法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」
個性的なラインアップと究極の学割で攻めるau 2017年春モデル
2017年1月19日 07:00
1月11日、auは「au発表会 2017 Spring」と題し、2017年の春商戦へ向けた新ラインアップを発表した。新入学新社会人などの需要もあり、例年、もっとも販売が多いと言われる春商戦だが、昨年の総務省による「実質0円端末の禁止」などの影響もあり、各社がどのような施策を打ち出してくるのかが注目される状況にある。
発表会の詳細はすでに本誌の速報記事が掲載(※関連記事)されているので、そちらを参照していただきたいが、ここでは発表内容の捉え方とそれぞれの製品やサービス、施策などの印象について、解説しよう。
春商戦の取り組みはどうなる?
さまざまな製品やサービスの業界において、それぞれに忙しくなるシーズンがあるが、携帯電話やスマートフォンを中心としたモバイル業界にとって、もっとも重要な商戦期の一つと言えば、やはり、春商戦だ。新入学や新社会人の需要をはじめ、これに連動する形で家族も機種変更や新規契約、MNPなどを行うため、契約増が見込めるだけでなく、販売そのものもかなり活発な時期とされてきた。
しかし、一昨年の総務省による「携帯電話料金タスクフォース」に始まり、昨年の「実質0円販売の是正」、これらを受ける形で行われた「モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合」などの影響もあり、昨年までのような販売やキャンペーンが展開できなくなり、春商戦の主役でもある各社の「学割」の施策にも影響が必至と言われてきた。
これまで携帯電話各社は学割の販売施策やキャンペーンで、端末の実質的な割引や家族との同時契約による優遇を打ち出してきた。ここ数年、各社の販売競争による『過度なキャッシュバック』が話題になったが、その主戦場は春商戦の学割に結びつけられたものが多く、中には学割キャンペーンのタイミングに合わせ、家族まとめてMNPをすることで、数十万円のキャッシュバックを受けた例もあった。
また、もう一つの流れとして、見逃せないのが「格安スマホ」「格安SIM」として語れることが多いMVNO各社の存在だ。当初、MVNOを利用するユーザー層は、ある程度、MVNOのメリットとデメリットを理解しているリテラシーの高いユーザーが多いとされてきたが、最近では幅広い層での認知が進んでおり、昨年来、契約も好調な伸びを示している。学割の対象となる若いユーザー層への訴求はこれからと言われているが、保護者の視点では「子どもはスマートフォンを持ちたがるが、料金が高いので、自分たち(保護者)のお下がりを与えて、回線は格安SIMで済ませれば、節約できそうだ」という考えが増えつつあるとも言われ、携帯電話各社としては学割の商戦においてもMVNOを少し意識した施策が必要になってきたように見える。
「au発表会 2017 Spring」を題された今回の発表会では、まさにこうした業界の動向を踏まえた内容の施策やサービスが発表された。ちなみに、auは昨年秋、例年のような秋冬モデルの発表会を見送り、11月にメディア向けの「秋冬モデル体験会」を開催するのみに留めていたため、新端末や新サービスを含めた発表会としては、昨年の夏モデルの発表会以来ということになる。
auが考えた『究極の学割』
では、今回のauの春商戦へ向けた発表内容は、具体的にどのようなものだったのか。注目される項目を中心に内容をチェックしてみよう。
まず、最初に説明されたのは、学割だ。KDDIの田中孝司代表取締役社長のプレゼンテーションでも触れられていたが、学割は元々、auが仕掛けた施策であり、これを受ける形で各社が学割の施策を打ち出したことで、今日の春商戦のメインテーマとして、定着してきた背景がある。今年のauの学割については、田中社長自ら『究極の学割』と評し、auとしてもかなり踏み込んだ施策になったとしている。
プレスリリースのタイトルでは「通話もデータもコミコミで月々2980円から!」とされているが、今回発表された「学割天国U18」は、1回5分の国内通話が無料になる「スーパーカケホ」に、データ通信の定額プランとして、段階式課金を採用した「U18データ定額20」を組み合わせたものとなっている。月間データ通信利用量が最大の20GBになると、月々の料金は6090円(スマートバリュー割引後)だが、3GBまでであれば、月々の利用料金は3980円に抑えられる。タイトルの「月々2980円」を実現するには、受付期間中に家族が新規でauと契約することで、学割の対象者である18歳以下のユーザーの月々の利用料金を1000円、割り引かれるという仕組みだ。
