデザイン~佇まいの良さですな。机上に出しっぱなしにしておいて、これほどインテリア性の高いキーボードってなかなかナイ。この美しさっていうかナチュラルさっていうかつまり、その周囲に与えるデザイン的悪影響の少なさは、Microsoft Arc Mouseに通じるところがある。

マイクロソフトのMicrosoft Arc Mouse。アーチ形フォルムが美しいワイヤレスマウスだ。実勢価格は3800円前後カラーバリエーションは、ホワイト、パープル、グリーン、ブラック、レッド、ブルーオブジェっぽく組み合わせてみたりして
このように折り畳むことができる。USBアダプタは本体裏面に磁石で吸着/収納できる。アーチ形が機能的にもデザイン的にも功を奏している

 あとこのArc Keyboardのホワイト、色としても目立たず異端な雰囲気を発しにくいという印象。テーブルの上のティーカップ的な静かな色合い~ニュアンスなんですな。同時に、キートップの薄緑色の刻印も好印象──遠目ではほとんど見えないが、打鍵の距離だと十分高い視認性がある。

 なお、記事中のArc Keyboard(ホワイト)は、写真ではちょっと強めのグリーンに見えるかもしれない。が、実際の印象はもっと軽い、なんというか、薄い若草色というイメージだ。

 てなわけで、前述の使用感を体験するってコトも含め、Arc Keyboardはデザイン的にも非常に優れた製品なので、ぜひ一度実機に触れてアレやコレやを実感して欲しい。

2010/3/8 06:00