法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

スリムボディでダブルレンズカメラが楽しめる「nova 2」に迫る

 SIMフリースマートフォンで着実に国内市場におけるシェアを拡大しつつあるファーウェイ。国内の携帯電話事業者(大手キャリア)向けはタブレットやデータ通信端末が中心だったが、auの2018年春モデルとして、「HUAWEI nova 2 HWV31」が発表された。ひと足早く実機を試すことができたので、レビューをお送りしよう。

au/ファーウェイ「HUAWEI nova 2 HWV31」、約142mm(高さ)×69mm(幅)×6.9mm(厚さ)、約143g(重量)、ローズゴールド(写真)、グラファイトブラック、オーロラブルー

存在感を増すファーウェイのラインアップ

 ここ数年、国内市場において、もっとも急速に伸びてきたメーカーと言えば、やはりファーウェイだろう。昨年もSIMフリースマートフォンやタブレットで次々と注目モデルを投入し、SIMフリースマートフォンに強いメーカーのひとつとして、ユーザーにも広く認知されつつある。その一方で、各携帯電話事業者向けにもモバイルWi-Fiルーターやタブレット、データ通信端末などを供給、スマートフォンについてはごく一部のモデルに限られていた。

 今回、auの2018年春モデルとして発売がアナウンスされた「HUAWEI nova 2 HWV31」は、auスマートフォンとして、初のファーウェイ製になる。HUAWEI nova 2は同じネットワークを利用するUQモバイルからも取り扱いが発表されたが、UQモバイルとしては、昨年、までに「HUAWEI P10 lite」や「HUAWEI nova」などに続くファーウェイ製スマートフォンの採用ということになる。

 また「nova 2」はすでにグローバル向けにも販売されているモデルになる。auではこれまでもGalaxy S8/S8+、Galaxy Note8、LG isai V30+、HTC U11など、グローバルで販売されるAndroidスマートフォンを数多く扱ってきた実績があるが、これまでの端末はワンセグ/フルセグ、おサイフケータイ(FeliCa)などを搭載するなど、グローバルモデルをベースにしながら、独自のハードウェアの仕様変更を行なった日本向けモデルとして開発されてきた。

 これに対し、今回の「nova 2」はauネットワークに対応するための周波数対応やau VoLTE対応といったソフトウェアの変更が加えられているものの、基本的にハードウェアはグローバルモデルとほぼ共通の仕様で仕上げられており、言わば、国内で販売されるSIMフリースマートフォンに近い仕様のモデルがラインアップに加わるという側面もある。

 さらに、auネットワークへの対応については、UQ mobileが取り扱う端末のチップセットがクアルコム製のSnapdragonシリーズだったが、昨年6月にはKirin 658を搭載した「HUAWEI P10 lite」の取り扱いを開始し、VoLTEにも対応させていた。今回の「nova 2」はこれに続き、Kirin 659を搭載したモデルとして、auネットワークおよびau VoLTEへの対応を実現している。

 ファーウェイのnovaシリーズは2016年9月のIFA 2016で発表されたシリーズで、ネーミングは「Innovation(革新)」という言葉に由来する。ビジネスユースにも対応できるフラッグシップ「Mate」シリーズ、写真性能やファッションを重視した「P」シリーズに対し、novaシリーズは若い世代を狙った競争力の高いモデルに位置付けられている。その後、2017年2月には国内向けにSIMフリー端末として、「HUAWEI nova」「HUAWEI nova lite」が発売され、MVNO各社などでも取り扱われていた。「nova 2」はその後継モデルに位置付けられる。

 ちなみに、今回は開発中のモデルを試用した。au ICカード(SIMカード)の装着ができず、au VoLTEをはじめ、通信機能のレビューができていないことをお断りしておく。