この施策で注目すべき点は、「U18データ定額20」の段階式定額制だろう。現在、データ通信料の定額プランは、ユーザー自身が月々に利用するデータ通信量をあらかじめ選ぶタイプが主流だが、ケータイ時代は利用量に応じて、上限額が変わる「ダブル定額」をはじめとした二段階定額で提供されてきた。今回の「U18データ定額20」は、月に利用できるデータ通信量は最大20GBだが、3GBまでは3980円、3~4GBは4790円、4~5GBは5490円、5~20GBは6090円という4段階で構成されている。
これは学割の対象となる18歳以下のユーザーが昨年の学割で提供した5GBのデータ通信量をどれくらい利用したのかを分析した結果、3GB以下が23.5%、5~8GBが25.9%、10GB以上が25.3%と、ユーザーによって、かなり利用状況に差があることを反映したものだという。学割の対象となるユーザーは若いため、おそらくデータ通信をかなり使うだろうと考えがちだが、実際には保護者がどれくらいスマートフォンの利用を許可しているのか、ネット環境についても自宅にパソコンなどがあるのか、本人がどれくらいIT機器の利用を習熟、もしくは興味を持っているのかなど、さまざまな要因が絡んでくるため、一概に「多い」と言い切れない面がある。今回の「U18データ定額20」で採用された段階定額はそういった状況を踏まえて、考えられたという。
「現在のデータ定額で、使い切った状態からデータチャージする方法と変わらないのでは?」と見る向きもあるかもしれないが、利用するデータ量に応じて、段階的な定額になっていれば、使う側もより上の段にならないように、ある程度はデータ通信量を節約するだろうし、慣れていない若いユーザーに対し、保護者が節約を促すなどのアドバイスも期待できる。ちなみに、こうした段階式のデータ通信定額プランはFREETELの「使った分だけ安心プラン」などでも採用され、好評を得ている。
U18データ定額20の段階定額については、もう少し踏み込んでみると、市場の反響次第では今後のauの料金体系でも採用されてくることが十分に考えられる。現在、各社のデータ定額の料金プランは月々に利用できるデータ通信量の違いにより、数種類のデータ定額プランが用意されている。昨年、ソフトバンクが「ギガモンスター」で先陣を切った大容量プランは業界を驚かせ、各社ともこれに追随したが、U18データ定額20で採用されている段階定額は、こうした大容量プランをさらに進化させたものという見方もでき、うまくデータ通信量の区切りを設定すれば、より多くのユーザーの利用が期待できそうだ。
また、プレゼンテーションでは今回の学割の2980円という設定について、田中社長は「格安スマホの領域にも踏み込んだ」と表現していた。MVNO各社の音声契約のプランは3GBのデータ通信量を含んで、月額1600円前後のものが多いため、一見、auの方がかなり割高に見えてしまうかもしれない。しかし、MVNO各社の音声契約プランは音声通話が30秒あたり20円の従量課金であり、スーパーカケホと同じような時間限定のかけ放題プランを利用するには800円程度のオプションを契約する必要があるため、実質的には月額2400円程度の負担が必要になるため、auの2980円という学割の料金設定は“踏み込んだ”という見方もできるわけだ。もっともauの学割の場合、固定回線などと組み合わせるスマートバリューに加入し、家族の新規契約が成立した上で、2980円が実現できるわけで、まだ差はあるが、それでもMNOとして、MVNOの料金設定に近づけてきたことは評価できる。今後は学割だけでなく、一般の料金プランでも一歩“踏み込んだ”設定を期待したいところだ。
ところで、今回のauの学割天国では、この2980円という料金設定のほかに、年内に限られる形で「auスマートパスプレミアム」と「うたパス」が情報料無料で提供される。この2つのサービスのうち、auスマートパスプレミアムに含まれるサービスについて、触れておきたい。
auスマートパスプレミアムはauがこれまで提供してきた「auスマートパス」を拡充したもので、月額499円の情報料で利用できる。サービス内容は「修理代金サポート」や「データ復旧サポート」、映画を割引で楽しめる「auマンデイ」などのクーポンなどがあるが、これらの内、新たに公衆無線LANサービスなどのセキュリティ対策として、「Wi-Fiセキュリティ」というサービスが提供される。
