法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

2つのブランドで「スマホ楽しい」を訴求するソフトバンク2015年冬~2016年春モデル

 10月8日、ソフトバンクは発表会を開催し、「ソフトバンク」(SoftBank)ブランドと「ワイモバイル」(Y!mobile)ブランドで販売する2015年冬~2016年春モデルを発表した。2015年4月にソフトバンクグループの通信系4社が合併し、新生ソフトバンクモバイル(7月からは商号をソフトバンクに変更)が誕生してから、はじめてソフトバンクとワイモバイルの2つのブランドを並列する形で実施した発表会ということで、両ブランド向けに豊富なラインアップを揃えてきた。発表会の詳細については、本誌のニュース記事をご覧いただきたいが、ここでは今回の発表内容の捉え方とそれぞれの製品の印象などについて、解説しよう。

2つのブランドを展開するソフトバンク

 2006年に旧ボーダフォン日本法人を買収し、本格的に国内における携帯電話事業をスタートさせたソフトバンク。月額980円の「ホワイトプラン」をはじめ、2008年のiPhone導入など、業界にさまざまなインパクトを与えてきた。一方、2005年に新規参入事業者として認可されたイー・モバイル、1995年にPHS事業を開始したウィルコム(旧DDIポケット)を統合し、2014年にスタートしたワイモバイル。今年4月、この2社に加え、同じソフトバンクグループ内のソフトバンクBB、ソフトバンクテレコムを統合した新生ソフトバンクモバイルが誕生した。その後、7月に商号を「ソフトバンク」に変更し、携帯電話事業やインターネット接続サービス、固定通信サービスなどを提供する会社として、スタートを切っている。

 こうして会社としての新生「ソフトバンク」はスタートを切ったものの、携帯電話事業については、「ソフトバンク」ブランドと「ワイモバイル」ブランドをどのようにすみ分けていくのか、旧ウィルコムから継承したPHS事業などをどうするのかなど、今後の方向性が今ひとつ見えにくい状況にあった。同時に、2012年にソフトバンクが買収した米スプリントの事業が芳しくない状況にあることが再三、伝えられ、日本のユーザーにとっては「アメリカ放題」などのメリットは享受できたものの、将来的な展望には少なからず不安の残る状況が続いている。

 今回の「2015 Winter - 2016 Spring Collection」と題された発表会では、「スマホ楽しい」というコピーを掲げ、ソフトバンクとワイモバイルの両ブランド向けにスマートフォンからタブレット、モバイルWi-Fiルーター、Androidフィーチャーフォン、宅内向けデータ通信端末など、多彩なラインアップを揃えてきた。スマートフォンについてもおなじみのシャープ製AQUOSやソニーモバイル製Xperiaなどの人気機種をはじめ、9月30日に米国で発表されたばかりのGoogle Nexusの2機種をどちらもラインアップに加えるなど、ユーザーの興味をひきつけるモデルをラインアップしてきた。

 発表会ではソフトバンクの代表取締役社長兼CEOの宮内謙氏が壇上に立ち、プレゼンテーションの冒頭は市場環境などについての説明が行なわれた。

 まず、最初に説明されたのは9月25日に発売されたばかりのiPhone 6s/6s Plusの販売台数で、BCNランキングでは家電量販店での販売台数が、NTTドコモとauを抑え、トップであることが紹介された。これは実際に明示されているランキングだが、読者のみなさんもご存知のように、今回のiPhone 6s/6s Plusの販売については、各社とも予約販売にかなり力を入れ、各携帯電話会社の予約サイトなどを通じて、各社系列店などで購入するケースが中心になっており、BCNランキングは市場全体の販売の実勢を表わしているとは言いにくい。

 次に、ソフトバンクのネットワークの状況について、説明が行なわれた。FDD-LTE方式による「SoftBank 4G LTE」、AXGP(TDD-LTE互換)方式による「SoftBank 4G」という2つのLTEネットワークでキャリアアグリゲーションを実現し、LTEネットワークの実人口カバー率も99%を超えるところまで充実しているという。ただ、他社のLTEサービスが200Mbps超を実現しているということもあり、ソフトバンクとしては「理論速度」よりも「実効速度」を重視するとしており、通信ログの解析や基地局の最適化など、ビッグデータの活用によるネットワークのチューニングを行なっているという。イード社、リーディア社、クロス・マーケティング社という第三者機関が行なった調査でもiPhone 6s/6s Plusで「圧倒的な実効速度No.1」を記録したとしている。

