スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

物理キーボード搭載の変態Android端末「Cosmo Communicator」

Androidはハンドヘルドコンピュータになれたのか!?

 ガーッデム!!! そりゃねえぜセニョール!! 勘弁してくれよセニョリータ!! 的な、やるせない一件があり、ムシャクシャしてカッとなったので英Planet Computers社のAndroid端末「Cosmo Communicator」を借りて使ってみた。反省していないし後悔もしていない。

Planet ComputersのCosmo Communicator。6インチスマートフォンで、物理QWERTYキーボードを搭載する。キーは、国内正規代理店品は日本語配列+かな印字キートップ。かつてのPDA(携帯情報端末/Personal Digital Assistant/Personal Data Assistant)のようなスタイルで使える。SIMロックフリー端末で、デュアルSIMおよびeSIMに対応。実勢価格は10万円前後。

 まず、やるせない一件だが、1月6日掲載の2画面スマホ「LG G8X ThinQ」レビューを書いた直後、速攻でソフトバンクショップに端末を買いに行ったものの、まさかの売り切れ!! じゃぁ次のソフトバンクショップへ!! しかしソコも売り切れ!! だったら3軒目……と思ったが、そのうち「LG V50 ThinQ 5G」とかが出てくるかもしれないし、新年早々何してんだろ俺……と冷めたあたり、なかなか大人になった俺だと思いつつも、LG G8X ThinQ在庫見つけたら買うかも~、みたいな。

 そんな話はどうでもいい。Cosmo Communicatorである。この端末がどういうモノであるか強引に一言で説明するならば、下の写真のような端末を見て「んふっ♪」もしくは「ウヒョ♪」もしくは「でゅふふっ♪」と笑みを浮かべるような人が今すぐ直ちに超絶欲しくなる変態的Android端末だ。

ノキアの「Nokia Communicator」シリーズのうちの「Nokia E90 Communicator」。2007年発売のスマートフォンで、閉じれば携帯電話、開けばキーボードが使えるハンドヘルドコンピュータ的な端末である。GSM(850/900/1800/1900MHz)およびW-CDMAに対応。う~ん今見てもカッコイイ!! てゅーかホントはココの写真は「PSION(サイオン)」とかにした方が良かったんですけどネ。

 Cosmo Communicatorは、Androidスマートフォンに物理キーボードをズシャッと搭載した端末で、AndroidスマホでQWERTYキーボード使えたら便利だよネと考える人をターゲットにした端末もと言える。が、どちらかと言えば、2007年に登場した元祖スレート型スマートフォンことiPhone以降、一気に消え去った物理ボタンたっぷりのPDA系端末を愛する人に向けた製品のような気がする。
 ともあれ、使用感をザッと書いてしまうと、キーボード使えてフツーに便利っす。あと独自のギミック満載で楽しい。高価だが欲しい。とは書いたものの、基本的にシロートさんお断り的なハードルがあるのも事実。ともあれ以降、Cosmo Communicatorについてレビューしてゆきたいッ!!

どういうAndroid端末なのか?

 まずCosmo Communicatorの概要だが、チップセットにMediaTek Helio P70を採用し、メモリー6GB/ストレージ128GBの、処理性能的にはミッドレンジのAndroid 9端末。メインディスプレイは5.99型(2160×1080ピクセル)で、天板部に1.91型タッチ対応有機ELを搭載している。

 カメラはアウトカメラが2400万画素でインカメラが500万画素。SIMロックフリー端末で、DSDV対応なので2つのLTE回線を使い分けられる)。SIMトレイには2枚のnanoSIMをセットできるが、SIMカードスロットのひとつはmicroSDメモリーカードと排他利用になる。また、eSIMにも対応。

 バッテリー容量は4220mAhで、サイズは長辺171.4×短辺79.3×厚さ17.3mm、質量は約326g。他、詳細は正規販売代理店リンクスインターナショナルの製品紹介ページを見て欲しい。以降、大雑把な特徴をご紹介。

 前述のとおり、Cosmo Communicatorは物理QWERTYキーボードを搭載したAndroid 9端末だ。クラムシェルスタイルで開閉する端末で、閉じた状態で携帯電話として通話でき、開けばマルチタッチ画面やキーボードが使えるスマートフォンとして機能する。

 ちなみに、キーボードは国内正規販売代理店取り扱い品が日本語配列+かな印字キートップ。海外流通品としては英語配列キーボード端末もある。

閉じた状態で通話ができ、開けばキーボード付きAndroid端末。もちろん縦表示にもできる。キーボードはバックライト内蔵。
左右約170mmのQWERTYキーボードで、両手人差し指でタイプするような感じで使える。初期状態では“かな入力”で、キーのひらがな刻印のとおり入力できる(ローマ字かな入力ではない)。天板画面上のディスプレイには、通知やメール等の内容が表示される。

