みんなのケータイ

そろそろ何とかして欲しい、おサイフケータイの初期化

【HUAWEI P20 Pro HW-01K】

使わなくなった端末の処分

 先月、本誌の連載で、使わなくなった端末やモバイルバッテリーの処分について、「端末やモバイルバッテリー、モバイル製品のリサイクルはこれでいいの?」という記事を書いた。

 ここ1年ほど、モバイルバッテリーの発火事故などが報道されていたこともあり、モバイルバッテリーの処分はSNSなどで反響をいただいたが、実は端末の処分も結構、厄介だ。周囲の知人に話を聞いてみても不要になった端末を処分できず、自宅に保管したままという人も少なくなかった。

 記事でも触れたように、ほとんどの携帯電話やスマートフォンは、携帯電話会社や端末メーカーを問わず、各携帯電話会社のショップで回収を受け付けているが、ある程度、価値がある端末であれば、中古ショップに買い取ってもらったり、メルカリやヤフーオークションなどのフリマサイトで売却して、お小遣いにしたいところ。なかには家族や友だちに譲るという人も少なくない。

 ただ、携帯電話会社ショップなどで“不要品として回収”するときと違い、売却したり、譲渡するときは、当然、端末を初期化する必要がある。iPhoneであれば、端末内の[Apple ID]のメニューで、[探す]をオフにして、Apple IDをサインアウトしたり、AndroidスマートフォンはGoogleアカウントを端末から削除したり、サムスンやシャオミ、OPPOなどの端末はそれぞれのメーカーのアカウントもサインアウトしたうえで、端末を工場出荷状態にリセットする。

機種変更後のおサイフケータイ

 使わなくなった端末の初期化する際、もうひとつ厄介なのがおサイフケータイだ。おサイフケータイの各サービスを利用しているときは、あらかじめ決められた手順で、旧端末から新端末へ登録内容を移行できる。

 たとえば、モバイルSuicaなら、元の端末のアプリで[機種変更]の手続きをして、登録情報やデータをJR東日本のサーバーに預け、新しい機種に[モバイルSuica]アプリをインストール後、預けた情報を受け取るという流れだ。QUICPayやWAON、nanaco、楽天Edyなどもそれぞれに決められた手順で機種変更や再発行の手続きをする。

 機種変更ではこれらの手続きや操作で、新しい端末でおサイフケータイが利用できるようになれば、それで完了と考えてしまいがちだけど、実は元の端末におサイフケータイの各サービスの登録情報が残っていたり、そのデータがFeliCaチップ内のメモリ領域を使ったままで、端末を初期化してもこれらのデータは消去されないしくみとなっている。

 そのため、おサイフケータイを利用していた端末は、そのまま買い取りに出しても買い取りを断られたり、買取額を減額されてしまうことがある。さすがに、次のユーザーが登録済みの電子マネーを勝手に利用できるようなことはないけど、次のユーザーが利用できるおサイフケータイのメモリ領域が制限されるなどのデメリットがあるため、こうした措置がとられている。

 おサイフケータイのメモリ領域がどうなっているかは、対応スマートフォンに必ずインストールされている[おサイフケータイ]アプリで確認できる。

おサイフケータイ対応端末には必ずインストールされている[おサイフケータイ]アプリ

 アプリを起動し、メイン画面の左上メニューから[サポート・規約]-[メモリ使用状況]の順にタップすれば、確認できる。[利用状況]が「未利用」となっているか、[共通領域]が「0」になっていれば、データが削除され、メモリ領域がクリアになっている。もし、[利用状況]が「利用中」となっていたり、[共通領域]が「0」になっていないときは、メモリ領域にデータが残っていることを意味する。

[おサイフケータイ]アプリを起動すると、[マイサービス]タブに現在登録中の各サービスが一覧で表示される
おサイフケータイのメモリ領域を確認するには、[おサイフケータイ]アプリの左上のメニューボタンをタップし、[サポート・規約]をタップする
表示された[サポート・規約]メニューで、[メモリ使用状況]をタップすれば、メモリー使用状況を確認できる