 こうした評価をどう見るのかは読者のみなさんの判断におまかせしたいが、少なくともソフトバンクが旧ボーダフォンを買収し、携帯電話事業をスタートさせてからの変遷を鑑みれば、プラチナバンドと呼ばれる900MHzの割り当てを受け、1.7GHz帯を持つイー・モバイルの帯域を継承し、旧ウィルコムから切り離す形で運用がスタートしたWCP(Wireless City Planning)による2.5GHz帯のAXGP(TDD-LTE互換)も利用できるようになり、統合という手法を採ったものの、ある意味、携帯電話事業者の中ではもっとも有利な環境を手に入れてきたと言える。

 ただ、そういった有利な環境を整えた割に、ユーザーから「ソフトバンクはつながるようになった」という声をあまり耳にしていないように感じられるのだが……。第三者機関の評価、実効速度という裏付けをアピールしたい気持ちもわかるが、いかにユーザーから「つながる」という声や信頼を得ていくのかもソフトバンクにとって、重要なテーマではないだろうか。

微妙に重なり合う2つのブランド向けモデル

 次に、今回発表された「2015 Winter - 2016 Spring Collection」と題されたラインアップについて、全体構成を見ながらチェックしてみよう。

 まず、2つのブランド向けの構成については、ソフトバンクがスマートフォン4機種、Androidフィーチャーフォン3機種、タブレット1機種、モバイルWi-Fiルーター1機種、宅内向け端末1機種の合計10機種であるのに対し、ワイモバイルはスマートフォンとAndroidフィーチャーフォンが2機種ずつ、モバイルWi-Fiルーターが1機種の合計5機種で、その内、3機種がソフトバンクと共通となっている。両ブランド向けを合わせると、のべ15機種が発表されたが、共通モデルを差し引くと、12機種が新たに市場に投入されることになる。

 ソフトバンクについてはiPhoneも扱っているうえ、しばらくは夏モデルも併売されるため、あまりスマートフォンのバリエーションが多くないが、それでも主力となるハイエンドモデル3機種の他に、コンパクトサイズのモデルを加えたり、Androidフィーチャーフォンも3機種を揃えるなど、選択肢は増えている。ソフトバンクはこれまでiPhone重視の姿勢を取ってきたが、昨年あたりから徐々にAndroidスマートフォンも積極的に扱うようになり、その方向性は今後も維持されていくようだ。ワイモバイルについては、やはり、旧イー・モバイルなどでSTREAM X GL07SやNexus 5/6が売れてきたことを反映し、その後継モデルに位置付けられる製品を取り揃えた格好だ。

 フィーチャーフォンについては、両社とも共通で取り扱っており、一部の機種はカラーバリエーションのみの違いだが、ブランド別に投入の背景が異なるようだ。ソフトバンクの場合、既存のフィーチャーフォンの契約者が数多く存在するため、これを継続してもらうためにAQUOSケータイとDIGNOケータイを揃えているのに対し、ワイモバイルはどちらかと言えば、既存のPHS端末を巻き取りたいという思惑が強いようだ。ちなみに、両ブランド向けのフィーチャーフォンは、いずれもAndroidプラットフォームを採用しているものの、明確にはそれを謳っていない。Wi-Fiやテザリングにも非対応で、基本的に自動通信などを制限するフィーチャーフォンに近い仕様を採用している。

 メーカー別で見ると、これまで通り、シャープがもっとも多く、これに京セラやファーウェイが続いている。珍しいところではソフトバンク向けに供給されるレノボが挙げられるが、同社製品は過去に法人向けなどで扱われた実績があり、今回、はじめて個人向け製品が投入されることになる。AndroidタブレットでもYOGAシリーズなどで実績があるメーカーだけに、今後の展開が期待される。

