PC接続可能な電子辞書、買うならコレ!? 「SR-G6100」

スタパ齋藤
1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコ ンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称 衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。


PC接続可能な電子辞書、買うならコレ!?

 2008年末にSII(セイコーインスツル)のSR-G9001を試した俺。そのときの印象は「コレ、チョー欲しい!!」というもの。

 ポイントはPASORAMA機能──電子辞書とPCをUSB接続して、PC上から電子辞書内のコンテンツを検索・表示・利用できちゃうこと。そして、これと同じPASORAMA機能を搭載したSR-G6100が最近発売された。

SII(セイコーインスツル)のSR-G6100。PASORAMA機能搭載モデル全3機種のうち、最も低価格なモデルだ。ビジネス向けモデルで、ビジネスレターやメールの作成に便利なコンテンツも収録している

 PASORAMA機能は、上記のとおりパソコンから電子辞書内のコンテンツを利用できるというもの。スタンドアロンの電子辞書であり、かつ、パソコン上の電子辞書ソフトとして機能するわけですな。

 このPASORAMA機能を持つ電子辞書は現在3機種。PASORAMA対応機として初代となるSR-G9001、SIIのハイエンド電子辞書であるSR-G10001、そしてこのSR-G6100。これら3機種の違いは、収録するコンテンツの差が大きいが、価格差も大きい。

 SIIディクショナリードットコムでの販売価格を見ると、SR-G10001が6万9800円、SR-G9001が4万9800円、SR-G6100が2万9800円。激安ショップ系の実勢価格だと、各機種ともこの価格より1万円くらい安かったりもする。

 で、ですね、拙者的な結論を言うと、PASORAMA機能に強めの魅力を感じつつ、電子辞書として使いやすさや機能・性能・コンテンツを考えると、SR-G6100は「思わず買っちゃうカモの一台」だと感じた。

 てなわけで以降、SR-G6100の使用感を、主にPASORAMA機能とメール作成支援系コンテンツを中心にレポートしてみたい。なお、PC WatchにもSR-G6100の詳しいレポートがあるので、そちらもご一読を。



ほとんど文句ナシのハードウェア的使用感

 まず、SR-G6100の基本的な機能・使用感から。

 SR-G6100が収録しているコンテンツはコチラにあるとおり。位置付けとしてはビジネスエントリーモデルで、基本的な英和/和英/国語/百科事典に加えビジネス用語系辞書を多々+旅行系コンテンツも収録している。

 収録コンテンツから受ける印象は人それぞれだと思うが、拙者観点では、仕事上での読み書き、日本語/英語でのやりとり、旅行や出張先などでの実践的な英会話あたりをサポートした内容だと感じる。各分野の追求のためのコンテンツは含まないが、社会人の生活~仕事を手助けするにはわりと十分な内容、みたいな。

国語~一般系のコンテンツは3冊英語系コンテンツは4冊ビジネス英語~メール関連のコンテンツは4冊
ビジネス系の専門用語関連コンテンツは9冊定番のフレーズやその発音なども含まれる旅行系コンテンツが9冊付加機能としてはテキストビューワ、MP3プレイヤーなどがある。コンテンツ追加用カードのシルカカードレッドやシルカカードレッドプラスにも対応している

 本体サイズは幅141.3×奥行104.4×厚さ14.8/19.7mm(最薄部/最厚部)で、質量や付属のリチウムイオン電池を含んで約239g。ハガキ大の薄型電子辞書ですな。堅牢性もまずまずなので気軽に持ち歩けそうだ。

 ハードウェア的な部分では、キーボードはSII製電子辞書ではおなじみの「カイテキー」で、液晶もこれまたSII製電子辞書お得意の「くっきリアル液晶パネル」など、使いやすさに直結する機能/機構を持つ。

スマートフォンと比較。だいたい文庫本サイズで、常時携帯が苦にならない質量だ。本体もわりあい堅牢あまり明るくない環境でも非常にクッキリした表示をするハイコントラスト白黒TFT液晶(640×480ドット)を搭載するパソコンのそれに近い打鍵感を持つキーボード。打鍵音も静か
キーボード下部左右にスピーカーを搭載。ネイティブボイスサーチ機能などを使うとき、頻繁に役立つ本体右側にはボリュームとイヤホンジャックが。3.5Φプラグのステレオイヤホン(一般的な音楽プレイヤー用のイヤホン)が使える電源は付属のリチウムイオン電池(充電式)、アルカリ乾電池、ACアダプタが使える。PCとUSB接続時にリチウムイオン電池を充電することもできる

 こんなふうな電子辞書で、全体的な使用感は非常に良好な部類だと思う。

 特に良いのは、やはり液晶の表示クオリティ。高精細であり、やや暗い場所でもバッチリ見えちゃう独自のTFT液晶は相変わらず快適だ。キーボードの打鍵感もイイですな。キー自体は小さめだが、パソコンユーザーなら自然に接することができる打鍵感で、打ち間違えも少ない。打鍵音も静かなので、ビシバシと辞書引きしてもストレスを感じない。

