法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

防水防塵やおサイフケータイで日本仕様を充実させた「Galaxy A30 SCV43」

 国内向けに、Galaxy SシリーズやGalaxy Noteシリーズを展開するサムスン。グローバル市場において、ボリュームゾーンを狙った機種として人気の「Galaxy A30」をベースに、日本仕様を充実させた「Galaxy A30 SCV43」がauから発売されることになった。筆者も実機を購入したので、レポートをお送りしよう。

au/サムスン電子ジャパン「Galaxy A30 SVC43」、約160mm(高さ)×75.0mm(幅)×8.0mm(厚さ)、約176g(重量)、ブルー(写真)、レッド、ブラック、ホワイトをラインアップ

各社が拡充するミッドレンジモデル

 国内では2010年10月にNTTドコモから発売された「Galaxy S SC-02B」を皮切りに、Galaxy SシリーズやGalaxy Noteシリーズなど、フラッグシップモデルを中心に展開してきたサムスン。2020年の東京オリンピックを控え、今年は東京・原宿に「Galaxy Harajuku」をオープンし、全国各地でもイベントスペース「Galaxy Studio」を展開するなど、国内市場への浸透に積極的な姿勢を見せている。

 そんな中、今秋から本格的に施行される改正電気通信事業法と総務省令(現時点では「案」)の影響で、国内市場は大きな転換期を迎えつつある。回線契約と端末購入の完全分離により、端末購入時の割引が制限され、機種変更時などの負担が増えることになる。こうした動きを受け、各携帯電話会社はハイエンドモデルで下取りサービスを組み合わせた販売方法を発表する一方、ミッドレンジのモデルを充実させている。

 元々、ミッドレンジのモデルはオープン市場向けのSIMフリー端末が中心に展開され、家電量販店やMVNO各社のセットモデルとして、広く人気を集めてきた。当初こそ、ややパフォーマンスなどに不安が残るモデルが散見されたが、昨年あたりからは3~4万円程度の端末が販売ランキングでも上位を占めるようになり、存在感を一段と増しつつある。なかでもファーウェイが昨年発売した「HUAWEI P20lite」はたいへん好調な売れ行きを記録し、同社の国内市場におけるシェア拡大にも寄与している。もちろん、ライバルメーカーや各携帯電話会社も手をこまねいているわけではなく、3~4万円台で購入できるモデルを相次いでラインアップに加え、内容を充実させてきている。

 サムスンは元々、ハイエンドモデルのGalaxy SシリーズやGalaxy Noteシリーズが日本向けの主力と位置付けたため、ミッドレンジへの展開にはそれほど積極的ではなかったが、市場の動きにいち早く対応し、2017年夏に「Galaxy Feel SC-04J」を供給し、翌2018年秋には後継モデル「Galaxy Feel2 SC-02L」をラインアップに加えた。この2機種はdocomo with対象端末ということもあり、好調な売れ行きを記録し、今年5月の『docomo with駆け込み需要』でも数多く購入されたようだ。

 今回、auから発売された「Galaxy A30 SCV43」も同じく4万円前後で販売されるミッドレンジモデルに位置付けられる。Galaxy Aシリーズとしては、auが2015年12月に「Galaxy A8 SCV32」というモデルを販売したが、割引前の価格が8万円弱と、上位モデルに近い価格帯だったこともあり、1機種のみの展開で終了していた。

ホーム画面はシンプルな構成。Googleの検索ボックスのウィジェットや天気予報を表示するウィジェットが標準でセットされている

 グローバル市場におけるGalaxy AシリーズはGalaxy Sシリーズに次ぐ位置付けとして展開されてきたが、今年に入り、ラインアップをリニューアルし、特徴的な機能を搭載した複数のモデルでラインアップが構成されている。なかでもGalaxy A30はコストパフォーマンスを追求しながら、必要十分を超えるスペックを搭載したモデルとして、各国で販売されている。筆者もこの半年ほどの間に、海外の携帯電話ショップでGalaxy A30を積極的にプッシュする光景を何度も見かけた。

「かんたん」モードに切り替えると、アイコンの表示も見やすく切り替わる

 auから発売された「Galaxy A30 SCV32」は、グローバル向けに販売されている「Galaxy A30」をベースにしているが、後述するように、防水防塵やおサイフケータイの搭載など、日本仕様を充実させた専用モデルとして設計されている。