 また、機種別で少し異なるのが周波数帯の対応状況だ。たとえば、900MHz帯や2.1GHz帯はスマートフォンとタブレットであれば、いずれも3GとLTEの両方で対応しているが、1.7GHz帯についてはNexus 6PとNexus 5Xが3GとLTEの両方に対応しているのに対し、他機種はLTEのみに対応する。今後、運用が開始される予定の700MHz帯のLTEについては、Nexus 6Pのみが対応する。Nexus 6PとNexus 5Xについては基本的にグローバル向けの仕様に準拠しているため、他機種と対応状況が少し異なるが、SIMロックを解除して、他事業者で利用するとき、少し有利になるという見方もできる。

 ラインアップ全体については、ソフトバンク向けをハイエンド、ワイモバイル向けを普及モデルや価格重視のユーザー向けと考えているようで、それぞれのブランドに対し、ある程度、バリエーションのあるモデルを揃えた格好だ。しかし、内容を見ると、既存ユーザーをどのように受け継いでいくのかを重視したラインアップという印象が強く、2つのブランドを今後、どうしていくのかは、相変わらず、見えにくい状況だ。それぞれのブランドを掲げるキャリアショップなどが存在するため、なかなか統合は難しいのかもしれないが、ユーザーとしてはもう少し明確なすみ分けを提示して欲しいところだ。

 また、今回の発表会ではYahoo!ショッピングなどのYahoo!サービスに連動可能な「スマートログイン」、Tポイントとの連携強化、IBM Watsonを活用したヘルスケアサービス「パーソナルカラダサポート」、医療機関の診察料を後払いできる「スマート病院会計」が合わせて発表された。

 これらはソフトバンクがスマートフォンを日常生活でも役立たるようことができるように、「買い物」「ポイント」「健康」「病院」の4つのジャンルに対して、提案したサービスで、いずれも幅広い世代での活用を狙うという。若い世代については利便性を優先するため、利用される可能性が見込めるが、ある一定以上の年齢層は信頼性やプライバシーを優先する傾向が強いため、サービス内容やしくみの解説も含め、もう少していねいにアプローチする必要があるだろう。

スマートフォンを中心に15機種をラインアップ

 さて、ここからは今回発表された両ブランドのスマートフォン6機種、タブレット1機種、Androidフィーチャーフォン3機種、モバイルWi-Fiルーター1機種、宅内向け端末1機種について、個別に説明しよう。各機種の詳しい内容については本誌の記事を参照していただきたいが、今後半年間で順次発売される製品なので、ここでの評価は最終的な製品と差異があるかもしれないことをお断りしておく。

ソフトバンク

Xperia Z5(ソニーモバイル)

 約5.2インチのフルHD液晶ディスプレイを搭載したXperiaシリーズの最新モデル。従来のXperia Zシリーズのオムニバランスデザインを継承しているが、Xperiaシリーズのアイコンでもあった側面の電源ボタンを楕円形に変更し、指紋センサーを内蔵。ボディは薄さ6.3mmに仕上げ、背面にフロストガラスを採用し、マットな質感で仕上げている。フロストガラスの触感がこれまでのものと違うため、やや滑りやすくなった印象もあり、取り扱いには少し注意が必要だろう。

 ちなみに、他社版は背面などにキャリアロゴがレイアウトされているが、ソフトバンク版はキャリアのロゴが入らないため、基本的には海外版とほぼ同じデザインで仕上げられている。

 もっとも注目されるのは2300万画素の新設計センサーを採用したカメラで、位相差AFとコントラストAFを組み合わせたハイブリッドAFにより、わずか0.03秒でのオートフォーカスが可能。ネットワークについてはSoftBank 4G LTEとSoftBank 4Gの両方に対応し、キャリアアグリゲーションは2.1GHz(Band1)と900MHz(Band8)の組み合わせ、もしくは2.5GHz(B41)の2波を束ねることで、受信時最大187.5Mbpsを実現する。

AQUOS Xx 2(シャープ)