 では、おサイフケータイを利用していた端末で、各サービスの登録情報を削除したり、FeliCaチップ内のメモリ領域をクリアにするにはどうすればいいのか。

 実は、各サービスごとに削除や消去する方法がバラバラで、削除のための操作方法も各サービスのWebページやサポートページで、ほとんどアナウンスされていない。ネット上のQ&Aサイトなどでも「どうすれば、消せるの?」といった質問が数多く寄せられている。

 具体的な方法としては、おサイフケータイで提供される各サービスのアプリ内から削除の操作をしたり、アプリをアンインストールしたりといった操作が必要になる。

対応アプリやサービスを削除してもクリアにならないときは

 筆者は個人的に利用する端末やレビュー用に購入した端末などは、使い終わった段階で買取店などで売却するように心がけているが、忙しさのあまり、なかには売却のタイミングを逸し、手元に残ったままの端末もいくつかある。

 たとえば、つい最近、NTTドコモのファーウェイ製端末「HUAWEI P20 Pro HW-01K」(2018年6月発売)を処分しようとしたんだけど、以前、おサイフケータイの各サービスを使っていたため、サービスのアプリ内でデータを削除したり、アプリをアンインストールしたりして、メモリ領域をクリアにするための作業が必要になった。

2018年6月に発売され、しばらくメイン端末としても利用したNTTドコモの「HUAWEI P20 Pro HW-01K」。もう使うこともないので、処分しようとしたが……

 たとえば、すでにサービスが終了したANAの「SKiPサービス」、JALの「JALタッチ&ゴーサービス」、ヨドバシカメラの「ゴールドポイントカード」などは、[おサイフケータイ]アプリの[マイサービス]から各サービスを表示して、削除することができた。

 意外にわかりにくかったのがご本家「フェリカネットワークス」が提供する「かざすフォルダ」。[おサイフケータイ]アプリから[かざすフォルダ]を起動し、右上のメニューから[Q&A]を選び、Q&Aの一覧から「かざすフォルダの削除方法は?」という項目を探し、その回答内のリンクをタップして、[かざすフォルダ削除]をタップすれば、削除できた。

おサイフケータイのご本家でもあるフェリカネットワークスが提供する[かざすフォルダ]はサポートページのQ&Aで、[かざすフォルダ]の削除の質問を探し、回答のリンクをタップする
表示された[かざすフォルダ削除]をタップすれば、削除され、おサイフケータイのメモリ領域の該当部分が開放される

 しかし、対応アプリの削除や登録情報の消去など、ひと通りの削除作業をしても今回は最終的に[共通領域]の値は「0」にできなかった。

 こうした状況になったときは、NTTドコモの場合、ドコモショップの「DOCOPY」という端末を利用することで、おサイフケータイのメモリ領域を初期化できる。

ドコモショップに設置されている専用機器「DOCOPY」を使えば、おサイフケータイのメモリ領域の削除(ICカード内データの消去)ができる

 古くからのユーザーなら、ご存知だろうが、「DOCOPY」は端末データのコピーやバックアップができる専用機器で、ドコモショップに設置されている。この機器に「ICカード内データの消去」という項目があり、おサイフケータイ(FeliCa)のメモリ領域を消去できる。

 手順は簡単で、「DOCOPY」のメイン画面から[その他 SDメモリーカードのデータ移行など]-[ICカード内データの消去]を選ぶだけ。あとは「DOCOPY」に接続されているFeliCaリーダー/ライターに端末を置き、画面の指示に従って、操作すれば、十数秒で消去は完了する。念のため、端末内の[おサイフケータイ]アプリを起動し、メモリ領域を確認したところ、[共通領域]の値は「0」になっていた。

「DOCOPY」のメインメニューでは、[その他 SDメモリーカードのデータ移行など]-[ICカード内データの消去]の順に選ぶ
続いて、[ICカード内のデータの消去]を選ぶ
あとは画面の指示に従って、右下のリーダー/ライターに端末を置く。十数秒でメモリー領域が削除され、クリアになる
「DOCOPY」のおかげで、無事におサイフケータイのメモリ領域の利用状況が「0」になった。これで問題なく、売却できるはず

 ちなみに、フェリカネットワークスは2018年以前に発売された一部機種のおサイフケータイ機能のサポートを2025年3月に終了することを発表しており、それ以降はおサイフケータイの初期設定や各サービスのアプリの設定、削除、ICカードのフルフォーマット(メモリ領域のデータ削除)などができなくなるとしている。

 該当する機種の情報はフェリカネットワークスのWebページに「重要なお知らせ」として、情報が掲載されているので、確認することをおすすめしたい。

おサイフケータイの初期化はどうにかならないの?

