スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

カードサイズ携帯電話「NichePhone-S」に惹かれて

カードサイズ携帯電話「NichePhone-S」に惹かれて

 つい先日の2017年11月10日に発売された、フューチャーモデルの「NichePhone-S(ニッチフォン-S)」(公式ページ)。カードサイズのSIMフリー携帯電話です。スマートフォンじゃなくて、携帯電話。ミョーに惹かれるものがありましたので予約購入してみました。

フューチャーモデルの「NichePhone-S」。ほぼカードサイズで質量は38g。シャツの胸ポケットに入れても違和感のないサイズ・質量のSIMロックフリー携帯電話です。実勢価格は1万1000円弱。カラーはブラックとホワイトが用意されています。

 この時代にカードサイズの携帯電話とは、攻めてますね~。しかもスマートフォンではなく、通話のための携帯電話とは、チャレンジング。でも日本市場にはこういう大胆な端末がなく、なんかこう刺激的な要素が足りないので、こういう端末にはとても惹かれますし、歓迎したい心意気です。

 ただ、スペックを見る限り、ホントに単なる携帯電話。携帯電話+αの機能性はありますが、現在のスマートフォンとは方向性が全く異なる端末で、機能的にはまだ「写メ」という言葉もない20年以上前の携帯電話に近いと言えそうです。

 筆者が冷静に思うトコロをハッキリ書いてしまいますと、この「NichePhone-S」と同等以上の機能性を求めるなら、激安スマートフォンとか、型落ちのガラケーなりガラホなりのほうが「多くの人にとってずっと実用的」と思います。中古端末まで視野に入れれば、通信端末としての「NichePhone-S」はコストパフォーマンスも高くないとも思います。

 ていうか、こういう端末は、たとえばキアヌ・リーヴスとかトム・クルーズとかが、アジトを爆破され装備も失い逃亡中に、ベルトのバックルとか靴の踵からスタイリッシュに取り出して本部に連絡を取り、さらに偶然手に入れた旧型モバイル端末をテザリングでネットに接続して暗躍仲間にメッセージを送ったりするときに使う、いわばスパイ道具みたいなモンです。「実用性はちょっと……」と思っても惹かれたらそのまま買ってオモシロがれば良いのだと思います。

 いや良いかどうかはアレですが、通信端末の多様性の一翼を担って我々消費者にワクワク感を与えてくれる端末を、筆者は歓迎しちゃいます。てなわけで以降、「NichePhone-S」の機能や使用感についてレビューしてみたいと思います。

小さっ! 薄っ! 軽っ! のSIMフリー携帯電話

 通販サイト「ヨドバシ・ドット・コム」の大規模出荷遅延(関連記事)により、発売日から1日遅れて「NichePhone-S」を手にした筆者ですが、ゲンブツを見て「ウヒョ! 小さっ! 薄っ! 軽っ!」と喜んだのでした。カードサイズとは理解していましたが、携帯電話がこの大きさ・薄さ・軽さというのはショック。1990年頃からケータイを使っている筆者としては、過去に戻って当時の自分に2017年のケータイを見せてあげたい思いで満タンです。

「NichePhone-S」のサイズは長辺90×短辺50×厚さ6.5mm。Suicaのサイズは約長辺85×短辺54×厚さ1mm。ほぼ同じサイズ感です。
事務用電卓と並べると小ささ薄さが際立ちます。ミント菓子「MINTIA(ミンティア)」と、サイズも厚みも近い感じ。「NichePhone-S」の厚みは一般のプラスチックカード×5~6枚といった感じです。
ピーアップの「Mode1 RETRO」(二つ折りガラケースタイルのAndroid端末)と比べた様子。機能性は全く異なりますが、やはり「NichePhone-S」は非常にコンパクトです。
「NichePhone-S」はカードサイズで厚さ6.5mmなので、長財布に入れて携帯することもわりと現実的です。手持ちの名刺入れにもスッポリ収まってしまいました。

 という感じの小型・超薄な携帯電話ですが、ボタン類は意外に操作しやすいです。適度な押下感があり、ボタン位置も適切。それ以前に、複雑なことができない上に、物理的なボタン数が多いので、(最初はボタンの意味を覚える必要が少々ありますが)慣れればスムーズに操作していけます。

カードサイズの端末ながら、ボタンはまずまずの押下感があり、隣り合うボタンがやや離れていて、わりと押しやすいです。テキストは「トグル入力」で打ち込みます。
SMSを作成している様子。電話番号をメールアドレスとして使う「テキストのみ送受信できるメッセージ機能」ですね。ディスプレイは0.96型モノクロ有機ELで、解像度は128×64ドット。