 約5.3インチのフルHD液晶ディスプレイを搭載したAQUOSシリーズの最上位モデル。2015年夏モデルとして発売された「AQUOS Xx」の後継モデルに位置付けられる。従来モデルよりも画面サイズがひと回り小さくなり、ボディ幅が約6mm狭くなったことで、かなり持ちやすくなった印象。ソフトバンク向けのAQUOSとしては初めて背面に指紋センサーを搭載し、グリップマジックとの連動により、「持つ」「ロック解除」と一連の操作がやりやすい環境を整えている。指紋認証で登録した指とアプリを関連付けることにより、センサーに指を通して、特定のアプリを起動することも可能だ。

 ディスプレイはNTTドコモ向けのAQUOS ZETA SH-01H同様、120Hz駆動に対応したハイスピードIGZOを採用しており、動画再生やスクロールを多用するようなシーンでもなめらかな表示を可能にする。チップセットは従来モデルのMSM8994に代わり、Snapdragon 808 MSM8992を搭載する。AQUOSでおなじみのエモパーは「エモパー3.0」にバージョンアップし、「エモメモ」という機能により、ちょっとしたメモを端末に話しかけて登録しておくことで、後からエモパーがタイミング良く話しかけてきて、思い出させてくれるという機能を実現している。

 カメラもGR Certifiedを取得した1310万画素カメラを搭載し、光学手ぶれ補正やハイブリッドAFも搭載する。サブカメラも広角レンズでワイド自撮りが可能。フラッグシップモデルらしく、ハイスペックを追求した一台と言えそうだ。

AQUOS Xx2 mini(シャープ)

 約4.7インチのフルHD液晶ディスプレイを搭載したコンパクトなハイスペックモデル。2014年2月に発売されたAQUOS Xx mini 303SH以来、久しぶりのコンパクトモデルになる。ボディ幅は約66mで、同クラスのサイズのディスプレイを搭載するiPhone 6sよりも1.1mm、コンパクトになっている。ディスプレイは上位モデルのAQUOS Xx 2と同じハイスピードIGZOを採用し、動画再生やスクロールもなめらかに表示する。

 本体下部にはLEDが内蔵されており、着信時などに「ヒカリエモーション」と呼ばれるイルミネーションを楽しむことができる。上位モデルと比較して、チップセットやメモリ、ストレージなどは共通だが、側面を蒸着塗装で仕上げたり、背面パネルをアクリルに変更するなど、細かい部分に差異がある。カメラもGR Certifiedを取得し、光学手ぶれ補正を搭載するが、ハイブリッドAFには対応していない。ハイスペックとコンパクトボディをバランスさせたバランスのいい端末と言えそうだ。

Nexus 6P(Google/Huawei)

 9月30日に米国で開催されたGoogleのイベントで発表されたばかりのNexusシリーズの最新モデル。ソフトバンクブランドでは、初のNexusシリーズの取り扱いになり、また国内の携帯電話事業者ではソフトバンクのみが取り扱う。ただし、Google版と違い、SIMロックがかけられており、ソフトバンクのルールに則って、購入から180日後に解除できる。

 プラットフォームは最新のAndroid 6.0(marshmallow)を搭載し、今後、GoogleがOSの最新版を公開した場合、すぐに適用できるというメリットを持つ。約5.7インチのWQHD対応有機ELディスプレイを採用し、CPUはSnapDragon 810 MSM8994を搭載するハイスペックモデル。ボディは金属製のユニボディで、薄さ約7.3mmとスリムに仕上げられている。

 背面には指紋認証センサーを内蔵し、ロック解除やGoogleが提供する決済サービス「Android Pay」に対応する。ストレージは32GBと64GBのモデルがラインアップされているが、microSDメモリーカードスロットを持たないため、その点を考慮してモデルを選ぶ必要がありそうだ。グローバル向けのモデルをほぼそのまま販売することになるため、アプリはAndroid標準のもののみがプリインストールされるが、ソフトバンクの「S!メール」は業界標準のMMSに準拠して提供されているため、標準のメッセージアプリで送受信することができる。最新のプラットフォームを、よりハイスペックな環境で利用したいユーザー向けのモデルだ。

かんたん携帯9(シャープ)

 約3.4インチの液晶ディスプレイを搭載し、「デカ文字」による見やすさを考慮した使いやすさ重視のモデル。Androidプラットフォームを採用しながら、従来のかんたん携帯に搭載されていた防水・防塵、ワンセグ、赤外線通信、GPSなどの機能を継承し、ほぼ同じ環境を実現する。LINEにも対応する。