スリムなボディに5インチフルHD液晶を搭載

 まず、ボディからチェックしてみよう。ファーウェイ製端末には大画面ディスプレイを搭載した「Mate 10 Pro」、少しずつスペックが異なるモデルで構成した「P10」「P10 Plus」「P10 lite」など、さまざまなモデルがラインアップされているが、「nova 2」は「P10」に近いコンパクトサイズで、幅が69mm、薄さ6.9mmとスリムで持ちやすい形状に仕上げられている。

右側面には電源キーと音量キーを備える。電源キーには切り欠きがあり、触感で判別できる
背面には指紋センサー、ダブルレンズカメラなどを備える。指紋センサーは片手で持ったとき、人さし指が当たりやすい位置
底面には3.5mmイヤホンマイク端子、USB Type-C外部接続端子を備える。付属のACアダプタを接続すれば、急速充電が可能
左側面にはピンで取り出すタイプのSIMカードトレイを備える。形状は内側(向かって左側)の小さい枠にau ICカード(nanoSIMカード)、大きい枠にmicroSDメモリーカードをそれぞれ装着する

 ディスプレイは約5.0インチフルHD対応液晶を搭載し、チップセットは前述の通り、ファーウェイ独自のKirin 659 オクタコア、メモリーは4GB RAMと64GB ROMで構成される。パフォーマンスはタッチパネルのレスポンスなども含め、申し分ないレベルだ。microSDメモリーカードは最大128GBまでのmicroSDXCに対応する。ファーウェイのSIMフリー端末ではデュアルSIMがおなじみだが、さすがにau向けに供給されるモデルということもあり、シングルSIMで構成されている。

 本体には2950mAhのバッテリーが内蔵されており、付属のACアダプターでの急速充電に対応する。各携帯電話事業者が扱うスマートフォンは、ACアダプターが付属しないことが多いが、標準で急速充電対応ACアダプターがパッケージに同梱されているのはユーザーとしてもうれしいところだ。ちなみに、他の同社製SIMフリースマートフォンと同じように、パッケージには背面に装着する樹脂製のクリアカバーも付属しており、購入時から安心して使うことができる。各携帯電話事業者が扱うモデルとしては、あまりない取り組みだ。

 本体前面のディスプレイの上部にはインカメラ、背面の上部にはファーウェイ製端末ではおなじみのダブルレンズカメラ、背面中央には指紋センサーを備える。下部には3.5mmステレオイヤホン端子、USB Type-C外部接続端子、右側面には音量ボタンと電源ボタンを備える。

 背面の指紋センサーは指紋認証によるロック解除に利用できるほか、インカメラでの撮影時に長押しでシャッターとして利用できたり、同じく長押しで着信の応答、アラームの停止、スライドで通知パネルの表示や写真表示時の切り替えなどに利用できる。

ホームアプリはファーウェイ独自のものを搭載。ホーム画面にすべてのアプリを表示するモード、アプリ一覧ボタンから表示するモードの2つから設定が可能。ウィジェットなどはauオリジナルのものも設定されている
指紋センサーは指紋認証だけでなく、長押しとスライドで、さまざまな機能を利用できる
ナビゲーションキーは戻るキーが左右どちらのパターンが選べる。下の2つのもっとも右側のボタンは通知パネルを表示するキー

 ホーム画面は他のファーウェイ製端末同様、EMUI 5.1が採用され、ホーム画面のスタイルはホーム画面にすべてのアプリを表示する「標準」、ホーム画面とアプリ一覧画面を別に表示する「ドロワー」の2つから選んで設定できる。Androidプラットフォームの操作に欠かせないナビゲーションキーは、戻るキー、ホームキー、履歴キーの並びを2種類から選べ、通知パネルをワンタッチで表示するキーを加えたものを組み合わせ、合計4種類から設定できる。他機種から乗り換えるユーザー、手のあまり大きくないユーザーのニーズにもしっかりと対応する。

片手での操作を考慮し、文字入力パネルを左右に寄せて表示することができる
フローティングボタンはナビゲーションキーや画面ロックなどの操作をすぐに呼び出して操作できる

