みんなのケータイ

 毎年恒例ということで、2016年も米ラスベガスで開催された「CES 2016」が筆者の仕事始めになった。ラスベガスで毎回頭を悩ませるのが、交通手段。CESは主な会場がラスベガス・コンベンション・センター(LVCC)と、Sands Expo and Convention Centerの2カ所に分かれており、プレスカンファレンスはさらに別のMANDALAY BAYで行われる。メーカー独自の発表や、併催イベントもあり、それらに参加しようとすると、ラスベガス中を移動しなければならなくなる。

今年も、CESの取材で幕を開けた
本会場にSandsにMANDALAY BAYと、CESの会場はラスベガス中に広がっている。別のホテルでイベントがある場合も
「あ、ホテルが見えた」と思ってうっかり歩いていこうとすると、そこから30分かかることもザラにある

 そんな状況の一方で、ラスベガスは、公共交通機関の使い勝手が“微妙”だ。バスやモノレールは走っているものの、目的地のホテルまで距離があったり、運行間隔があったりで、なかなか自由に移動できない。建物のサイズが日本では考えられないぐらい大きいため、遠近の感覚がおかしくなることもしばしば。目的地が目視できるからとうっかり歩いていこうとすると、到着までに30分ぐらい延々と歩くハメになる。

 ホテルからホテルへの移動はタクシーがスムーズだが、毎回乗っているとコストもばかにならない。そこで今回は、米国でスタンダードになりつつある、ライドシェアを利用してみることにした。具体的には、UberやLyftといったサービスで、料金はタクシーよりも安くなるケースが多い。Uberと聞くとタクシーを呼ぶサービスと思うかもしれないが、日本のものは、本家とはまったくの別物。当局による規制を回避するために、日本ではタクシーやハイヤーの会社と提携して、今のような形のサービスになっている。

 本家の米国では、ドライバーとして登録した一般のユーザーが、自らの車を提供して、目的地までユーザーを送り届けてくれる形態になっている。ライドシェアと呼ばれるのは、そのためだ。一言で言ってしまうと合法的な「白タク」なのだが、本場の米国でも、やはり規制当局とのバトルが各地で展開されている。ラスベガスでも、正式に認可が下りたのは、去年のことだという。

 今回は、主にLyftを使うことにした。理由は、初回特典のコードを使い、さらに同じCESを取材する仲間を招待したことで、クーポンがもらえていたからだ。20ドル分のクーポンが1回と、10ドル分のクーポンが5回ついていたため、合計6回は、ほぼ無料に近い形でLyftに乗ることができた。

 当然、利用にはスマートフォンが必要。筆者は米国T-Mobileの回線をここ数年維持していたため、SIMフリーのiPhone 6sに挿し、Lyftのアプリをインストールした。電話番号での認証が必要だが、日本でauの回線を使って試してみたところ、何の問題もなくSMSが送られてきて登録できた(ただし、後述するように、登録する電話番号は現地の回線に変えておいた方がいい)。

 アプリを起動すると、現在地と周辺に走っている車が表示される。位置情報がズレている場合は、手動で修正もできる。あとは、ボタンをタップするだけ。近くを走る車とのマッチングが行われたら、ドライバーが来てくれるのを待つだけだ。シチュエーションにもよるが、往々にして、5分から10分で車が来てくれた。CESの期間中はタクシー乗り場が長蛇の列になったり、そもそもとしてホテルが近くにないとなかなかタクシーがつかまらなかったりするが、Lyftならそんな苦労がない。この点は大きなメリットだった。

アプリを起動し、場所を指定してボタンを押すとマッチングが始まる
マッチングすると、ドライバーの顔と車種が表示される
支払い用に、クレジットカードかPayPalを登録しておく

 支払いは、あらかじめ登録しておいたクレジットカードやPayPalアカウントで行う。特にユーザー側が何か操作をする必要はなく、車を降り、ドライバーが何かの操作をすると、自動的に決済が完了した。最後に、ユーザーはチップの額を選択するだけ。支払いという手間の発生するタクシーと比べると、この点が圧倒的にスムーズだ。

 一方で、少々引っかかる点もあった。マッチングした直後に、ほぼ必ずと言っていいほど、ドライバーから電話がかかってきて、場所の説明を求められた。場所を告げるだけなので大した英語力は必要ないが、それでも英語が苦手な人なら、苦痛に感じてしまうかもしれない。また、説明がしづらい場所にいるときには、少々困ったこともあった。そもそも、米国用の電話番号で登録していないと、折り返したりができなくなる。この点は、T-Mobileの回線を登録しておいてよかったところだ

 場所の制限も少々厳しいと感じたところ。というのも、ラスベガスのストリップと呼ばれる大通りでは、UberやLyftの乗り降りが禁止されている。そのため、近くのホテルに行き、UberやLyftの乗り場を探す必要があった。CESの会場も同様で、専用の乗り場に行き、そこでLyftを呼ばなければならなかった。

 それ自体は秩序を守って運営するために仕方がないルールなのかもしれないが、CESの会場のような場所では、Lyftの車が多数集まってしまう。その中から、自分とマッチングした車を探すのは、なかなか骨の折れる作業だった。面倒だったので、その場にいたLyftのスタッフに頼んで、代わりに探してもらったりもしたのだが(笑)。

 コストが低く、アプリを使うため手間もかからないが、利用する際は上記のような点に気をつけておきたいところだ。とは言え、過去に何度もラスベガスでタクシーに乗った経験と比べ、Lyftは非常に快適だったことは強調しておきたい。目的地をあらかじめ入力しておけば遠回りされることもなく、ナビ通りに進んでくれるし、ユーザーからの評価もあるため、ドライバーはみんな親切だ。こうしたサービスはまだまだエリアが限られてはいるが、対応している国や地域であれば、使っておいて損はないだろう。