 AQUOSケータイをベースに開発されているが、発売が2016年3月ということもあり、通信方式は3G/HSDPA方式に加え、FDD-LTEにも対応する。3G HD VoiceとVoLTEにも対応しており、かんたん携帯シリーズに搭載されてきた「くっきりトーク」との組み合わせにより、クリアな音声通話を可能にする。ただし、Wi-Fiとテザリングには対応しない。

Lenovo TAB2(Lenovo)

 8インチのWXGA対応液晶ディスプレイを搭載したAndroidタブレット。Lenovoブランドの端末は過去にソフトバンクが法人向けなどで扱ったことがあるが、個人向けのキャリアモデルとしては初めての製品になる。

 製品としてはグローバル向けに販売されているLenovo TAB2 A8をベースに開発されており、RAMの容量が1GBから2GBに変更されている。通信についてはSoftBank 4G LTEのFDD-LTE、SoftBank 4Gで採用されているAXGP(TDD-LTE互換)方式に対応する。本体の前面にデュアルスピーカーを備えており、映像コンテンツなどを迫力あるサウンドで楽しむことができる。ソフトバンクとしては昨年、GALAXY Tab4を発売して以来のAndroidタブレットであり、価格設定と料金プラン次第では幅広いユーザー層に受け入れられそうなモデルだ。

Airターミナル2(Huawei)

 旧ソフトバンクBBが自宅などの固定インターネット回線の置き換えとして提供してきた「SoftBank Air」の宅内用ターミナルの最新モデル。SoftBank 4Gに接続することができ、宅内の機器をWi-Fiや有線LANで本機に接続することで、インターネット接続を可能にする。キャリアアグリゲーションと4×4 MIMOの組み合わせにより、受信時最大261Mbpsでの通信が可能。

 従来モデルはどちらかと言えば、無線LANアクセスポイントを幅広にしたような筐体だったが、今回は丸みを帯びた角柱状の筐体を採用し、コンパクトにまとめられている。背面側に有線LANポートやUSBポートなどを備える。12月発売の予定だが、新入学・新社会人シーズンの春商戦において、新たに自宅にインターネットの環境を用意したいユーザーには気になるモデルだ。

ソフトバンク&Y!mobile共通

AQUOSケータイ(シャープ)

 Androidプラットフォームを採用しながら、従来のフィーチャーフォンとほぼ同様の機能を折りたたみボディで実現したモデル。約3.4インチのqHD表示が可能な液晶ディスプレイを搭載し、防水防じん、ワンセグ、赤外線通信といったフィーチャーフォンの基本機能に加え、GPSやBluetooth、伝言メモといった便利機能やシャープ製端末でおなじみのベールビュー(のぞき見防止)も搭載される。

 通信方式は3G/HSDPAに対応し、AXGP及びLTEには対応しない。同じチップセットを採用するかんたん携帯9がLTEに対応していることから、説明員によれば、将来的にアップデートでLTEに対応する可能性はあるという。使い勝手はソフトバンクの3G携帯電話と同じだが、ブラウザなどでスクロール操作をするときはテンキー部分をタッチパッドのように活用できるタッチクルーザーも搭載される。基本的には3G携帯電話からの置き換えを狙ったモデルだが、今後、発表される予定の料金プラン次第では2台持ちの端末や法人向けなど、幅広いユーザーのニーズに対応できそうなモデルだ。

DIGNOケータイ(京セラ)

 シャープ製のAQUOSケータイなどと同じように、Androidプラットフォームを採用したフィーチャーフォン。スマートフォンのDIGNOシリーズで好評の防水・防塵、耐衝撃性能などを継承しており、さまざまな日常シーンで安心して使えるモデルとして、仕上げられている。

 AQUOSケータイが3G/HSDPA対応で販売されるのに対し、このモデルは2016年3月発売ということもあり、FDD-LTEに対応し、3G HDVoiceやVoLTEでの音声通話にも対応する。ただし、Wi-Fiには対応せず、テザリングも利用できない。アプリについてはLINEもプリセットされる予定だ。ちなみに、VoLTEはソフトバンクが提供済みだが、ワイモバイルもNexus 5Xを発売した10月20日からVoLTEサービスの提供を開始している。