 今回はNTTドコモが販売した「HUAWEI P20 Pro HW-01K」だったので、「DOCOPY」が利用できたが、他の携帯電話会社の場合はどうすればいいのか。

 実は、au、ソフトバンク、楽天モバイルは、残念ながら、おサイフケータイのメモリ領域のクリアについて、サポートページなどでアナウンスしていない。

 ただ、auショップやソフトバンクショップなど、それぞれの携帯電話会社のショップに持ち込めば、「DOCOPY」と同じように、おサイフケータイのメモリ領域の消去に対応するようだ。「~ようだ」という曖昧な表現になってしまうのは、各社がWebページなどで明確にアナウンスしていないためなので、その点はご理解いただきたい。

 最近ではオープン市場向けのSIMフリー端末でもおサイフケータイに対応する機種が増えてきたが、実はこれらも各端末メーカーからアナウンスやガイドがなく、実質的にユーザー任せの状況になっている。

 ちなみに、ドコモショップに設置された「DOCOPY」は、NTTドコモの端末でしか利用できないわけではないため、他の携帯電話会社の端末やSIMフリー端末も各ドコモショップの了解が得られれば、おそらくおサイフケータイのメモリ領域の初期化ができるはずだ。もちろん、他社端末の場合、正しく動作しない可能性もゼロではないので、「At Your Own Risk(自己責任で)」であることをご理解いただきたい。

 こうした面倒な状況に陥っているのは、各携帯電話会社や端末メーカーの対応が中途半端であることが要因のひとつだが、実は、おサイフケータイのサービスを支えるフェリカネットワークスの対応が不十分であることが大きいように見受けられる。

 おサイフケータイはケータイ時代にサービスの提供が開始されてから、すでに20年が経過している。かつては各携帯電話会社が販売する端末のみで、おサイフケータイのサービスを利用していたため、各携帯電話会社のショップ対応でも何とかなったが、今や契約する携帯電話会社と端末が別々ということも珍しくない。

 それに加え、MVNO各社も回線を提供し、オープン市場向けのSIMフリー端末も利用が拡大するなど、市場環境も大きく変わり、携帯電話会社やメーカー任せでは、済まなくなっている。

 また、おサイフケータイで利用できる各サービスについては、機種変更時のデータ引き継ぎ方法などがある程度、ガイドで示されているものの、使い終わった端末のメモリ領域のクリアをどうすればいいのか、どうすれば、安全に処分できるのかといった情報は、ほとんど案内されていない。

 たとえば、「機種変更でデータ引き継ぎ後、古い端末でアプリをアンインストールすれば、ICカード内のデータは消去されます」といった説明でも書いてあれば、ユーザーは安心して、アンインストールして、売却や譲渡できるだろうけど、サービス提供会社のWebページにはそういった記述がほとんど見当たらない。

 日本のユーザーが求める“日本仕様”のひとつとして、国内で広く利用されているおサイフケータイ。決済サービスや会員証など、さまざまなサービスが利用できるのは便利だし、そういったニーズを踏まえて、オープン市場向けのSIMフリー端末でもおサイフケータイ対応のものが増えてきたわけだけど、今回取り上げたメモリ領域のクリア(ICカード内のデータ消去)など、使い終わった後の対応があまりアナウンスされていないのは残念な限り。

 その一方で、決済サービスではコード決済が急速に拡大し、公共交通機関の自動改札もクレジットカードのタッチ決済の導入が検討されていたりして、業界内では「これって、脱おサイフケータイ?」みたいなこともささやかれている。

 本当の意味でユーザーにとって便利なサービスを継続するために、全体的なサービスの利用環境を見直していただき、おサイフケータイの初期化もそろそろ何とかならないもんですかね。 > フェリカネットワークス及び関係各社のみなさん