みんなのケータイ

日本で買える海外キャリアのローミングSIM

【HUAWEI P10 Plus】

 8月半ばから9月半ばにかけて、海外を飛び回る忙しい日が続いた。本コーナーの執筆陣とも各地の取材でいっしょになり、「今年は続くねぇ」などと話していたので、今後、本コーナーに海外ネタがいくつも投稿されるかもしれない。

 以前、仕事で海外に出かけるときは、モバイルWi-Fiルーターをレンタルしているという話を書いたけど、最近は期間や渡航先によって、他の方法で済ませることも少なくない。理由は各携帯電話会社の国際ローミングが少し安くなり、キャンペーンなどでおトクに使えるケースが増えたためだ。

 たとえば、auの「世界データ定額」は24時間あたり980円で、au STAR会員なら、毎月1回は無料で使える。先日のIFA 2017のように、月をまたぐ海外取材のときは、実質的に2日分はタダになるので、「残りも世界データ定額で済ませよう」と考えてしまう。NTTドコモの「海外1dayパケ」はデータ通信量が1日あたり30MBと少ないけど、9月30日まではキャンペーンでデータ通信量が無制限なので、こちらも対象地域でしっかりと活用させていただいた。ソフトバンクと言えば、iPhone限定だけど、「アメリカ放題」が使えるので、米国出張には欠かせない存在。これらに加え、ドイツや米国は長く使っているプリペイドSIMカードがあるので、とりあえず、この2カ国はあまり通信環境に困ることはない。

 ただ、今年7月からEU内ではEU内ローミングが追加料金なしで利用できることがルール化された影響などもあり、ドイツをはじめ、EU各国ではプリペイドSIMカードが買いにくくなったという指摘もある。まったく買えなかったり、買ってもアクティベーション(開通)ができなかったり、買えるけど、通常よりもかなり高額といった話が次々と聞こえてきている。そんなこともあって、今年の8月から9月にかけての連続出張では、「国内で購入できる海外キャリアのローミングSIM」を試すことにした。

日本のAmazonで購入すると、SIMカードの他に、印刷された「ご利用ガイド」が送られてくるところもある

 まず、1つめはKDDIが米国の携帯電話事業者「AT&T」の回線を借り受け、米国で提供しているMVNOサービス「H2O Wireless」。音声機能付きSIMサービスとデータ専用SIMサービスが提供されていて、料金は毎月課金のほかに、その都度、入金するプリペイドの2種類が提供されている。データ通信量は2~10GBまでで4段階あり、基本料金は30ドルから10ドル刻みで60ドルまで。音声通話はアメリカ国内が無制限であることに加え、日本を含む50カ国の固定電話宛ての国際電話も無制限にかけられる。プリペイドは入金後、30日まで利用できるという。

 こうした海外で提供されるサービスは、本来なら、米国渡航時にプリペイドSIMキットを購入したり、渡航先の店頭で手続きをする必要があるんだけど、H2O Wirelessは日本語に対応した販売業者が取り扱っていて、簡単に手続きができてしまう。今回はLocus Telecommunications, LLCという販売業者が提供する「KDDI Mobile x H2O Wireless」というWebページで手続きを行なった。SIMカードは同社のページからも購入できるし、何とau Online Shopでも扱っているんだけど、日本のAmazonで販売されている(わずか181円!)のを見つけたので、そちらで購入した。

シンプルな内容ながら、アプリも提供されている。ただし、これは米国向けに制作されたものなので、日本語のメニューなどはない

 SIMカード購入後の手続きについては、KDDI Mobile x H2O WirelessのWebページにわかりやすい「ご利用ガイド」が公開されている。流れとしては、まず、アカウントを作成し、続いて、購入したSIMカードに記載されている「ActFast Code」などを入力して、電話番号を発行。あとは月額課金か、都度課金の料金プランを申し込むだけ。ただし、料金プランは購入日から30日間、電話番号の有効期限は料金プラン購入日から60日に限られているので、渡航前に手続きをしておくとしてもあまり早すぎない方がベターかな。欲を言えば、この電話番号の有効期限が1年くらいだと、助かるんだけど……。

