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「格安スマホの領域」、KDDI田中社長が語る“究極の学割”

 KDDIは11日、2017年の春に発売する新商品と、学割を中心とした新サービスを披露する発表会を開催した。プレゼンテーションにはKDDI 代表取締役社長の田中孝司氏が登壇し、CM同様に「やってみよう」をテーマにしながら、学割に多くの時間を割いて春商戦への意気込みを語った。

 「auの学割天国」自体は、別記事を参照していただきたい。本稿では、学割などのサービスについて田中社長から語られた点を中心にまとめている。

KDDI 代表取締役社長の田中孝司氏

学生のさまざまな利用実態に対応

 1年前の2016年の学割では、5GBのデータ容量をプレゼントしたauだが、この結果を分析したところ、ひとくくりに学生といっても、さまざまな利用実態があることが見えてきたという。具体的には、パケットを節約するユーザーや、あまり気にせず使うユーザーのほか、夏休みなどの期間中は通信量が増大するといった、学生特有の傾向が明らかになり、さまざまなケースに対応できるよう、「究極の学割を作ろうと思った」と語る。

 その「auの学割天国」では、最も割引を多く受けられるケース(固定回線とセット契約+家族が新規でauに加入)において、3GB未満で月額2980円という価格が打ち出され、「auのチャレンジ。しっかり安くできるようなプランで、踏み込んで作った」と自信を語った。

 さらに田中氏は、「コミコミで2980円。いわゆる格安スマホの領域。格安スマホと違うのは、最新のiPhone 7でも(このプランを)使えること。MNOは値下げしないなどと書かれているが、究極の学割にした」などとして、MVNO各社の“格安スマホ”といったサービスも念頭に、MNOとして対抗していくものと位置付けた。

 また、「auスマートパスプレミアム」「うたパス」についても、学割のユーザーは2017年12月までのの利用料を無料にするなど、コンテンツや補償サービスの面でも手厚くサポートする点を特徴として挙げている。

春モデルのラインナップ

auショップの対応、ユーザー対応履歴を反映へ

 学割に続いて、春モデルとして追加されるラインナップを紹介した後は、2016年から掲げている「ライフデザイン企業を目指す」というテーマの進捗や拡大が紹介された。

 今回の発表会では「ショップ」「コールセンター」「auホームページ」の3つの領域での取り組みが取り上げられた。

 ショップについては、店頭での接客について、ユーザーごとの対応履歴をスタッフが手元の端末で確認できようにして、ユーザーごとに適切なサービスを提供する仕組みが導入されることが明らかにされた。

 またコールセンターでは、最近発売された端末について、ユーザーの了承を得て、コールセンターからの遠隔操作で設定の確認や変更ができる機能がトライアルで提供されており、今後は対象ユーザーの範囲を広げて、具体的な問題点をオペレーターが簡単に把握できるようにしていく。

 auホームページについては、別記事にて掲載しているように、ドメイン統合を含む大幅なリニューアルが実施され、ユーザーサポートのメニューについても統合される。

 田中氏は、「今年は“やってみよう”がテーマ。学割は非常にチャレンジングで、端末も(冬モデルと合わせて)ラインナップを揃えた」と、春商戦を前に、積極的に取り組んでいく姿勢をアピールした。

「MVNOの領域までリーチしたい」

 質疑応答の時間には、田中氏自身が示唆した“MVNO対抗”という部分について、どれほど本気のものなのかが聞かれた。同氏は「2980円で3GBは、MVNOの料金レンジに入っていく。そこまでリーチしたい」とする一方、「スマバリ(固定回線をセットで契約するauスマートバリュー)に加入するとかの、制限はある。ただ、座してMNOは何もしないということではない」として、MNOがとれる施策の中でMVNO並みの価格を組み上げたことを明らかにした。

質疑応答

 グループ傘下のブランド「UQ mobile」やJ:COMが提供するMVNOとの整合性を聞かれると、「MVNOの領域に片足が入った段階だが、(MVNOと)ガチンコで勝負するわけではない。MNOとして何が提供できるか。学割として究極まで踏み込んだというもの。保守的な見方で事業を運営している」と語り、あくまで学割の領域での挑戦と位置付けた。

 また、2016年末に発表されたビッグローブの子会社化について、ドコモからMVNO回線の提供を拒まれるケースを想定しているか? との問いには、「基本的には、大きくユーザーを取り込む、ということではなく、既存の事業を伸ばしていこうというスタンスで進めるつもり。あえて申し上げれば、我々のライフデザイン領域の商材をビッグローブでも販売していく方向感がある。もうひとつは、ビッグローブのたくさんの顧客に向けて、auのスマホを拡販してく方向に行けばいいと思う。ある日突然止まっちゃう、ドコモのSIMが使えなくなるという話も出ていたが、決してそんなことはない。それぞれのアセットを有効活用して、もう一段高いステージに登れるようなシナリオを考えている」と回答している。

「MNOはiPhone需要が基本」

 囲み取材では、端末価格の割引について聞かれると、前日に総務省からガイドラインが示されたことなどから、「端末価格については、(学割に)絡めるとマズイよね。どちらかというと月額料金で、いろいろ施策をしているということ」と回答。

囲み取材に対応する田中社長

 (ドコモのMONOのように)元々の価格を抑えた端末を用意しないのか? との問いには「やっぱりMNOはiPhone需要が基本になる。ここをベースに考えた。できるだけセグメントで切ったところで声を聞いて改善につなげていくことを、頑張っていきたい。それ以外で、今回新しくトライしたのは、Qua stationみたいなもの。ホームルーター(Speed Wi-Fi HOME L01)もハイライトして説明しなかったが、いいと思っている。あんな世界がくるのではないのかと」としている。

 その「Speed Wi-Fi HOME L01」については、固定回線の代わりにWiMAX 2+網を使う家庭用ルーターというコンセプトであり、auスマートバリューなどの光回線とのセット割との棲み分けについて聞かれると、「若い人が固定回線を契約しないのは、事実。バックホールが無線(モバイル網)で、家庭内のルーターに特化したらどこまでできるのかということ」と回答。「全国で440Mbpsになるし、アンテナのテクノロジーも入れた」としているように、端末のアンテナ性能は(若者には縁遠いと思われる)3LDKなどの家屋にも対応するが、基本的には若いユーザーをカバーできるものであるとした。

「MNOも頑張っているぞ」

 MVNO市場が伸長していることで、今年の春商戦に変化が起こっているかどうかを聞かれると、「MVNOの契約は、MNOの商戦期には減る傾向だった。ところがこの前のiPhoneのころから、MVNOとMNOの商戦期が重なってきている。そういう意味では、学割シーズンはユーザーが最初にスマホを持つシーズン。MNOもがんばっているぞというところを見せていきたかった。(MNPの減少など)流動性が無い中で、学割で頑張ってみようとか端末とかを、提案できないと、MNOとして存在意義がない。MNOもあるぞ、ということ」とし、“格安”に話題が奪われがちな中でも、MNOとして存在感を示していく方向性が語られている。