暗号化通信が設定されていないWi-Fiスポットなどを利用するとき、自動的にサーバーへの通信をVPNによって暗号化し、安全に利用できるというものものだが、これはソースネクストが販売する「Wi-Fi セキュリティ」というアプリの提供を受けたものだ。「Wi-Fi セキュリティ」は米国のAnchorFree社が提供する「Hotspot Shield Elite」というサービスをベースにしているが、KDDIが携帯電話サービスやISPなどを提供する通信事業者であること考えると、やや残念な印象も残る。
Wi-Fiスポットのセキュリティについては、総務省や情報処理推進機構などから暗号化通信を設定していないWi-Fiスポット利用に対する注意喚起がアナウンスされている。筆者自身もVPNサービスを利用し、「個人が手軽に利用できるVPNサービスがもっと必要」と指摘していたので、auがこうしたサービスを提供することは大歓迎だが、KDDIの立場を考えると、どうして自ら個人ユーザー向けのVPNサービスを開発し、提供できなかったかという印象を持ってしまう。ソースネクストの「Wi-Fi セキュリティ」が悪いわけではないが、KDDIは自ら個人向けVPNサービスを提供するだけの技術もネットワークもあるはずなのに、他社サービスに頼ってしまったのはやや残念だ。国内では2020年の東京オリンピックを控え、Wi-Fiスポットを拡充する動きが活発だが、auとして、ユーザーが安全にWi-Fiを利用できる環境を整えられるように、自らの力でも取り組んで欲しいところだ。
スマートフォンやフィーチャーフォン、固定向けなどを発表
さて、ここからは春商戦向けに発表された7機種について、説明しよう。各機種の詳しい内容については本誌の速報記事を参照していただきたいが、いずれも発売前の製品を試したものであり、ここでの評価と実際の製品では差異があるかもしれないことをお断りしておく。
rafre KYV40(京セラ)
2015年12月に「世界初のハンドソープで洗えるスマホ」として発売されたDIGNO rafre KYV36」の後継モデル。従来の泡ハンドソープに加え、バスルームでの利用を考慮し、泡ボディソープで洗えるようにして、温水防水にも対応する。一般的に、泡ハンドソープに比べ、泡ボディソープは保湿成分が多く、そういった成分を含むもので洗ってもスピーカーなど目詰まりしないように作り込まれているという。
また、ママ世代のユーザーがキッチンなどで利用することを考慮し、クックビューと呼ばれるジェスチャー入力にも対応する。レシピサイトでのスクロールに加え、調理にも役立つようにタイマーもジェスチャーのみで設定が可能だ。ちなみに、ジェスチャー入力はディスプレイの右上に内蔵された近接センサーによって、認識される。メインターゲットはママ世代だが、男性も含め、もう少し幅広いユーザー層が持てるように、ライトブルーのボディカラーも用意する。
miraie f(京セラ)
2015年1月に発売された「miraie」に続く、ジュニア向けスマートフォン第2弾。従来モデルでもWebフィルタリングなどの機能は搭載されていたが、保護者が設定するためのメニューがわかりにくいなどの指摘を受け、ユーザーインターフェイスが改良され、保護者のスマートフォンからの遠隔設定にも対応する。
従来モデルはGoogle Play非対応だったが、今回のモデルはGoogle Playに対応し、アプリを追加することが可能。フィルタリングは子どもの成長に合わせ、小学生、中学生、高校生の設定を選ぶことができ、Google Playからダウンロードしたアプリにもフィルタリングが適用される。子どものスマートフォン利用状況を保護者がコントロールできるように、「アプリ利用チェッカー」で利用可能な時間帯や曜日を制限することもできる。ココセコムに対応し、本体で電源を切っても擬似的に切ったように見せ、保護者が安心ナビで位置を確認できるようにするなど、子どもをトラブルから守るための機能も充実している。
ジュニア向けスマートフォンという位置付けだが、デザインは大人が持つモデルとほとんど変わりなく、子どもがはじめて持つスマートフォンとして、ハードウェアも含め、しっかりと作り込まれているモデルだ。
AQUOS SERIE mini SHV38(シャープ)
コンパクトなボディに、高画素カメラやフルHD対応液晶ディスプレイなどを搭載したハイスペックモデル。「AQUOS SERIE mini」のシリーズとしては、2016年1月発売の「AQUOS SERIE mini SHV33」の後継モデルで、基本デザインは昨年の夏モデルとして発売された「AQUOS SERIE SHV34」を受け継いでいる。