 Cosmo Communicator独自の機能性も多々ある。例えばキーボードショートカットで特定の機能などを利用できること。[Fn]キーと同時押しで、メディアの再生や音量調整や画面輝度調整、タスクの一覧表示、スクリーンショット取得などを行える。また、[Alt]キー(Planetキー)を押すと画面下部にApp Barが表示され、多用するアプリに手早くアクセスすることができる。

[Fn]キーとの同時押しで、キー手前部分の文字を入力したり機能を呼び出せる。
左は通常の画面表示。そこから[Alt]キー(Planetキー)を押すと画面下にApp Barが表示される。アプリのランチャーですな。App Barの左端[PLANET]ボタンをタップすると、App Barのカスタマイズや画面の強制回転(縦画面への移行など)を行える。
Cosmo Communicator独自のアプリもいくつか用意されている。例えばビジネス系アプリとしてはスケジューラーの「AGENDA」、テキストエディターの「NOTES」、メーラーの「AIRMAIL」などがある。左はNOTESでメモを書いている様子、右はAGENDAでスケジュールを一望している様子。

 なお、Cosmo CommunicatorにはAndroid OS以外もインストールすることができる。具体的には、Sailfish、Debian、Kali。マルチオペレーティングシステム対応の端末なんですな。もしかすると、ソレを目当てに買う人が少なくないのかもしれない。

実際の使用感はどう?

 さて、実際にしばらくCosmo Communicatorを使ってみての使用感をば。今現在のAndroidスマートフォンとして捉えると、キーボードがあるがために「全体的にちょっと面倒臭い」という印象になる。

 Cosmo Communicatorの場合、基本的に横画面表示。なので、日頃多用している縦表示が基本となるアプリをスムーズに使おうとすると“App Barを表示させて画面を強制回転する”といった操作が必要になることが多い。これは設定で変えられるが、画面向きを意識的に変える必要があるのは今時的Androidスマホユーザーにとっては「?」かもしれない。

ノートパソコンのように使うのが前提の端末だからか、画面向きを変える場合はユーザーの操作が必要になる(試用期間が短いため俺が知らないだけで他の方法もあるかもしれない)。また、キーボードは取り外せないため、縦画面での使用時にはキーボードも縦のままだ。

 一般的なアプリをCosmo Communicatorで使っていると、使用開始当初は画面向きに関連する戸惑いがけっこうあったりした。例えばGoogleカレンダーアプリだと、横表示では表示スタイル(スケジュール/日/3日間/週/月)が切り替えられなかったり。しばらく試行錯誤して「縦表示にしないと切り替えられなかったのか!」と知ったり。まあ筆者の知識不足であり、Cosmo Communicator独自のスケジュール(カレンダー)アプリのAGENDAを使えばいいって話ではあるが、こういう戸惑いが頻発した。

 それ以前に、上の写真のように縦画面で使おうとするとキーボードがほぼ使えず、邪魔なだけの存在になってしまう。まあこれは最初から想像できる事態ではあるのだが。

 そういった特殊性を除けば、他はフツーに使える。チップセットはハイエンドではないものの、ゲームなどのアプリを使わないならまあ全体的に問題ない処理速度で動いてくれる。

 また、キーボードで文字入力やショートカット操作ができるのは非常に快適。机上に置いて左右人差し指でキーを叩くと、俺の場合はソフトウェアキーボードによる入力よりサクサクとタイプできて快適。片手で本体を持って、片手の指でタイプするのもけっこう実用的だと感じられる。

 なので、ひとつの俺的結論としては、物理キーボードを頻繁に使いたいというユーザーの場合、個別にBluetoothキーボードなどを携帯する必要がなくて便利なCosmo Communicatorだと言えよう。パカッと開けば即タイプできちゃいますもんネ♪

 それと、天板部にあるタッチ対応の小さな「Cover Display」がけっこう便利。Cover Displayには日付や時刻が表示され、さらに通知などが表示されつつその内容をチェックすることもでき、通話アプリやカメラやライトなどの機能をダイレクトに扱うこともできる。Cover Display下のLED点灯でも着信や通知がわかる。

通常は日時や通知が表示される。フリック操作でWi-Fiや機内モードのオンオフなどを行えるボタンが現れる。
写真を撮ったり電話をかけることも可能。電話をかける時はキーパッドや連絡先を表示させ、そこからかけることもできる。
電話がかかってきた様子。そのまま端末を耳に当てて通話することも、スピーカーホンで通話することもできる。左は不在着信の表示。全体的に日本語が微妙にヘンな感じになっているが、まあだいたいわかる感じ。

 凄く実用的ではあるものの、普通のスマートフォンだったら画面で通知をチェックできるので、敢えて天板でこういうことができてどれだけメリットがあるのか? みたいな観点はあるかもしれない。でもまあこのサブディスプレイもCosmo Communicatorならではの実用性であり魅力だと思う。

 他、使っていて気づいたのは、例えばカメラの画質は1~2世代前って感じで、写真を撮る用途というよりも画像メモ用という印象。あと端末に高級感はしっかりあり、キーボードの実用性も十分高いとは思うが、厚め重めなのでスマートフォン感覚で軽快に持ち歩けるというイメージではない。

シロートさんお断り的なハードルとは?