インストールされているアプリ一覧の1ページ目。アイコンのデザインなどはGalaxy S10シリーズなどと共通

 NTTドコモから発売された「Galaxy Feel SC-04J」が「Galaxy A3」(2016年モデル)、「Galaxy Feel2 SC-02L」が「Galaxy A8」(2018年モデル)というように、いずれもグローバルモデルをベースに開発されていたが、「Galaxy A30 SCV32」は同じモデル名のまま、日本仕様を搭載した専用モデルとして仕上げられている。そのため、3.5mmイヤホンマイク端子の有無など、細かい部分にグローバルモデルと差異があり、カバーなどのアクセサリー類はそのまま利用できないなどの制約もある。

 しかし、価格はau Online Shopで4万3200円(税込)となっており、機種変更の場合は「Galaxy A30 機種変更購入サポート」というキャンペーンによって、最大1万800円が割り引かれるため、実質的に約3万円程度で購入することができる。端末の仕様や内容を考慮すると、かなりお買い得感も高い製品に仕上がっているという印象だ。

グローバルモデルをベースに、日本仕様を搭載

 さて、まずは外観からチェックしてみよう。Galaxyシリーズと言えば、Galaxy Sシリーズがディスプレイの左右両端を湾曲させたスリムなデザイン、Galaxy Noteシリーズはスクエアなボディデザインという印象が強い。これに対し、今回のGalaxy A30 SCV43はフラットなディスプレイに左右を湾曲させた背面カバーという構成で、あまり『Galaxyらしさ』を感じさせないスタンダードなデザインに仕上げているという印象だ。

背面にはメインカメラ、指紋センサーを備える。指紋センサーの右下におサイフケータイのアイコンがプリントされている

 前述のように、Galaxy A30 SCV43はグローバル市場で販売されているGalaxy A30をベースに開発されており、同じモデル名が与えられているが、防水防塵やおサイフケータイといった日本仕様が搭載されているため、実は部品類のレイアウトが少し異なる。

右側面は電源キーと音量キーを備える。レイアウトは基本的にGalaxy Sシリーズに準拠している
左側面はピンで取り出すタイプのSIMカードスロット、ストラップ穴を備える

 そのため、グローバルモデル用に作られたカバー類は装着してもカメラや指紋センサーの位置に微妙なズレがあり、3.5mmイヤホンマイク端子に至っては位置そのものが異なる。カメラや指紋センサーの位置は実用上、それほど大きな問題にならないが、イヤホンマイク端子を利用したいときは少し注意が必要だ。ちなみに、パッケージにはクリアタイプのケースが同梱されており、こちらはGalaxy A30 SCV43用に作られている。

Amazon.co.jpで販売されていたケースはグローバル版向けの製品だったため、装着すると、背面のカメラ部と指紋センサー部の穴の位置が微妙にずれていた
同じくグローバル版向けのケースの下部には、au版に存在しない3.5mmイヤホンマイク端子の穴が空いていた
下部にはUSB Type-C外部接続端子を備える。グローバル向けのGalaxy A30に備えられていた3.5mmイヤホンマイク端子は廃されている
SIMカードトレイはピンで取り出すタイプ。nanoSIMカードとmicroSDメモリーカードを1枚ずつ装着可能

 本体前面には2340×1080ドット表示が可能なフルHD+対応6.4インチのSuperAMOLED(有機EL)を搭載する。縦横比は19.5:9になるが、ディスプレイ上部にはインカメラを内蔵したしずく型のノッチが採用されており、実質的にはGalaxy S10シリーズなどと同じ縦横比19:9になる。ディスプレイには出荷時に保護シートが貼られており、そのまま使いはじめることができる。

本体左側面の下部側にはストラップ穴が備えられている

 これだけの大画面ディスプレイを搭載しながら、狭額縁に仕上げることで、ボディ幅は75mmに抑えられており、背面のラウンドした形状とも相まって、持ちやすく操作しやすいボディとなっている。ディスプレイが有機ELということもあり、Galaxy Sシリーズでおなじみの「Always On Display」に対応するほか、眼の疲労を抑える「ブルーライトフィルター」や「ナイトモード」などの機能も備える。

有機ELの特長を活かし、待機中にも情報を表示する「Always On Display」を搭載
ディスプレイは明るさの自動調整だけでなく、「ブルーライトフィルター」や「ナイトモード」を設定することができる。

 ボディはIPX5/IPX8の防水、IP6Xの防塵に対応する。グローバル向けのGalaxy A30は防水防塵に対応していないため、日本向けにカスタマイズされたことになるが、ボディの厚さはグローバル向けモデルと同じ8.0mmに抑えられている。この価格帯の製品では防水防塵対応モデルが少ないことを鑑みると、Galaxy A30 SCV43の大きなアドバンテージのひとつと言えるだろう。

