スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

Osmo Pocketはイイぞ! 基本編

新世紀のコンパクトデジカメかも♪

 最近楽しみつつ使っているのがDJIの「Osmo Pocket(オスモ ポケット)」(公式ページ)。スタビライザーと一体化しているデジタルカメラで、動画が得意、静止画もイケます。2018年12月15日発売ですが、発売直後から現在にかけて人気急上昇。ネットを中心に大きな話題となっているガジェットです。

DJI史上最小の3軸スタビライザー(いわゆるジンバル)を搭載したカメラで、4K/60pをはじめとする各種サイズの動画を撮影できるほか、静止画やパノラマ写真など多彩な撮影機能を備えています。スマートフォンと直接接続しても使えます。実勢価格は税込4万4900円前後。

 Osmo Pocketの発売を知って「コレはイイはず!」と思い、筆者も発売直後に購入しました。で、12月末にOsmo Pocketを入手&使用開始して約2カ月。Osmo Pocketに対する大雑把な結論を書いてみますと、「もしかしたら常用カメラはコレでいいのかも、コレが現時点での最適解なのかも」という気がしています。

 Osmo Pocketで撮れる画像に関して詳細は後述しますが、このカメラで撮ると、動画も静止画も「傾いていない映像・滑らかな映像」になります。敢えてそうしないこともできますが、基本的にはOsmo Pocketのスタビライザーが常時自動補正してくれるので、どう撮ってもだいたい「水平が保たれた安定感のある静止画・動画」や「上下左右の動きが滑らかで見やすい動画」が撮れます。これまでアリガチだった「地平線が傾いている不安定な感じの写真」とか「手ブレなどが多くて見づらい動画」などは残らない。

 ちなみに、Osmo Pocketのような「傾いていないしブレも少ない静止画・動画」を撮るためには、これまで多くのケースで少々頑張る必要がありました。静止画撮影時に水平を意識するとか、動画撮影時は水平を意識しつつ上下左右の視線移動をゆっくり行うとか。あるいは、スタビライザー(ジンバル)を後付けするとか。でも、Osmo Pocketは本体のみで完結しますし、ポケットサイズでもあります。

 Osmo Pocketを使うと、傾きとかブレとかいった基礎的な部分で「失敗していない映像」が量産できます。Osmo Pocketは、その外見や機能性からして、エクストリームなシーンを撮るアクション系カメラやエモーショナルな動画を撮るための特殊なカメラと思われがちですが、なんかコレ、実用的で新しいコンパクトデジカメのカタチなのかもと思います。フツーの人が気軽に使って「労せず一定以上のクオリティの映像を残せるカメラ」みたいな。

 ともあれ以降、Osmo Pocketの使用感などについて書いてみたいと思います。Osmo Pocketのスペックなど詳細については公式ページをご覧ください。

Osmo Pocket、どんなカメラ?

 まずOsmo Pocketの概要から。カメラとしては、静止画撮影(4000×3000ピクセル)および4K動画(最大60p/3840×2160ピクセル)/HD動画(最大60p/1920×1080ピクセル)を撮影可能で、撮像素子は1/2.3型CMOSセンサー。4K60p動画も撮れちゃうコンパクトデジカメという雰囲気です。記録メディアは256GBまでのmicroSDカード。充電式の内蔵バッテリーで最長140分の撮影が可能。

 ちなみに、カメラにはズーム機能はなく、画角は35mm判換算で25mm前後の広角という感じです。ズーム機能を持たず、またアクションカメラのような超広角撮影はできないという点で、撮影の幅に少々の制限があるという印象があります。まあ、この小さなカメラ部に広角レンズを搭載している点は、けっこう評価したいところですが。

Osmo Pocketのサイズは高さ121.9×幅36.9×厚さ28.6mmで、質量は116g。上部がスタビライザー・カメラ部で、小さな液晶モニターと操作ボタンを備えます。オレンジ色のカメラはオリンパス「TG-860」(公式ページ)で、わりと標準的なサイズのコンパクトデジカメ。Osmo Pocketこういったコンデジよりもさらにコンパクトなカメラです。