4.7インチのディスプレイを搭載したコンパクトモデルは他社のラインアップにもあるが、その多くは解像度がHD対応であるのに対し、AQUOS SERIE mini SHV38はフルHDでの表示に対応し、IGZO液晶ディスプレイによる優れた省電力性能を持つ。2100万画素カメラについては上位モデルの仕様を継承しており、スマートフォンAQUOSではおなじみのリコーのGR certifiedも取得しており、側面にはシャッターキーも備える。800万画素インカメラも広角100度での撮影が可能で、最近ではインカメラの必須機能と言われる美肌や小顔などの効果による撮影にも対応する。
今回発表されたラインアップは個性派のモデルが並ぶが、もっともスタンダードな位置付けの端末であり、幅広いユーザーが選ぶことができるモデルと言えるだろう。
TORQUE X01(京セラ)
かつて、フィーチャーフォンで高い人気を得ていたタフネスケータイをAndroidベースのプラットフォームで実現したモデル。カシオ製の「G'zOne TYPE-X」を彷彿させる折りたたみデザインを採用し、防水、防じんに加え、約1.8mの高さからの落下に対する耐衝撃性能を備える。この他にもスマートフォンのTORQUEシリーズのタフネス性能を継承し、温度耐久や耐振動、耐氷結、防湿、耐日射、低圧対応など、計18項目の耐久試験をクリアしている。ただし、TORQUE G02で実現されていた耐海水には対応していない。
TORQUEシリーズに搭載されている「OUTDOOR PORTAL」も受け継がれ、天気や気圧、温度など、8種類の情報を確認できる。これまでにないユニークな機能としては、気温や高度、気圧などを定刻に読み上げる「読み上げ通知機能」を搭載する。登山などで利用するユーザーの要望を受け、圏内/圏外通知機能も搭載されており、登山で移動中、「圏内です」「圏外です」「高度○○メートル、歩行○○キロメートル」といったアナウンスを受けることができる。
ボタン類もグローブを装着しているときでも押しやすい凸感のある形状にするなど、ケータイ時代のタフネスモデルのノウハウもしっかりと継承されている。アウトドアでの利用はもちろん、現場作業など、屋外での利用が多いユーザーにも広くおすすめできる一台と言えるだろう。
SPEED Wi-Fi NEXT W04(ファーウェイ)
WiMAX 2+と4G LTEに対応したモバイルWi-Fiルーター。WiMAX 2+で4×4 MIMO技術とキャリアアグリゲーション(CA)を組み合わせることで、受信時最大440Mbpsの高速通信を実現する。本体にはタッチパネル対応のディスプレイを搭載し、通信状態を確認したり、設定を切り替えることができる。電池持ちを重視した「バッテリーセーブモード」、標準の「ノーマル」、高速通信を重視した「ハイパフォーマンス」の3つのモードを切り替えながら利用できる。
これまでの多くのモバイルWi-Fiルーターに比べ、縦方向が長いスティック型の形状を採用し、持ち歩き時にバッグの内ポケットなどに入れやすくしている。他の機器との接続は2.4/5GHzのWi-Fiに加え、Bluetoothテザリングにも対応する。外部接続端子はUSB 3.0 Type-Cを採用しており、オプションとして販売されるLANポート付きクレードルの接続部分も同端子を採用する。ちなみに、オプションのクレードルは販売店にあまり置いてないことが多いが、au SHINJUKUなどの直営店には極力、在庫を置くようにするという。
SPEED Wi-Fi HOME L01(ファーウェイ)
SPEED Wi-Fi NEXT W04と基本的に同じネットワーク仕様に対応しながら、宅内など、固定回線の代わりに利用することを狙ったモデル。ソフトバンクが販売する「SoftBank Air」の対抗モデルに位置付けられる。
WiMAX 2+と4G LTEに対応し、エリア内であれば、電源を接続するだけで、すぐにインターネットが利用できる。直径10cm弱の筒型のボディを採用し、背面側にはギガビット対応の有線LANポートを2つ備える。Wi-Fiは2.4/5GHz両対応だが、モバイルWi-Fiルーターと違い、本体に特性の優れたアンテナを内蔵しており、3LDKの住宅をカバーできる性能を実現しているという。接続できるクライアントの数も2.4GHzと5GHzでそれぞれ20台ずつの合計40台で同時に利用できる。Wi-Fi接続の登録は一般的なWPSに加え、本体上部にスマートフォンなどをかざすNFCによる登録にも対応する。