顔認証の登録時に表示される注意事項。よく似た顔の人でもロック解除されてしまうことを覚えておきたい
メガネをかけない状態で登録したところ、メガネをかけた状態でもロックが解除できてしまった

 端末の生体認証については、背面に備えられた指紋センサーによる指紋認証、インカメラによる顔認証が利用できる。Galaxy Note9などに採用されていた虹彩認証には対応していない。それぞれの生体認証は同時に有効にしておくことができるため、普段は顔認証でロックを解除しておき、マスクを付ける冬場などは指紋認証を利用するといった使い方もできる。

背面に備えられた指紋センサーを使い、指紋を登録する。イラスト入りで表示されるので、はじめてのユーザーにもわかりやすい

 ただし、Galaxy A30 SCV43に限った話ではないが、マスクと手袋を付けてしまうと、どちらも外さない限り、ロックが解除できないので、注意が必要だ。また、顔認証はよく似た人の顔で解除されることがあるうえ、登録時にメガネの有無を選ぶようになっていながら、メガネをかけても解除できたケースがあるので、セキュアに使いたいときは指紋認証のみでの利用がおすすめだ。

チップセットはサムスン製Exynos 7904を採用

 バッテリーは3900mAhの大容量バッテリーを搭載する。このサイズの端末では3000mAhクラスのバッテリーを搭載する機種が多いが、単純計算で約1.3倍以上の容量を搭載しているため、その分、バッテリー駆動時間のロングライフが期待できる。同じauのラインアップで、ライバル機種となるファーウェイの「HUAWEI P30 lite HWV33」が3340mAhの大容量バッテリーを搭載し、約75時間の電池持ち時間(au規定の測定による)を実現しているのに対し、Galaxy A30 SCV43は約120時間の電池持ち時間を実現している。

画面を見ているときは画面を消さない「スマートステイ」などの機能も用意されている

 チップセットはサムスン製Exynos7904を採用し、4GB RAMと64GB ROMを搭載する。メモリーカードは最大512GBのmicroSDXCメモリーカードに対応する。サムスンはGalaxyシリーズの各機種で、米Qualcomm製Snapdragonと自社製Exynosをラインアップし、販売する国と地域によって、投入するモデルを使い分けているが、日本向けにはネットワークとの親和性を考慮し、主にSnapdragonを搭載したモデルを投入してきた。

 しかし、Exynos搭載モデルがなかったわけではなく、前述のNTTドコモの「Galaxy Feel2 SC-02L」にExynos 7885が搭載されるなど、いくつか採用例がある。パフォーマンスについてはベンチマークテストの結果などから、Snapdragon 632など、Snapdragon 600番台クラスと同等とされている。実際に使った印象としては、基本的にストレスなく使うことができたものの、まれにアプリの切り替えなどで引っかかるような動作で、レスポンスが今ひとつになるシーンがあり、少し気になった。

ナビゲーションバーはジェスチャーで表示するように設定したり、ボタンの順序も2パターンから選べる

 プラットフォームはAndroid 9 Pieが出荷時に搭載されており、原稿執筆時点では2019年5月1日版のセキュリティパッチが適用されていた。auに限らず、各携帯電話会社が販売する端末は、自社サービスへの対応を確認するため、オープン市場で販売されるSIMフリースマートフォンなどに比べ、ソフトウェア更新やOSバージョンアップが遅くなる傾向にあるが、au向けのGalaxyシリーズは最新のGalaxy S10シリーズをはじめ、昨年のGalaxy Note9やGalaxy S9シリーズ、一昨年のGalaxy S8シリーズに対して、現在でもセキュリティパッチを含むソフトウェア更新が提供されている。Galaxy A30 SCV43についても同様の対応が採られることを期待したい。

通知パネルは白い背景でデザインされてる。機内モードなどもここで切り替えが可能

 ちなみに、Galaxy A30 SCV43とまったく同じ仕様の端末は、UQモバイルとJ:COMでも扱われており、UQモバイル版はSIMロックがかけられていないことが確認されている。デュアルSIMではないなど、SIMフリー端末として気になる部分もあるが、au版を選ばずに、UQモバイル版を選んでもほぼ同じように使うことができるだろう。

広角/超広角のデュアルカメラを搭載

 ここ数年。各社のカメラ性能の競争が激しさを増しているが、Galaxyシリーズは早くから暗いところでの撮影に強いという評価を得ており、今年のGalaxy S10/S10+も画質ではライバル機種と互角の性能を示している。