 Osmo Pocketの最大の特徴であり最大の長所は、カメラ部を支えている3軸スタビライザーです。いわゆるジンバル。モーターにより、ロール・ピッチ・ヨーの3軸を高精度・高速で制御してカメラの揺れなどを吸収し、安定した画像を生み出す機構です。

 難しい要素はさておいて、まあ「カメラを滑らかに動かしたり水平を保ったりする機構」と考えてください。NHKの「世界ふれあい街歩き」みたいな滑らかで安定した動画を、素人でも撮れちゃったりする機構です。その動作を動画でどうぞ。

【動画】電源を入れると、3軸スタビライザーが初期校正(キャリブレーション)を行い、カメラを水平に構えます。電源オフ時はカメラを収納するような動作をします。カワイイですね~♪
【動画】電源をオンにしてカメラ部が水平になれば撮影スタンバイ。その状態から動かすと、カメラの水平状態が自動的に保たれます(そうしないモードもあります)。このような動きにより、安定感のある映像を容易に撮影できます。

 前述のとおり、スタビライザーの角度制御の精度は±0.005度刻みで、1秒間に最大120度の角度の動作ができるそうです。この数値がどうなのか素人にはイマイチわかりませんが、Osmo Pocketのスタビライザー動作を見ていると素人目にも「動物のような滑らかな動きで凄い!」と思ってしまいます。なんかもう、動きで感情みたいなものを表現できるレベルの滑らかさですね。

 操作は2つのボタンとタッチ式の液晶モニターを使って行います。ときにはカメラ部を強制的に指で動かしたりも。また、スマートフォンと直接接続して「DJI mimo」アプリを使えば、スマホ画面を液晶モニター+タッチ操作コントローラーとして利用できます。

タッチ操作できる液晶モニターでライブビュー表示や撮影済み画像の再生、Osmo Pocket設定などを行えます。液晶モニターは屋外でも見やすいです。ただし液晶モニターは超小型なので、細かな表示は見やすくありません。
付属のアタッチメント(LightningおよびUSB-C)を使えば、スマートフォンと直接接続できます。スマホの大きな画面で「DJI mimo」アプリを使えば、より快適に撮影や設定などを行えます。
本体下部にはmicroSDカードスロット(最大256GB)と充電やスマホとのケーブル接続・遠隔操作などに使えるUSB-Cポートがあります。専用ハードケースが付属し、スタビライザーや液晶モニターを保護しつつ携帯でき、ケースに入れたままの充電も可能です。

 小さな液晶モニターでの設定や操作は、最初は「えっ、こんなに小さな画面で!?」と戸惑いましたが、UI自体が非常にスムーズかつわかりやすくつくられていることもあり、すぐに慣れられました。Osmo Pocket単体での設定~撮影も現実的。ただ、フレーミングを厳密に行うなどしたい場合、やはりスマートフォンと接続するのが無難だと思います。

どんな映像が撮れるのか?

 Osmo Pocketのキモはスタビライザーの活用。スタビライザーには3つの動作モードがあり、それぞれ「フォロー」「固定(チルト固定)」「FPV」です。画面を上にスワイプしての設定画面から変更できます。それぞれのモードで撮った動画を見つつ、各モードでのスタビライザー動作をご説明します。

【動画】「フォロー」モードでの撮影。Osmo Pocket本体の向きに合わせてカメラ向きも滑らかに変わります。左右方向に動かせば、カメラ向きも滑らかにその向きに追従して動きます。上下方向でも同様。なお、カメラの水平は常に保たれます。
【動画】「固定(チルト固定)」モードでの撮影。「フォロー」の上下方向のカメラ追従動作を無効にしたモードと考えていいでしょう。Osmo Pocket本体の左右方向の動きにカメラ向きが滑らかに追従します。が、本体の上下方向の動きには追従せず、カメラは常に同じ高さを見つめたまま、というわけです。このモードでもカメラの水平は常に保たれます。
【動画】「FPV」モードでの撮影。FPVは一人称的視点の意味です。Osmo Pocket本体の向きに合わせてカメラ向きも滑らかに追従します。「フォロー」や「固定(チルト固定)」ではカメラの水平が保たれましたが、「FPV」では水平は保たず、Osmo Pocket本体の傾きに合わせてカメラも傾きます。

