みんなのケータイ

海外で現地プリペイドSIMカードはもう買わない?

【Moto X4】

 夏と言えば、みなさん旅行シーズン。SNSなどを見ていると、すでに7月半ばから国内外に出かけている人が多い。リゾートの人もいれば、海や山に出かけている人も。でも、なかには今日、家族とプールで楽しんでいる写真をSNSにアップロードしていたのに、現地時間の夜中と思しき時間に、仕事のメールやメッセージが送られてきたりして、「ああ、お父さんは大変」と思ってみたり……。

 こうしたお休みのシーズンになると、よく話題になるのが海外でのスマートフォンの利用。本コーナーでは何年も前から多くの執筆陣がさまざまな国と地域で利用した様子が伝えられてきた。もちろん、筆者自身も何度も現地でプリペイドSIMカードを購入した話を書いてきた。

 ところが、読者のみなさんもよくご存知の通り、2016年夏にauが24時間980円の「世界データ定額」を開始し、今年3月にはNTTドコモの「パケットパック海外オプション」で追随したことで、ちょっと様子が変わってきた。24時間で980円という料金で、データ通信量は国内契約分から差し引かれるという仕様で、24時間後には自動的に接続が切断されるため、使いすぎる心配もない。しかもauはau STAR会員が1カ月に1回(24時間)、無料で利用でき、NTTドコモも9月30日までの間、パケットパック海外オプションを利用すると、毎月1回分相当のdポイントが還元される。

 とまあ、ここまでは今まで本コーナーでも記事でも説明してきたことだけど、今年の夏は両社ともさらに魅力的なキャンペーンを実施している。

 まず、NTTドコモは9月30日まで、15の国と地域を対象に、4つのキャンペーン料金プランを提供することを発表した。もっとも短い300円1時間をはじめ、旅行などに便利な3日間、5日間、7日間というパックの料金プランを提供している。この3/5/7日間のキャンペーン料金プランはいずれも24時間980円を日数分、利用したときも割安な設定。たとえば、筆者はこの記事が掲載される8月第2週に、5日間、米国に取材で出かける予定だけど、5日間プランを選べば、3980円で済む。24時間980円を5回利用したときよりも920円、割安になる計算。本当はもう一息、踏み込んで欲しいところだけど、それでもこの時期にこういうキャンペーンを実施してくれるのはうれしい。

 一方、auは8月1日から9月30日まで、ハワイとアメリカでの利用料(24時間980円)が無料になる「Wi-Fiルーター不要!ハワイ・アメリカ無料キャンペーン」を実施中。渡航先は限定されるけど、追加料金が不要というのはかなり強力。前述の8月第2週の米国出張に限れば、こちらが一枚上手ということになる。

渡航先に到着し、NTTドコモの「ドコモ海外利用」のアプリを起動すると、キャンペーン料金プランの選択画面が表示される。標準プランも選択が可能
[利用開始]をタップすると、確認画面が表示される。キャンペーンの対象となる国と地域以外に移動したときは別途、利用開始が必要
キャンペーン期間中、アメリカに到着し、auの[世界データ定額]のアプリを起動すると、いつもは「090円/24時間」と表記されているところが「無料/24時間」と表示される

 ちなみに、この両サービスと両キャンペーンで、一つだけ注意したいのは、割安なのがデータ通信に限られているという点。渡航先で電話をかけたり、受けたりすれば、通話料も国際転送料もかかるので、通話時間によっては請求が高くなることも考えられる。もっとも今どきはLINEやFacebookメッセンジャーのアプリで通話する人も多いので、そういう意味では電話をかけてくる人次第という感じかな。

 こうした各携帯電話会社の国際ローミングの料金の下がっていく中、渡航先で現地のプリペイドSIMカードを買うのは、手間を考えると、今ひとつ魅力が半減してきているのも事実。渡航先の空港のロビーで深夜でも早朝でプリペイドSIMカードが買えるタイやベトナムといった東南アジアなどは買うかもしれないが、国と地域によっては言葉の問題もあるので、もう買わなくなってしまうかもしれない。

 この「買わなくなってしまうかもしれない」を後押しするもう一つの要因が「クラウドSIM」の存在。本コーナーでは以前、香港のuCloudLinkが販売する「GlocalMe G3」を取り上げたけど、クラウドにある複数のSIMカードの情報を読み込み、1台の端末で世界各国で利用できるようにするというもの。先日、MAYA SYSTEMは同様のクラウドSIMの技術を利用した「jetfon」というスマートフォンを発表し、話題になった。

 そして、こうしたクラウドSIMの技術をSIMカード単体で提供するサービスも登場してきている。たとえば、昨年、本コーナーで大和哲氏島田純氏が相次いで取り上げていた「AIRSIM」というSIMカードもその一つ。

AIRSIMを装着した状態でアプリをインストールすると、チャージをしたり、渡航先のパッケージを購入できる
さまざまな国と地域のパッケージ。ただし、ここに書かれている単価はあくまでも計算上の最安値。つまり、30日間で何十ドルのパッケージを買うと、これくらいの単価になるという意味なので、要注意
筆者はマレーシア・クアラルンプールに行った際、3日間のパッケージを購入し、利用した。データ通信量は無制限だが、1日あたり500MBを超えると、256kbpsに制限される
Amazonで購入すると、SIMカードケース(SIMピン付き)に入れられて送られてきた

 この商品は国内のAmazonで販売されているので、実際に購入し、7月にマレーシアのクアラルンプールに出かけたとき、試してみた。仕組みとしてはGlocalMe G3と同じで、自分が使いたい地域のパッケージをオンラインで購入し、渡航先でクラウドSIMの情報を読み込み、使えるようにする。料金はアジア圏が非常に安く、マレーシアは3日間で3.99米ドル(約450円)。データ容量は無制限だけど、1日あたり500MBを超えると、最大256kbpsに制限されてしまう。米国は5日間で1GBのデータ通信量で14.99米ドル(約1700円)。欧州周遊などのパッケージも用意されているので、欧州各国を回るときには便利かもしれない。

 動作については大和氏や島田氏が書いていたように、最初はすぐにネットワークをつかまず、何度か再起動をしている内につながるという印象。今回はモトローラのMoto X4に挿して使ったけど、デュアルSIMに対応した端末であれば、国内SIMを1枚目に挿しておき、2枚目にはAIRSIMを挿しておけば、あとはいろいろな渡航先に対応できて、なおかつ料金もそこそこお安いというのは魅力。

 今後、こうしたクラウドSIMのサービスは増えてくると言われていて、正式に日本語によるサポートにも対応したサービスが登場してくれば、いよいよ本当に現地のプリペイドSIMカードは買わなくなってしまうかもしれません。