【iPhone 5】

縦に長くなった画面に思う

2012年11月1日 06:00
(白根雅彦)
iPhone 4S(左)とiPhone 5(右)
小指を本体の下端に入れる筆者独特なグリップでも操作性は変わらない

 iPhone 5では画面のサイズと縦横比率が変わった。これはiPhoneにとっては非常に大きな変化だ。これまでのiPhoneは、3GSから4になったときに解像度だけ精細になったが、75×50mm(縦×横)の画面サイズが変わることはなかった。しかしiPhone 5では横幅は解像度・長さともに変更がないまま、縦が約88mmとなった。画面比率は3:2から16:9へワイド化している。

 個人的には、iPhoneの画面の変化には不安があった。操作性、画面の使い方、アプリの互換性などに影響が大きすぎるのでは、と心配だったからだ。

 しかし1カ月ほどiPhone 5を使ってみて、その心配が間違っていたことがわかった。

 まず操作性だが、本体と画面の幅はiPhone 4Sとまったく同じなので、ホールド感に変化がなく、iPhone旧モデルからの移行では違和感が非常に少ない。とくに画面の下半分を使う文字入力では、指が覚えているそのままの操作が通用する。iPhoneではいろいろなアプリで右上に「決定」や「送信」など重要なボタンが配置され、左手でスマホを操作する筆者には少しだけタップしにくくなったが、しかし持ち方を変えることなく、一通りの操作ができている。

左はiPhone 4S、右はiPhone 5。文字などの大きさはそのままに、情報量だけが増えている

 16:9比率の画面は動画以外のコンテンツでは不利なのでは、とも考えていたが、この考えも半分は間違っていた。たしかに地図や電子書籍は、画面の幅も必要なので、16:9の恩恵は受けにくい。しかしスマートフォンが登場して数年が経過する現在、多くのコンテンツがスマートフォンの細長い画面に最適化されている。スマホ向けのWebサイトやアプリは、拡大や横スクロール不要な縦長デザインがほとんどだ。そうなると、画面は横幅はそのままで、縦に長い方が有利となる。比べてみるとわかるが、TwitterやFacebook、Googleリーダーなど、さまざまなアプリで使い勝手が大きく向上した。

常用アプリを並べたホーム画面。まだ2個の16:9非対応アプリがある

 画面解像度が変わるにあたり、アプリの互換性も心配だった。実際、iPhone 5発売当初は画面を使いきれる16:9対応のアプリは少なかった。しかしこの点も急速に改善されている。筆者が常用しているアプリのうち、まだ16:9対応していないものもいくつか残っているが、小規模な開発者のアプリもだいぶ対応し始めている。一方で16:9非対応のアプリは、上下に余白(黒いけど)となり、16:9のワイド画面の恩恵は受けられないものの、iPhone 4S以前と同じように使えている。

 iPhone 5における画面の変化は、これまでのiPhoneシリーズで培ってきた使い勝手やアプリの互換性を維持しつつ、一方でスマホ時代の縦長コンテンツを見やすくするという、iPhoneにとってベストな進化の選択肢だったのだな、と感じる。まだ16:9非対応アプリも多く、その真価を発揮できないこともあるが、しかしすでに1カ月の使用で、「16:9になってよかった!」と感じる場面が多い。

 それから、画面が縦に伸びたことで、アプリ内広告を配置しやすくなり、無料アプリ提供者にとってのメリットもある。iOSアプリの開発者においては、新たな手間が増えて大変だとは思うが、積極的に16:9対応を進めていって欲しい。