 わりと自由にカメラ向きを動かしながら撮影するのがフォローモード。視線を上下には動かさない、より安定的な撮影モードが固定(チルト固定)モード。アクションカメラ的にユーザーの視野をよりダイレクトに表現するのがFPVモード、といったところでしょうか。

 共通しているのは、Osmo Pocket本体の動きに「追従して」「滑らかに」「カメラが動く」という点です。これにより動画のガクガクした動きや急な動き激しい動きが平滑化されて、プロが撮影したような安定的でスムーズな映像になるというわけです。とりわけ「フォロー」モードと「固定(チルト固定)」モードでは、安定的な映像でありかつ常に水平の保たれているので、よほどのコトがない限り、どう撮っても「と~っても見やすい映像♪」になってくれます。

 それから、アクティブトラックやフェイストラックといった「主な被写体へと自動的に追従するモード」もあります。カメラが動き、子供やペットやモノを追従し続けたり、自撮りのときにユーザーの顔を追従し続けたり。

【動画】カメラを向け続けたい被写体をタップするとアクティブトラックが開始されます。この場合は赤いパイロン(コーン)に追従してみました。カメラがパイロンを追い続けます。
【動画】撮影モードをセルフィーモードにしてカメラをこちらに向け自撮り状態にすると、自動的にフェイストラックが機能し、カメラが顔を追従し続けます。自撮りには画角がやや狭いので、自撮り棒があるといいかもしれません。

 なお、Osmo Pocketでは静止画も撮影でき、静止画撮影時にもスタビライザーが働き続けます。「フォロー」モードや「固定(チルト固定)」モードにしておけば、カメラ部が水平を保ち続けますので、まあ大雑把に言って「テキトーに撮影しても水平が保たれた安定感のある静止画」が撮れて便利です。

Osmo Pocketで撮影した静止画。何ら頑張ることなく、水平が保たれた写真を撮影できます。パノラマ撮影も手軽に行えて、中央が左右180度パノラマで、右が縦横3×3のパノラマ。撮影時にスタビライザーが自動的に首を振って複数枚の写真を撮り、それら写真を自動合成します。

 ただ、3軸スタビライザー搭載とは言っても、カメラ自体の縦揺れは抑えられません。なので、ドタドタと歩きながら撮影していると、上下方向の揺れが映像に強く現れてしまいます。これを抑えるには、能の摺り足歩きのような、あるいは少し膝を曲げた抜き足差し足歩きのような歩き方をするのが効果的です。

 また、Osmo Pocketはアクションカメラではないので、たとえば自転車のハンドルに装着しての振動は悪影響になると思います。そうした場合の映像もガタガタな感じに。そういう用途にはやっぱりGoProの6か7のBlackがいいと思います。

 とまあ、細かいことを書きましたが、GoProとかジンバルとかにあまり接してこなかった方にとって、Osmo Pocketで得られる映像にはトキメキを感じるのではないでしょうか。誰がどう撮っても、だ~いたい滑らかだし安定している映像になる。これってやっぱりフツーに凄くないですか?

Osmo Pocketはスマホと親和性が高い

 前述のとおり、Osmo Pocketはスマートフォンとダイレクトに接続できます。また、スマホ接続時に使う「DJI mimo」アプリもよくできていて、なかなか使いやすいし楽しい。DJIはドローンでおなじみのメーカーですが、ドローンは設定も撮影もスマートデバイス必須。そういう製品を多々開発してきたメーカーだけあって、さすがと思えるアプリの使い勝手です。