 また、常時表示でナビゲーションキーの操作などを瞬時に利用できる「フローティングボタン」、着信時に伏せて消音したり、持ち上げて着信音量を下げるなど、本体の動きに合わせて機能を有効にする「モーションコントロール」、文字入力時にキーパッドを左右に寄せる「ワンハンドUI」など、ファーウェイ製端末ではおなじみの便利機能も実装されている。従来のファーウェイ製端末に搭載されてきた「ナックルジェスチャー」も便利な機能で、指の関節で画面を2回ノックしてスクリーンショット、Sの字を書いてスクロールスクリーンショットといった使い方ができる。設定を有効にすれば、「c」でカメラ、「e」でブラウザ、「m」で音楽、「w」で天気を起動できるほか、他のアプリを割り当てることもできる。

本体の動きに合わせ、着信や発信の操作が可能
指の関節で画面をタップしたり、文字を描くことで、機能を呼び出したり、スクリーンショットが撮れる機能。本稿の縦長のスクリーンショットでもスクロールスクリーンショットを使った

ダブルレンズカメラと2000万画素インカメラを搭載

 ここ数年、ファーウェイ製端末が急速に人気を得た背景には、コストパフォーマンスの高さやデザイン、仕上がりの良さなどが挙げられるが、もうひとつ見逃してはならないのがダブルレンズカメラだ。過去にも同社製端末のダブルレンズカメラを取り上げてきたが、国内では楽天モバイルが販売した「honor 6 Plus」を皮切りに、ライカ(Leica)との協業を実現した「P9」、カメラ専門誌などで構成されるTIPA(Technical Image Press Association)のTIPA AWARDを獲得するなど、高い評価を得た「P10」「P10 Plus」、AI対応チップセットの性能を活かした「Mate 10 Pro」など、次々とダブルレンズカメラを搭載したモデルを投入し、市場でも高い評価を得ている。

背面には12000万画素と800万画素のダブルレンズカメラを搭載。他のファーウェイ製端末のダブルレンズカメラと違い、どちらもRGBカラーセンサーを採用し、1200万画素が広角、800万画素が望遠の役割を担う

 「nova 2」も背面に1200万画素と800万画素のイメージセンサーを組み合わせたダブルレンズカメラを搭載する。ただし、「P10」「P10 Plus」や「Mate 10 Pro」などがモノクロセンサーとRGBセンサーを組み合わせていたのに対し、「nova 2」はいずれもRGBセンサーを採用しており、広角と望遠レンズで構成される。こうした構成の違いは「P10」「P10 Plus」などがライカとの協業によるフラッグシップであるのに対し、「nova 2」はミッドレンジのユーザーがターゲットということもあり、撮影時のユーザー体験を重視しているためだという。レンズの明るさについてはau、ファーウェイともにスペック表に記載がないが、グローバル向けモデルはF1.8のレンズを採用しており、実際にカメラで撮影した限りでは十分な明るさを確保しているという印象だ。

 ダブルレンズカメラを活かした機能としては、ポートレートモードで撮影することにより、撮影時も撮影後もフォーカスの位置を変更でき、背景をぼかし、メインの被写体を際立たせた写真を撮ることができる。また、広角と望遠の特徴を活かし、ファインダー内の[1.0X]といういアイコンをタップすることで、ワンタッチで2倍ズームで撮影できるのもメリットだ。

 撮影機能については一般的な「写真」、露出などを自由にカスタマイズできる「プロ写真」、「夜間撮影」「パノラマ」「スロー」などが選べる。食事の写真に適した「ナイスフード」、ホワイトボードやプロジェクターなどを斜めから撮っても四角く補正できる「文書スキャン」など、実用性の高い撮影モードも用意されている。

多彩なカメラモードを搭載。文書スキャンはビジネスユーザーにも便利。ナイスフードは食事の写真に最適な設定で撮影できる
メインカメラの設定画面。子どもの笑顔を撮りたいときにはスマイルキャプチャなどが便利
インカメラの設定画面。ファーウェイ製端末ではおなじみのパーフェクトセルフィーなども設定可能

