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ARPU回復基調へ反転する中、非通信事業の成長が牽引役となってきている携帯大手3社の決算概況

 携帯大手3社の2022年4~12月期連結決算が出揃った。今回は、3社の決算概況について見ていきたい。

 政府による官製値下げや電気代の高騰など、携帯各社を取り巻く事業環境は厳しさが続いている。2022年4~12月期連結決算はNTTドコモとソフトバンクが「増収増益」だったが、2022年7月に大規模通信障害を引き起こしたKDDIは「増収減益」だった。

 官製値下げの影響が依然として続いているものの、各社は「通信事業」の減収分を、法人や金融など「非通信事業」でカバーするという構図に変化はない。足元では、携帯各社のARPUが下げ止まり、上昇トレンドの兆しが見えてきており、来期以降「通信事業」の本格回復が期待される。以下、各社の概況について見ていきたい。

NTTドコモ

 NTTドコモの2022年度第1~3四半期連結決算は、営業収益が前同期比1.5%増の4兆4244億円、営業利益が同0.3%増の8888億円だった。全体の50%以上を占める「コンシューマ通信」の売上が2兆5181億円と前年度より3.7%減少する一方で、成長領域と位置付ける「法人事業」と「スマートライフ事業」の売上はそれぞれ1兆2958億円(同4%増)、7984億円(同10.6%増)と順調に拡大している。

 前年同期との比較では「コンシューマ通信」の売上は減少しているものの、前期比では増収基調に入っている。背景にはこれまで減少が続いていたモバイルARPUが回復基調(前期比で10円増の4090円)に転じている点が挙げられる。6月にはオンライン申し込み専用プラン「ahamo」に月額4950円で100GBまで使える「大盛り」プランを投入したが、こうした中大容量プランへの取り組みが功を奏した結果と言える。

 なお、NTTドコモは2022年7月にNTTコミュニケーションズ、NTTコムウェアと経営統合し、新生ドコモグループとして再始動している。新たに発表された「新ドコモグループ中期戦略」では法人事業とスマートライフ事業をグループの成長エンジンとして位置づけ、2025年度には収益の過半を両事業で創出する方針を打ち出しており、法人事業については2兆円以上を計画している。

KDDI

 KDDIの2022年度第1~3四半期連結決算は売上高が同4.2%増の4兆1829億円、営業利益が同3.6%減の8434億円だった。減益の要因については、3G停波関連+コスト効率化などにより613億円増、DX・金融事業で297億円増となったものの、マルチブランド通信ARPU収入が710億円減、「燃料高騰」と「通信障害」で238億円減などが影響した格好だ。

 一方、注目領域と位置付けるデジタルトランスフォーメーション関連の「NEXTコア事業」は2830億円(同17.4%増)とビジネスセグメント売上の3割以上まで成長した。また、auじぶん銀行とau PAY事業が柱となっている金融事業は口座数が500万を突破し、住宅ローン融資累計実行額も2.5兆円を達成したことなどで売上高1627億円(同30.6%増)、営業利益309億円(同220.8%増)を記録した。

 課題だった通信収入の減少については、2021年度Q4期を底に減収幅が縮小してきており、着実な回復が見られる。同社5G浸透率は既に49%まで拡大し、「au」ブランドの5G端末購入者のうち6割超が使い放題プランを選択している。また、付加価値ARPUの増収傾向も続いている。auではピタットプランに代わる新しい段階制プラン「スマホミニプラン」の提供や、UQ mobileでも中、大容量プランの利用が1年間割り引かれる「UQ親子応援割」を提供するなど、中期的な成長へ向けて更なるARPU上昇を目指している。

 2023年度からは5Gを核にDXや金融、エネルギーなどの分野の成長を図っていく「サテライトグロース戦略」が再始動することとなりそうだ。

ソフトバンク

 ソフトバンクの2022年度第1~3四半期連結決算は売上高が同4.1%増の4兆3455億円、営業利益が同21.7%増の9821億円だった。売上高は全セグメントで増収となったものの、コンシューマ事業は通信料値下げの影響で17%の減益となった。

 また、営業利益についてはPayPay子会社化に伴い企業価値を再測定した結果、2948億円の再測定益が計上され大幅な増益となった。通信料値下げの影響については、2021年度が770億円、2022年度は900億円の影響が出るものの、2023年度は500億円までマイナス影響が縮小する見通しだとしている。このようにモバイル事業の苦戦は続いているものの、非モバイル事業の拡大が重要な成長ドライバーとなってきている。

 同社では、今期にスマートフォン決済「PayPay」などの決済事業を新たな成長の柱に育てるため、金融セグメントを新設した。PayPay単体の売上高は前年同期比で約2.3倍の898億円となり業績拡大を牽引している。ソフトバンクユーザーがPayPayの運営するクレジットカード「PayPayカード」を申し込めば、ポイントを優遇する施策などを展開し、相乗効果を高めている。

 2022年度は法人事業の拡大や金融事業の新設で、モバイルなどを含むコンシューマ事業の売上高に占める割合が初めて5割を切る見込みで、営業利益1兆円以上、調整後フリーキャッシュフロー6000億円を目指している。

 最後に携帯大手3社の2022年度末の売上高、営業利益の計画値について整理しておきたい。

IT専門の調査・コンサルティング会社として、1993年に設立。 主に「個別プロジェクトの受託」「調査レポート」「コンサルティング」サービスを展開。 所属アナリストとの意見交換も無償で随時受け付けている。 https://www.mca.co.jp/company/analyst/analystinfo/