DATAで見るケータイ業界

DX化で注目される携帯会社の法人事業の行方

 最近、携帯会社の事業展開において、スマートライフといった新領域と並んで注目を集めているのが「法人市場」だ。今回は、「法人市場」のこれまでの大枠の流れや各社の状況について取り上げていきたい。

 携帯大手3社の法人事業の売上を整理したのが下記のグラフである。

グラフ:携帯各社の「法人事業」の売上比較(2021年度)
NTTドコモグループの数値は、いずれもNTTドコモ・NTTコミュニケーションズ・NTTコムウェアの合算値
出典:各社IRデータからMCA作成

 全体の売上に対する法人事業の割合ではソフトバンクが12.6%、KDDIが19.1%、NTTドコモグループが29.3%とそれぞれ10%前後の開きがみられる。

 NTTドコモグループについては、ドコモ単独ではなく、NTTコミュニケーションズ、NTTコムウェアを含んだ数字であることが大きく影響している。決算ではNTTドコモ単独の法人事業については開示されていないが、弊社ではNTTドコモ単独の売上(4兆7138億円)の15%弱のレベルではないかと推計している。

5Gで成長狙う

 これまで携帯会社の法人部門は、一部大手企業向けにガラケーやIoT(当時はM2M)の導入を推進するため設置され、花形のコンシューマー部門と比較すると、相対的に存在感が低かった。

 そもそも法人市場は、今でいうBtoB(BtoBtoX含む)であり、コンシューマーとは商慣習が異なっている。

 代表的なのが相対契約だ。個々の企業ごとに1対1で通信契約を行うというもので、コンシューマー向けに提供されていている標準料金プランとは一線を画している。また、携帯会社によって取り組みの強弱はあるものの、法人では端末のレンタル契約の割合が多くを占めている点も大きな特徴だろう。

 市場的には、先行するドコモやKDDIを後発のソフトバンクが追い上げる構図が続き、2015年にはソフトバンクがソフトバンクテレコムを一体化することで組織を強化したのに対し、KDDIは2011年に「KDDIまとめてオフィス」を、ドコモは2014年にドコモCSという子会社をそれぞれ設立し、中小企業向け層を別会社として切り出すことで、事業の効率化を図ってきた。

 企業規模による導入状況では、従業員が多い大企業や中堅企業では、携帯会社1社独占というのは少なく、企業内シェアの奪い合いというケースが多いのに対し、規模が小さい中小企業はオセロのようなひっくり返し合いが、日常的に繰り広げられている。

 最近は、5Gの普及とともにDX(デジタルトランスフォーメーション)化がバズワードのように注目を集めている。

 これは、顧客企業の総務部や情報システム部に行って回線を売っていた営業スタイルから、経営企画や商品開発など顧客企業のコア事業に通信をビルトインすることで、顧客企業の業務効率化や自動化、収益拡大をいかに実現させるかという『変革』を携帯会社に迫っている。

 携帯会社の法人事業が顧客企業にとってコストプッシュではなく、収益貢献に寄与できるような存在になれるのか。それいかんによって、今後の成長カーブが大きく変化していくこととなりそうだ。

IT専門の調査・コンサルティング会社として、1993年に設立。 主に「個別プロジェクトの受託」「調査レポート」「コンサルティング」サービスを展開。 所属アナリストとの意見交換も無償で随時受け付けている。 https://www.mca.co.jp/company/analyst/analystinfo/