 ワンセグや赤外線通信を搭載する点はAQUOSケータイと共通だが、DIGNOケータイはおサイフケータイにも対応する。ただし、Androidプラットフォームのフィーチャーフォンという環境のため、対応サービスがどうなるのかは今のところ、何もアナウンスされていない。

Pocket WiFi 501HW/Pocket WiFi 502HW(Huawei)

 FDD-LTE方式によるSoftBank 4G LTE、AXGP(TDD-LTE互換)方式によるSoftBank 4Gに対応したモバイルWi-Fiルーター。受信時最大187.5Mbpsに対応する。Wi-Fi部分については、IEEE802.11a/b/g/n/acに準拠し、2.4GHzと5GHzの両方で利用することが可能。

 特徴的なのはワンセグとフルセグの両方のチューナーを搭載し、Pocket Wi-Fiに接続したタブレットやスマートフォンでテレビ番組を視聴することができる。本体には伸縮式のテレビアンテナを内蔵しており、タッチパネルに対応したディスプレイを操作することで、テレビ視聴の操作を切り替える。スマートフォン側はAndroid及びiOSに対応したテレビ視聴アプリをインストールする必要があり、アプリ内でチャンネルの切り替えや番組表の確認などが可能だ。ソフトバンクとY!mobileの両ブランドに同じ製品が供給されるが、契約する料金プランが違うため、容量制限や超過時の対応などがブランドによって異なる。

Y!mobile

Nexus 5X(Google/LG Electronics)

 Nexus 6P同様、9月30日に米国で開催されたGoogleのイベントで発表されたばかりの最新モデル。Y!mobileとしては従来のNexus 5やNexus 6に引き続いての採用になる。基本的な仕様はすでにGoogleから発表されており、NTTドコモが採用するものとも同じだが、従来のNexus 5やNexus 6と違い、SIMロックが設定されている。SIMロックはY!mobileのルールに則り、購入から180日後に解除することができる。

 アプリはAndroid標準のものがプリインストールされており、Y!mobile独自のアプリなどはプリインストールされない。プラットフォームは最新のAndroid 6.0(marshmallow)を搭載し、今後、Googleが最新版を公開した際には、基本的に同じようにすぐにアップデートができる見込み。Y!mobileがサービスの提供を開始するVoLTEにも対応し、Y!mobileのキャリアメールについてはGoogle Playからアプリをダウンロードすることで利用することができる。

 本体は約5.2インチのフルHD対応液晶ディスプレイを搭載し、背面には指紋認証センサーを備える。指紋認証センサーはロック解除やGoogleが提供する決済サービス「Android Play」に対応する。底面に備えられた外部接続端子は一般的なmicroUSBではなく、今後、主流になると見られるUSB Type-C端子を採用する。Androidプラットフォームの最新環境を活用したいユーザー向けのモデルと言えるだろう。

LUMIERE 503HW(Huawei)

 5インチのHD対応液晶ディスプレイを搭載したスリムでコンパクトなAndroidスマートフォン。Huaweiがグローバル向け及び国内のオープン市場向けに販売する「P8Lite」をベースにしたモデルだが、背面に描かれていたHuaweiのロゴは消されている。チップセットはHiSilicon製Kirin620を搭載する。

 背面に備えられた1300万画素カメラはHuawei端末でおなじみの「ビューティーモード」にも対応するほか、インカメラでの自分撮りについてもあらかじめ設定した補正を記憶させておき、グループ写真撮影時に自分だけが補正を効かせた状態で撮影できる「パーフェクトセルフィー」にも対応する。同じく最新のHuawei製スマートフォンに搭載されているモーションコントロールも搭載されており、端末がスリープ状態でもディスプレイに「C」と指先で書くと、カメラが起動し、「W」と書くと、ブラウザを起動するといった使い方ができる。ボディは幅71mm、薄さ7.7mmとスリムで持ちやすい。おサイフケータイやワンセグ、防水防じんなどには対応していないが、コンパクトで扱いやすいスマートフォンを求めるユーザーにはオススメできるモデルだ。

「スマホ楽しい」を実現するには何が必要?