 セットアップについてはAndroidスマートフォンの場合、米国に到着後、エリア内でSIMカードを挿せば、APNなどは自動的に設定される。iPhoneの場合は日本でMVNO各社のSIMカードを利用するときと同じように、プロファイルのインストールが必要なため、渡航後にインストールするのであれば、空港のWi-Fiなどを利用したり、他の端末のテザリングを一時的に利用するしかない。

 気になる実際の利用状況についてだけど、8月のニューヨーク、9月のサンノゼ共に、電波状態についてはほとんど不満なし。通信速度はWebページにも記載のある通り、受信時がLTEで最大8Mbps、4G(HSDPAなど)で最大4Mbpsなので、数Mbps程度しかでない。とは言え、動画のストリーミングを見るわけでもないので、それほど大きな不満はなかった。

8月半ばに開通させたので、有効期限は9月17日まで。1年くらい電話番号を保持できるサービスがあると、うれしいんだけどなぁ
米国で通信速度を計測したところ、告知されている上限程度の速度が得られた
AISのSIM2FlyはSIMカードだけが送られてきた。挿せば、すぐに利用開始。HUAWEI P10 Plusは市販のカバーをつけて利用中

 一方、H2O Wirelessとは別に、もうひとつ海外の携帯電話事業者のローミングSIMカードを試してみた。タイの携帯電話事業者「AIS」が提供する「SIM2Fly」というパッケージだ。対象エリアの違いにより、3つのパッケージが用意されていて、それぞれにデータ通信量や期間が異なる。「Europe USA&Other」は899バーツ(約3057円)で4GBを15日間、「Asia&Australia」は399バーツ(約1357円)で4GBを8日間、「More than 50 Contries」は199バーツ(約677円)で100MBを30日というラインアップ。今回はドイツと米国なので、「Europe USA & Other」がターゲット。

 さて、これをどこで買うか。タイに行ったときに、AISのカウンターで買うこともできるらしいんだけど、今回は日本のAmazonのお世話になりました。価格は3490円でしたが、並行輸入品なので、まあ、妥当な価格と言えるかな。

 SIM2FlyのSIMカードは端末に挿すと、自動的にアクティベートされて、すぐに使えるようになるとのことなので、今回は8月29日に乗り継ぎでドイツ・フランクフルトに到着したときにスマートフォンの電源をON。しばらく経つと、SMSが届いて、開通完了。APNも自動的に設定されるので、一覧から選ぶだけ。ちなみに、「Europe USA & Other」には日本も対象に含まれているため、渡航前に日本でSIMカードを挿してしまうと、その段階から日数もデータ通信量もカウントが始まってしまうので、注意が必要だ。

 実際の速度については、思ったほどではなく、受信時で1~3Mbps程度で、場所によっては1Mbpsに届かないこともあった。とは言え、SNSやちょっとWebページをチェックする程度であれば、十分だし、何よりもデータ通信容量が4GBまでと大きく、15日間と長いので、周遊するような旅行には便利。

 ちなみに、SIMカードの有効期限を延長するには、残高をチャージする必要があるんだけど、AISのWebページからの手続きでは日本のクレジットカードが使えない。そこで、先人たちのブログなどで情報を集めたところ、「Mobile Topup in Thailand」というサイトがあり、そこなら、日本のクレジットカードやPayPalなども使えるようだった。物は試しとばかり、50バーツ(約170円)ほど、トップアップしてみたところ、有効期限を10月下旬まで延ばすことができた。しばらく海外に出かける予定はなさそうだけど、チマチマとチャージをくり返して、有効期限を延ばして、必要に応じて、前述のパッケージをオンラインでオーダーするのも悪くないかな。

myAISというアプリも提供されていて、英語メニューも表示可能。ただし、日本のクレジットカードで残高の追加などはできない
ドイツ・ベルリンで測ったところ、通信速度はこの程度。ちょっと頼りないけど、SNSやWebページのチェック程度なら、十分に使えるレベル