Osmo Pocketのモニター下部にはスマートフォンと接続するための接点があります。ここに付属のプラグを装着してスマホと合体。プラグは、目隠し用のダミープラグと、Lightning用プラグ、USB-C用プラグが付属します。
スマートフォンと合体させると「DJI mimo」アプリが起動します。わりと普通のカメラアプリ感覚で使えます。スタビライザーの動作モード変更など各種機能設定も行えます。マニュアル撮影をしたい場合もアプリから。
フレームレートなどの細かい設定変更は、やはりアプリからのほうが手っ取り早い感じ。ファームウェアが更新され、色調整などの編集を行いやすい「シネライクプロファイル」も追加されています。

 Osmo Pocketはタイムラプス撮影も可能で、スタビライザーの動きにより視点を徐々に変えながらタイムラプス撮影ができる「モーションラプス」撮影も行えます。モーションラプスはOsmo Pocket単体でも行えますが、アプリ経由で行うとより撮影の自由度が高まります。タイムラプス撮影に限らず、Osmo Pocketの活用幅をより広げようと思うなら、やはりスマホと接続してアプリからOsmo Pocketをコントロールするのがいいでしょう。

 使っていて「案外イイかも」と思えたアプリの撮影モードとして、「ストーリーモード」があります。こういう高機能カメラ、機能性に魅力を感じて買ったはいいけど……さて、どう撮って、どう編集すれば? と戸惑う方は少なくないと思います。それを見越して「じゃあアプリ側で編集も演出もしますから、何カットか撮影してください」的な機能です。

ストーリーモードで撮影している様子。いくつかの出来上がりサンプル動画(ストーリー)があり、好みのパターンを選び、開始をタップ。アプリが「こんな風なシーンに仕上げる予定」という動画を左上に表示してくれます。下に見える数値が出来上がりカット秒数。ユーザーはその秒数をちょっとだけ意識して、自由に撮影します。カメラワークはアプリ側が自動で行うパターンが多いので、ユーザーはただ撮るだけでもOKです。それを何度か繰り返せば、音楽や特殊効果など演出入りの編集済み動画ができあがります。
【動画】真冬の何もない閑散とした公園にある木を撮っただけのもの。カメラワークなどは全てアプリとOsmo Pocketが行ってくれました。何だか意味深でソコソコ見られる動画になっていますね~。
【動画】同じく真冬の何もない閑散とした公園にあったオモシロミのない古そうな像の遊具を撮っただけの動画。これもアプリとOsmo Pocketがソレナリに仕上げてくれました。

 上のような、単なる木とか、ただの像の遊具でも、いろいろ演出して音楽まで付けて編集してくれるストーリーモード。たぶん、知人友人あるいは食べ物に風景にと、見栄えするものを撮ればかなり楽しい動画になると思います。こういう点でも、Osmo Pocketは初心者がいきなり買ってもかなり遊べるし満足できるガジェットなんではなかろうか、と思ったりする筆者なのでした。

 てな感じの Osmo Pocket。実勢価格は税込4万4900円前後。スマートフォンを持っていて、それにスタビライザーを追加しても、まあ似たようなコトができます。たとえばDJI「Osmo mobile 2」(公式ページ)。手持ちのスマホと、この直販税込価格1万6800円の後付けスタビライザーを組み合わせれば、安定感プロ並みの動画とかをバンバン撮れちゃったりします。

 ただ、こういう後付けスタビライザーって、高性能ではあっても、使用感が案外煩雑だったりして。スタビライザーにスマホをセットして、重心のバランスを取ってから電源を入れて……という面倒もありますし、どこでもパッとすぐ使えるようなサイズでもない。「さぁ撮るゾ!」と少々頑張らないと常用につながらないモノなんですね。

 そういうコトを考えると、やっぱりOsmo Pocketは実用性が高い。「いちおう撮ろうかな」程度のモチベーションで、即出して即撮れる。それだけで安定感プロ並み映像ゲット。こういう手っ取り早さは非常に重要。手軽だからこそ頻繁に使うようになると思うっていうか、実際筆者はそうです。

 とまあ、余談が多くなってしまいましたが、とても実用的ですし、新たなジャンルのガジェットとしても興味深い Osmo Pocket。使っていて楽しいですし、得られる映像についても満足感が高い。興味のある方は、ぜひ実機に触れてみてください♪

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。