 携帯電話事業への本格参入後、さまざまな変遷を経て、ソフトバンクというひとつの会社にまとまり、「ソフトバンク」と「ワイモバイル」という2つのブランドを展開することになった会社としてのソフトバンク。

 今回の発表会は今後の同社の方向性を占う上で、注目される発表会だったと言えるが、それぞれのラインアップにはある程度のバリエーションを持たせることができたものの、今ひとつ明確な方向性を示すことができなかったように見える。2つのブランドに同じモデルを展開することは、海外の携帯電話事業者でもよく見かける事例であり、否定するものではないが、もう少しそれぞれのブランドのユーザー層などを含め、明確な方向性を示さなければ、結果的にどちらかに集約されてしまうような気がするのだが、ソフトバンクとしてはそれでいいのだろうか。

 また、今回の発表会の質疑応答では、旧ウイルコムから継承したPHS事業についての質問もあった。PHSの新機種がないという質問に対し、宮内氏は「LTEスマートフォンでも話し放題の時代が来ている。既存ユーザー向けのサービスは継続するが、4Gに乗り換えて欲しい。今後はあまり新機種が出てこないと思う」と答えていた。

 今年、auがAndroidプラットフォームを採用したフィーチャーフォン「AQUOS K」を発表したとき、今後は従来のフィーチャーフォンの開発や製造が難しくなるため、Androidプラットフォームを採用したフィーチャーフォンが開発されたという話を筆者は書いたが、PHSについても同じことが言え、中国や台湾での需要があったものの、漸減傾向にあり、今後は発売や製造が難しくなるだろうと言われている。

 今年はPHSが国内でサービスを開始してから20年を迎える。動きの激しい通信サービスにおいて、20年も続いた通信規格はGSMなどを除けばあまり多くなく、改めてPHSの通信技術としての素性の良さが評価されているという指摘もあるが、端末の製造や周波数の利用などのことを考えると、業界全体として、そろそろ終息させるかどうかを検討する時期を迎えつつあるのかもしれない。

 ただ、そういったことをきちんとソフトバンクが記者向けに説明したり、業界向けに問題提起すればいいのだが、そんな話が聞こえてくることはあまりなく、発表会の質疑応答で質問されたから答えたという状況は、いささか頼りないという印象は否めない。

 今回の発表会でソフトバンクは「スマホ楽しい」というキャッチコピーを掲げ、宮内社長は「1億総スマホ時代がくると思っている」と発言していた。確かに、これからもスマートフォンの利用は拡大し、スマートフォンではないにしてもAndroidフィーチャーフォンのような新しい世代の端末も増えてくるだろう。

 ただ、そういった端末をユーザーが「楽しい」と思って使えるようにするには、もっと今まで以上の工夫と説明が必要になってくるはずだ。

 今回のラインアップはそれぞれのブランドにバリエーションを揃えたものの、主軸は、これまでソフトバンクやワイモバイルが獲得してきたユーザーの買い換え需要、他事業者のユーザーのMNP需要を満たすことに置かれており、あまり新しい提案やアプローチがなかったように見受けられた。あまり極端なやり方はご勘弁いただきたいが(笑)、ソフトバンクらしい新鮮な取り組みにも期待したいところだ。

 今回発表された端末は10月から順次、販売が開始される予定で、一部のモデルはすでにソフトバンクショップやY!mobileショップの店頭などにデモ機が展示される予定だ。本誌では今後、各機種の開発者インタビューやレビュー記事が掲載される予定なので、こちらも参照いただきつつ、「スマホ楽しい」を実感できる一台を見つけていただきたい。

法林岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows 8.1」「できるポケット docomo AQUOS PHONE ZETA SH-06E スマートに使いこなす基本&活用ワザ 150」「できるポケット+ GALAXY Note 3 SC-01F」「できるポケット docomo iPhone 5s/5c 基本&活用ワザ 完全ガイド」「できるポケット au iPhone 5s/5c 基本&活用ワザ 完全ガイド」「できるポケット+ G2 L-01F」(インプレスジャパン)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。