 カメラはアプリアイコンのタップ、ロック画面からのスワイプで起動できるほか、画面消灯時に音量ダウンボタンの2回連打で起動することもできる。シャッターチャンスを逃したくないときに便利だ。

画面最上段の青いアイコンがワイドアパーチャを有効にするボタン。スライダーを動かすことで、アパーチャレベルを設定可能。右下のアイコンはビューティレベルの設定
広角側で撮影した状態。右側の「1.0X」をタップすると、望遠に切り替えられる
望遠側で撮影した状態。広角に比べ、グッと被写体に寄ることができる

 一方、ディスプレイの上部に内蔵されたインカメラは、2000万画素のイメージセンサーを採用する。メインカメラよりもインカメラの方が高画素のイメージセンサーを採用するという構成は、他社でもあまり例に見ない取り組みだが、やはり、自撮りを重視するユーザーからは「メインカメラと変わらない画質で撮りたい」というニーズが高く、2000万画素カメラを搭載したという。画質面だけにこだわったというわけではなく、ファーウェイ製端末ではおなじみの10段階のビューティ設定、グループでのセルフィー撮影時にあらかじめ登録した自分のみを好みのビューティ効果で撮影できるパーフェクトセルフィーなども搭載されている。セルフィー撮影時のシャッターは、前述のように指紋センサーの長押しでシャッターが切れるほか、ファインダー内に手のひらを見せて、2秒後に撮影できるジェスチャーセルフィーも搭載される。このあたりのこだわりとユーザビリティは、ファーウェイらしいと言えそうだ。

いろいろな方向からの光が混じった場所で撮った写真だが、バランス良く撮れている
いつもの薄暗いバーでの撮影。全体的に良くまとまっているが、PCなどの大きな画面で見ると、クッキリ感が今ひとつ。シーンによってはノイズが増えることもあるので、何枚か撮ってみるのがおすすめ

お手頃価格で実用性の高い機能充実の一台

 これまで各携帯電話事業者向けはモバイルWi-Fiルーターやタブレット、データ通信端末が中心で、スマートフォンについては一部の限られた事業者向けにしか供給されなかったファーウェイ製端末。今回、auの2018年春モデルにラインアップされた「HUAWEI nova 2 HWV31」はau初のファーウェイ製スマートフォンであり、SIMフリー端末などで注目を集めているファーウェイ製端末に興味を持っていたauユーザーにとっては、期待のモデルのひとつと言えるだろう。

 内容的にはファーウェイ製端末の人気の原動力のひとつとも言えるダブルレンズカメラを搭載し、スリムで持ちやすいボディにまとめながら、デザイン的にも美しく仕上げている。上位モデルのような派手さこそないが、ファーウェイ製端末が高く評価を得ている便利機能もしっかりとサポートしている。気になる点があるとすれば、Wi-Fiが2.4GHzのみであることが挙げられるが、コスト面を考えれば、しかたがないのかもしれない。

 これだけの内容ながら、価格は3万2400円(auオンラインショップ価格)というお手頃なレベルに設定されており、auピタットプラン/auフラットプランと組み合わせれば、長く使いたいユーザーにも負担を抑えて利用することができそうだ。同型のモデルはUQモバイルからも販売されており、コスト面を考慮して、UQモバイルで契約するという選択肢もあるだろう。実用性の高い機能を持つリーズナブルなモデルを求めたいユーザーにとっては、ぜひチェックしておきたい一台と言えるだろう。


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法林 岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話・スマートフォンをはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるゼロからはじめるiPhone X/8/8 Plus超入門」、「できるゼロからはじめるAndroidタブレット超入門」、「できるゼロからはじめるAndroidスマートフォン超入門 改訂2版」、「できるポケット HUAWEI P10 Plus/P10/P10 lite 基本&活用ワザ完全ガイド」、「できるWindows 10 改訂3版」(インプレス)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。