背面に搭載されたデュアルカメラ。Galaxyシリーズにしては珍しく、カメラ位置が中央ではなく、左右対称でもない

 Galaxy A30 SCV43は背面にデュアルカメラを搭載する。構成としては1300万画素のイメージセンサーにF1.9のレンズを組み合わせた画角78度の広角カメラ、500万画素のイメージセンサーにF2.2のレンズを組み合わせた画角123度の超広角カメラとなっている。基本的には1300万画素のメインカメラで撮影するが、背景を活かしたポートレートを撮影したり、旅先などでワイドに撮影したいときには超広角カメラに切り替えて撮影する。

ニューヨークのタイムズスクエアで、広角カメラで撮影したサンプル
超広角カメラに切り替えると、ワイドに撮影できるが、やや湾曲したような写真になる

 ただし、当然のことながら、超広角カメラはレンズの特性上、周囲が少し歪んだように写るため、その点を考慮した撮影がおすすめだ。広角カメラと超広角カメラはファインダー内のアイコンをタップすると、切り替えられる。

ライブフォーカスでは背景のボケ具合などを調整することができる

 カメラの撮影モードとしては、通常の「写真」や「動画」のほかに、ISO感度や露出、ホワイトバランスを手動で設定できる「プロ」、水平及び垂直方向に端末を動かして撮影する「パノラマ」、人物にフォーカスを合わせて、テイストの違った写真を撮影できる「ライブフォーカス」が用意されている。設定を変更することで、これらのモードの並び順を変更したり、使わないモードを非表示に切り替えることも可能だ。

奥行きのあるシーンで、人物を撮影。モデル:るびぃ(ボンボンファミンプロダクション)
夜にライトアップされたプールと建物を撮影。暗いところも捉えることができている
いつもの暗いバーで撮影。グラスもきれいに捉えることができている

 また、シーン判別にも対応しており、花や空、人、室内、夜景、食事、ビーチ、滝、水辺など、19種類のシーンを自動的に認識して、それぞれのシーンに適した設定で撮影することができる。ユニークな撮影機能としては、逆光やブレ、まばたきを検出し、撮影直後に警告を表示する「撮り直しアラート」と呼ばれる機能も搭載されている。

撮影時には「透かし」を設定可能
最近の他のGalaxyシリーズ同様、日本と韓国以外ではシャッター音が鳴らないしくみ

 インカメラは800万画素のイメージセンサーにF2.0のレンズを組み合わせたものをディスプレイ上部のしずく型ノッチ内に搭載する。ソフトウェア処理により、背景をぼかしたセルフィーも撮影できるほか、ARを利用したAR絵文字、ARステッカー、スタンプ、フィルターなどの効果も利用できる。

手頃な価格で必要十分な機能を備えたおトクな一台

 冒頭でも触れたように、今後、スマートフォンの買い方は大きく変わるため、端末選びには慎重にならざるをえないというのが多くのユーザーの思うところだろう。ハイエンド端末を長く大切に使うという方法もあるが、やはり、人によって、スマートフォンに使える予算は違い、リーズナブルな価格で十分な性能を求める声は増える傾向にある。

 今回取り上げたサムスンのGalaxy A30 SCV43は、これまでのGalaxyシリーズで培われてきた使い勝手の良さや多彩な機能を継承しながら、日本のユーザーに求められる防水防塵やおサイフケータイといった機能を搭載しつつ、4万円台という手頃な価格を実現した「おトクな一台」に仕上げられている。サムスンでは「Smart Switch」と呼ばれるアプリを提供し、Galaxyシリーズ同士、他のAndroidスマートフォンからGalaxyシリーズ、iPhoneからGalaxyシリーズへ移行しやすい環境を整えている。従来のGalaxyシリーズを利用しているユーザーの乗り換え用としてはもちろん、他のプラットフォームを含む他シリーズからの買い換えにも適したモデルと言えるだろう。

法林 岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話・スマートフォンをはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるゼロからはじめるiPhone XS/XS Max/XR超入門」、「できるゼロからはじめるiPad超入門 Apple Pencil&新iPad/Pro/mini 4対応」、「できるゼロからはじめるAndroidスマートフォン超入門 改訂3版」、「できるポケット docomo HUAWEI P20 Pro基本&活用ワザ 完全ガイド」、「できるゼロからはじめるAndroidタブレット超入門」、「できるWindows 10 改訂4版」(インプレス)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。