 ただ個人的には、一部キーをどうにか打ちやすくして欲しいてな気も。例えばキーボード上部に並ぶファンクション的キーは、ちょっと小さ過ぎ&多過ぎな感じ。コンテンツへのショートカットや検索方法変更などを手っ取り早く行えて便利だが、数が多いので「ドレが該当キーかな?」と目で探すときに少々戸惑うし、細くて押しにくくもある。

 それと、決定キーと戻るキーが隣接していて、ここも若干戸惑うかも!? SII製電子辞書ユーザーなら違和感がない配置/サイズだが、他メーカー製の電子辞書ユーザーからすると、これらのキーは独立させて欲しいって人もあるのではなかろうか。……ま、これらのキーの位置とか使用感は、すぐに慣れちゃうんですけどネ。

 てな感じで些細な違和感を挙げたが、ぶっちゃけ、全体的にはほとんど文句ナシ。完成度高いっス。コレが2万円台前半って時点で、非常に買いやすいような気がするんですけど。



やはり魅力的なPASORAMA機能

 わりあい安価だけど表示も入力もかな~り快適なSR-G6100。収録コンテンツは上位機種のSR-G9001より少ないものの、日常用途~学習~新社会人のビジネス用途あたりまでカバーしている。

 これに加えてPASORAMA機能。この機能、[買いやすい]が[買いたい]になるほどステキだ。PCユーザーにとっては何かとありがたい機能なんである。

 PASORAMA機能、要は、SR-G6100内のほとんどのコンテンツを、PC上から使えるというもの。SR-G6100本体をPCに接続し、SR-G6100内のドライブに入っているビューワ(PASORAMA)やドライバをインストールすれば使えるようになる。

SR-G6100をPCにUSB接続すると、新たにリムーバブルディスクが認識される。SR-G6100内にPASORAMAソフトウェア一式が入ってるんですな。コレをインストールする。PASORAMAソフトウェア(ビューワ)がインストールされた。この後、SR-G6100のドライバをインストールすれば完了。PASORAMA使用中の表示例。このように、PCからSR-G6100上のコンテンツを利用できるようになる。もちろん、別の語句へのジャンプや、内容のコピペも可能。
PASORAMAソフトウェア上で語句を検索し、その意味などを表示させたところ。検索結果を範囲選択してコピーできるコピーしたテキストをテキストエディタにペーストしたところ。選択範囲のドラッグ&ドロップによるコピー&ペーストも可能。SR-G6100独自のフォントなどは文字化けする例文を丸ごとメーラにコピーし、それをちょっと改造して英文メールを作成するのも楽勝なんである

 パソコン用の電子辞書ソフトと同様のコトができるわけですな。パソコンのキーボードで入力して検索すると、パソコン上のウィンドウに結果が表示される。機能しているのはSR-G6100だが、使用感的には(ほんの少し検索速度が遅いことを除いて)パソコン用電子辞書ソフトとほぼ同じ感覚だ。

 つーか、実勢価格2万円台前半のSR-G6100だけで、コンテンツ数もわりと多い携帯可能な電子辞書として使えて、パソコン用の電子辞書ソフトにもなるって点で、スゲくヒキが強くないスか?

PASORAMAソフトウェアを使えば、SR-G6100単体でできることの多くがパソコン上でも行えるようになる。図版の表示なんかもこのとおりネイティブ発音もパソコン上で再生できる。画面上のスピーカーアイコン(赤)をクリックすれば発音するSR-G6100が持つほとんどのコンテンツをパソコン上で利用できる

 てな感じで、PASORAMA機能搭載の電子辞書があれば、多くのケースでパソコン用の電子辞書ソフトが不要になるってのが魅力だ。ただし、PASORAMAを使用できる環境はWindows 2000/XP/Vista(日本語版/32ビット版)のみとなる。

 細かいコトを言えば、まだまだ発展途上中のPASORAMAソフトウェアではある。具体的には、各コンテンツの目次別やジャンル別の検索などには対応していない──旅行会話コンテンツの場面別会話やブリタニカのジャンル別辞典、ビジネス文例などの目次別検索といった機能は、PASORAMAソフトウェア経由では使えない。

 結局、単語検索でコンテンツ内を見ていくことになる。ので、パートを順番に読んでいくと役立つコンテンツや、状況などを絞り込んでいって探すコンテンツの一部機能は全然使えなくなっちゃうのだ。

 この点はPASORAMAソフトウェアの機能不足ですな。しかも非常に残念な機能不足。PASORAMAソフトウェア側から、SR-G6100内の各コンテンツをSR-G6100で扱うのと同様に利用できれば、SR-G6100の利便全てがパソコン上からも利用可能になる。ので、ゼヒ!! PASORAMAソフトウェアをもっと高機能にしておくんニャさい!! と切に思う次第である。