料金プランは既存のデータ通信の料金プランが適用されるため、WiMAX 2+ フラット for DATA EXを契約し、WiMAX 2+のみで利用していれば、月額4880円(25カ月目までは4380円)で容量制限は受けないが、4G LTEを利用すると、月間7GBの制限を受ける。設置する場所がWiMAX 2+のエリアかどうかによって、評価が分かれるところだが、一人暮らしや少人数の世帯でのインターネット回線をはじめ、ADSLなどの通信速度が遅い固定回線の置き換えにも適した製品と言えるだろう。
Qua station
1TBのハードディスクを搭載した4G LTE対応ネットワークストレージ。スマートフォンに保存された写真や音楽、動画などをUSBケーブルで接続して、自動的に保存することができる。保存されたデータはスマートフォンで見ることができるほか、同じホームネットワーク(Wi-Fi)に接続されたパソコンからも参照することができる。SDカードスロットも備えているため、デジタルカメラの画像を読み込んで、保存することもできる。保存されたデータを外出先からauスマートフォンやタブレットで参照することができ、音楽などはストリーミングで再生することができる。ただし、この外出先からの接続は、インターネットの固定回線がある環境ではQua stationの4G LTE回線をほぼ利用しないが、固定回線のない環境ではQua stationに保存されたデータを外出先などから参照するときは、データ通信料が発生する。
ちなみに、本体のハードディスクはUSBポートに市販のハードディスクを接続することでバックアップが可能。スマートフォンの保存領域が残り少なくなり、写真を撮影する度に何枚も削除して、空き容量を確保したり、オンラインサービスのバックアップなどを利用せず、端末を壊したりして、写真を丸ごと失ってしまうといったユーザーが多いとされるが、こうしたユーザーのニーズにマッチする製品と言えるだろう。
『究極の学割』が指し示すもの
冒頭でも説明したように、この1~2年、モバイル業界は一連の総務省の施策により、大きく様変わりすることになった。特に、各携帯電話事業者は販売方法の見直しを迫られ、さまざまな施策も実質的に一から検討し直さなければならない状況になってしまった。そんな中、モバイル業界にとって、もっとも活発な商戦期である春商戦に対して、どのように取り組んでくるのかが非常に注目されたが、今回のauの発表は、個性的な端末ラインアップに加え、『究極の学割』と銘打たれた学割サービスの料金プランについてもデータ定額で段階式のプランを提示するなど、新しい取り組みもしっかりと見えてきた印象だった。
中でも段階式のデータ定額については、データ通信量のカウントと料金計算の仕組みなどにもある程度、手を加えなければならないことを鑑みると、学割以外の一般の料金サービスにも反映される可能性が十分に考えられる。総務省の施策では「1GBのプランが必要」と言われる一方、もっとデータ通信をたくさん使いたいという声に応え、20GB超の大容量プランが提示されてきたが、段階式のデータ定額は上手に構成すれば、1つのプランで幅広いユーザーのニーズに応えることができそうだ。今後のauの料金プランの動向が非常に注目される。
また、端末については、スマートフォンでは堅実に進化を遂げた個性派の「rafre」と「miraie f」、コンパクトながらもハイスペックな「AQUOS SERIE mini」を揃える一方、確実に必要とされるユーザーに加え、「これは欲しい!」と声を上げるアツいユーザーが期待できる「TORQUE X01」、ネットワークのスペックを最大限に活かすモバイルWi-Fiルーターとホームルーター、4G LTEを搭載しながら、新しいジャンルの製品を想像した「Qua station」など、コンセプトのしっかりしたモデルをラインアップしてきた印象だ。
ただ、Qua stationのように、確実にフィットするユーザーが想定できるものの、カタログや店頭なの説明などで十分に理解されるかどうかがやや心配な部分もある。個性的なラインアップを揃えるだけでなく、それをしっかりとユーザーに周知していくような取り組みも含め、どのように春商戦を展開していくのかが注目される。
今回発表された製品は、順次、販売が開始される予定で、auショップや各地の直営店などではデモ機も展示されるはずだ。本誌では今後、各機種の開発者インタビューやレビュー記事などが掲載される予定なので、これらを参照しながら、自分に合った製品を見つけていただきたい。