 冒頭で「Cosmo Communicatorには基本的にシロートさんお断り的なハードルがある」と書いたが、どういうコトか? キーボードが付いていて、基本が横画面表示だったりして、ちょっと特殊って程度じゃないの?

 筆者が感じたハードルの具体例を挙げてみると、例えば天板部のカラー液晶ことCover Display。どうもこのCover Display、バグがあるのかたまに表示されたままになってしまう。点灯しっぱなし。これが原因でヤケに電池が減り、バッテリーが1日保たなかった。この問題に気づくまでしばらくかかった。

 ともあれ、どうにかなんないのこのCover Display? これじゃあレビューでボロクソ書くことになっちゃうよ、と。

 そこで試したのがCover Displayのファームウェアアップデート。Cover DisplayはCosmo Communicator独自のハードウェアなので、Android OSとは別にファームウェアアップデートを行う必要がある。点灯しっぱなし問題が解消することを祈ってアップデート開始!!

 そしたら一発でアップデート失敗っすわ。最悪なコトに、いきなりCover Displayが正常に機能しなくなった。スゲくヤバそうなエマージェンシー的表示が出っぱなしで、マジやっべぇ!! このCosmo Communicatorは借り物!! 壊して返すって……なんか大顰蹙な予感!!!!

 そこで調べに調べた結果、先人がCover Displayファームウェアアップデートのツボをネット上に書いておいてくれたのを発見。具体的には、マナーモードにしてDuraSpeedをオフにしてファームウェアアップデート開始後はすぐに機内モードにして……それでも失敗したら端末を再起動して最初からやり直して……という感じ。

 それに従ってファームウェアアップデートを行ったら、俺の場合は6~7回目のファームウェアアップデートでようやく成功。仕事をしながらだったので半日くらいかかった記憶が。

 そんなハードルである。乗り越える気になるだろうか、こういうハードル。一昔前のバグだらけのPDAを嬉々としてイジっていた俺の場合、「そのうち直んじゃね?」的に図々しく構えつつも執念的にファームウェアアップデートを繰り返して運良く成功したが、こういう手間がかかる可能性もある端末なのだ、Cosmo Communicatorは。

 あ。それ以前に、Cosmo Communicatorは初期状態だと“かな入力”で、キーのひらがな刻印のとおりにしか日本語を入力できなかった。ローマ字かな入力派の俺にとっては拷問的な日本語入力環境。最初は「うげぇっ!!! かな入力とかムリ無理むり~!!!」と思ったが、「でもやっぱ高密度物理キーボードでローマ字かな入力できたら楽しいよなコレ」と思ったので解決法を調べた。結果、Google日本語入力アプリを使えばローマ字かな入力ができることが判明し、そのようにした。

 これもまた、Cosmo Communicator独特のハードルである。物理キーボードがあるがためのハードルだと思うがさておき、こんなような問題をユーザーが前のめりにいろいろ解決していく必要が出がちな端末なのである、Cosmo Communicatorは。

 他にも操作不明部分を丹念にアレコレ試して「あっこのボタンってそういうコトなの!」と理解したり。アプリも然り。独自の機能設定も然り。キーボード配列も、日本語入力時は「あの記号どこなの?」と、わりと変態配列だ。そんな感じで、一筋縄では行かない部分がポツリポツリと現れるCosmo Communicatorなのである。

 たぶん、ここまで読んで「ムリ、イラネっ!」というのが多数派だろう。一方で、「うんうん、でもどうにかなってるじゃん、やっぱ欲しいよその変態クラムシェルスマートフォン」という少数派が居ることを、俺は知っている。

 Cosmo Communicatorからその少数派になるのは、けっこう愉快かもしれない。PDA時代とは違って、Cosmo Communicatorは最初からけっこーよくデキた端末であり、とりあえず実用的なスマートデバイスとして使える。また、たまに出るトラブルを解決するための情報も比較的に豊富だ。「……この端末、無かったことにして不燃物ゴミとして捨てようかな……パトラッシュ、僕はもう疲れたよ」などと深刻な状況になる可能性は低いと思う。そして「そうなんだ~こういう変態端末ってオモシロいんだね~」と、多数派には見えない新しい視野を獲得しているかもしれない。

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。