 なお、PASORAMAソフトウェアからの(SR-G6100に対する)単語検索の速度は、まずまず実用的。SR-G6100上と同様、単語などをインクリメンタルサーチでリストアップするが、まぁ実用レベル内のレスポンスで候補が表示される。

 速度的な実用性もあるので、ももも、も、もし可能ならば!! 単語上にカーソルをもっていくと意味がパッと表示されるようなユーティリティのような機能も、PASORAMAソフトウェア上に実装して欲しいところ!! そこまでやろうとすると速度的に無理!? でも、実現したら最強のPC連携型電子辞書になるような気がする。



“例文コピペで英文メール”が実用的!!

 SR-G6100のウリのひとつとして“ビジネスレターやメール作成に役立つ”というのがある。ビジネス文例が多数収められた5種のコンテンツを収録し、どれも即戦力になりそうな内容になっているのだ。

ジャパンタイムズ「英文ビジネスeメール実例集 Ver. 2.0」。英語圏のビジネス現場で使われている簡潔で実践的な例文を利用できる。139項目・約1500例文から、スマートな英文メールを作れそうだ。その目次。目的に見合う例文を段階的に探していける。例文のみならず、国際社会の常識など基本的な事項も解説されている。
日経BP社「説得できる英文Eメール200の鉄則」。基本的および頻繁に使われる200の定石と1200の表現例を収録しているその目次英文メールでよくある書き出しや結び、感情の込め方、ビジネス上の表現など、実践的な例が多々紹介されている
学習研究社「文例でわかる もっとうまいeメールの書き方」。悪い印象を与えないメールの書き方や文例を紹介している。主に日本語メール向けで、文例は約110例その目次ビジネス上でよくある連絡メールの例文なども収録されている。このテのメールを書いたことのない人にとって大いに参考になりそうだ
三省堂「キーワードで引く 英文ビジネスレター事典」。日本語の表現から英語の例文メールを探していけるコンテンツ。「日本語ではこう書くけど、英語ではどう書くの?」という方向から英語例文を探せる。収録例文数は約4000その目次そのままコピペして改造・流用できそうな例文が数多くある。ビジネスでもプライベートでも使えそうという印象だ
日経BP社「ビジネス英語の最強フレーズ」。アメリカ人が日常的に使うフレーズやビジネス上の言い回しを収録したコンテンツ。例文は約77と少なめだが、知識系読み物として楽しめるその目次そうなんだ~、と思える“生きたフレーズ”を多々読める

 てな感じの5コンテンツ。それぞれ実用的に利用できたり楽しく読めたりするが、イカスのはPASORAMAソフトウェアとの連携。つまり、これらコンテンツに含まれる例文を、そのままPC上の他ソフトウェアにコピペし、若干修正すれば使えるという点だ。

PASORAMAソフトウェア側で[日本語例文検索]とし、キーワードを[不足]とした検索結果。この英文を少しイジれば、海外ネット通販のトラブル時にすぐ使えるだろう今度は[調子]で検索。コレも使えそうな英文だこのようなマトモな例文が多々収録されていて、それをサクッと検索できるのが実に便利

 例文の検索は、ターゲットを英例文としても日本語例文としても行え、もちろん各コンテンツを串刺しにしての検索が可能だ。当然、個々のコンテンツを対象に検索することもできる。要は、SR-G6100上の膨大で正確な例文をターゲットとして探せて、好ましい検索結果(例文)を英文メールとして流用できるのであり、コレをパソコン上で行えるのである。

 ネット上でこれと同様のことを行おうとすると……実際無理だし、近いことをしようとしても検索のための時間・労力がそーとーかかる。この点、膨大な例文を持つデータベースことSR-G6100を、PASORAMAソフトウェアから調べ探せるってのは大きな魅力だ。

 が、SR-G6100単体で“ビジネスレターやメール作成に役立つコンテンツ”を検索/閲覧するほどは、PASORAMAソフトウェアからの使用感はよろしくない。

 前述のように、PASORAMAソフトウェアからの検索は、各コンテンツのジャンル別検索などには対応していないからだ。「こういう状況で、こんなケースで」と絞り込んだり掘り進んでの検索は不可能。やはり、PASORAMAソフトウェアのブラッシュアップが求められるところですな。

 とは言っても、やはり結局、電子辞書で調べた結果をそのままパソコン上のアプリにコピペして、テキストとして流用できるのは魅力だし、実際にヒジョーに役立つ。そして、ようやくこういうコトを比較的に安価にてデキるようになったSR-G6100。パソコンユーザーにもメリットが大きい電子辞書なので、興味のある方はぜひ一度実機に触れてみて欲しい。



2009/7/6 11:00