 スマートフォンと比べると、メニューなどユーザーインターフェースは独特と言えるでしょう。ただ、ガラケー文化的には通用するベーシックなUIなので、ガラケー世代の人ならすぐ使いこなせると思います。

 こんなふうな携帯電話であり、これで主に通話とSMS送受信ができます。また、テザリングに対応していて、「NichePhone-S」(アクセスポイント)に対してタブレットなどをWi-Fi接続すれば、タブレットなどを「NichePhone-S」経由でインターネットに接続できます。

 それと「NichePhone-S」の使用時間ですが、電池容量が550mAhと少ないため、連続通話時間約3時間/待機時間約72時間です。充電は付属のマグネット式アダプターを経由してUSB充電します。

何ができるのか?

 さて、「NichePhone-S」でできることですが、前述のとおり通話・SMS送受信・テザリングができます。これに加え、内蔵電話帳の利用や着信履歴表示、Bluetoothヘッドセット接続、音声メモの録音再生、アラーム、音楽再生ができます。

左から、着信履歴の詳細を表示している様子、アラーム機能、音声メモ機能です。画面真下の[▲][▼][OK]ボタンあたりで操作できるので、まずまずスムーズに使っていけます。ただし機能的には「必要最小限」といったイメージです。

 ほか、できることは、ありません。アプリも追加できなければカメラもないし写メを受け取る手段もない、無い無い尽くしの携帯電話なのです。OSはAndroid 4.2をベースとしたものですが、Googleアカウントとは無関係なので、電話帳としてGoogle連絡先データを利用することもできません。「NichePhone-S」は、テザリングやBluetoothヘッドセットは一応使えるけれど、ほかは純粋な携帯電話という製品なのでした。

 ただ、この「NichePhone-S」を胸ポケットからスッと出して人前で通話したりすると、「えっ何ソレ電話なの! ミンティアかと思った!」とか人を驚かせることができます。そのほか、アジトを爆破され装備も失い逃亡中にベルトのバックルから「NichePhone-S」をスタイリッシュに取り出し本部に連(以下略)。

買うときに気にすべき点

 スマートフォンと比べても、カラー時代のガラケーと比べたりしても、ホントにかなり何もできない「NichePhone-S」。でも超薄型・超小型でカッコイイし! それにカードサイズ端末で通話もできるし! とは思うんですが、少々「制約」があり、それは通話にも関わってきます。

 というのは、「NichePhone-S」はLTE対応ではなく3Gまでの対応で、対応バンドが「NTTドコモ 2.1GHz帯/W-CDMA/バンド1」である点。LTEではないのでデータ通信速度が遅くなる(テザリング利用時に影響する)のに加え、ドコモなら「FOMAエリアなら通話圏内だけれど、FOMAプラスエリアでは通話圏外」。FOMAプラスエリアは電波が届きにくいエリアをカバーしている800MHz帯のサービスなので、2.1GHz帯のみ対応の「NichePhone-S」は圏外になるというわけです。たとえば、ドコモの「サービスエリア」(公式ページ)でチェックしてみるとわかりやすいでしょう。

2017年11月5日時点のNTTドコモサービスエリア。埼玉県秩父市周辺ですが、LTEも3Gも含めると広い範囲をカバーしています。※マップはNTTドコモWebサイトより抜粋。
こちらは3Gエリア(FOMAエリア)のみ表示したもの。「NichePhone-S」では黄色で示されたエリアは圏外となってしまいます。※マップはNTTドコモWebサイトより抜粋。

 こんな感じで、エリアによっては「NichePhone-S」の通話圏外になってしまうこともあります。アジトを爆破され装備も失い逃亡中(中略)取り出して本部に連絡を取ろうとしたら通話圏外だった、ということもあるわけです。そのあたり、購入を考えるなら要注意です。

 テザリングについても同様です。LTEではなく3Gでのデータ通信になりますので、速度的に不利。ただ、拙宅で試したところ、ウェブサイトもGoogleマップも不都合なくスムーズに表示されました。3Gでも使用する場所や時間帯によっては「空いていてわりと速い」こともあります。とは言っても、テザリング重視で「NichePhone-S」の購入を考えるなら、データ通信速度についても要注意です。

 てな感じの「NichePhone-S」。実用性重視で端末を探している方には全然オススメしません。ですが、「実用性もあったほうがいいけど、それよりなんか他にないオモシロいものない?」という好奇心がある方は、実機に触れて「小さっ! 薄っ!」とか「ホントだ通話できる~」とか思いつつ、アジトを爆破され装備も失い逃亡中に「NichePhone-S」を使って危機を脱出する妄想(しつこい)などを膨らませてみてください♪

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。