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総務省アクション・プランでやり玉に挙がった「固定と携帯のセット割」の現況

 総務省が10月27日に公表した「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」。MNP手数料無料化、キャリアメールの持ち運び、eSIM促進などが大きく取り上げられているが、本稿では「固定と携帯のセット割」に着目したい。

「固定と携帯のセット割」は強力な囲い込み策、解約率を約2分の1に抑制

まずは、総務省アクション・プランから、該当箇所を改めて引用してみたい。

事業者間の乗換えの円滑化

(6)固定と携帯とのセット割引等の検証

 固定通信と携帯通信のセット割引等において、固定契約の期間拘束や高額な違約金等により、携帯契約において実質的に過度な利用者の囲い込みが生じていないかについて確認するとともに、セット割引の適用状況や契約締結等補助(キャッシュバックや販売代理店向けの販売奨励金等)の額等について、必要なデータの報告を求め、固定通信市場において不当な競争を引き起こしていないか検証する。【本年秋以降順次実施】

総務省の「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」

 アクション・プランでは、上記の通り、事業者間の乗り換えに関する課題の1つとして「固定と携帯のセット割」をやり玉に挙げている。

 本件は、今回のアクション・プランの中で、携帯キャリアにとって間違いなく痛い所を突いた指摘だろう。

 たとえばソフトバンクの場合、光セット割が適用されているスマホ契約は、適用されていない場合に比べて解約率が約2分の1に抑制できていると2019年3月期決算でアピールしている。

 他社も状況は同様で、携帯キャリア各社にとって、セット割は囲い込みの有力な武器となってきた。

ソフトバンク株式会社「2019年3月期 決算説明会資料」より

既に多くの顧客に浸透するセット割

 KDDIとソフトバンクは、セット割の適用契約数を開示しており、その情報をもとに「固定とのセット割」が適用される携帯回線比率を算出したところ、KDDIとソフトバンクともに3割前後に達している。

 また、ソフトバンクの開示資料からは、固定回線1契約に対し、携帯回線約2.1契約がセット割に組み込まれていることも分かり、家族まるごと取り込める大きな武器となっていることが伺える。

 NTTドコモの場合、セット割が適用される携帯回線数は開示されていないが、「ドコモ光」の契約数が約665万契約となっている。この利用者の大半は「ドコモ光セット割」に加入しているとみるのが自然だろう。

 このように、セット割が幅広く浸透した背景には、割引が永年続くのが一般的で、顧客にとってもメリットを実感しやすい仕組みであることが挙げられる。

 他方、いったん加入するとなかなか抜け出せない施策でもある。

 セット割について、アクション・プランにて記載されている「期間拘束や高額な違約金」を含め、今後どのような観点で検証されるのだろうか。

 万が一、割引を禁止する方向となれば、携帯キャリアの囲い込み抑止につながる一方、顧客にも多大な影響が発生することとなる。スピード感も大切だが、丁寧な議論を求めたい。

MCA

IT専門の調査・コンサルティング会社として、1993年に設立。「個別プロジェクトの受託」「調査レポート」「コンサルティング」などクオリティの高いサービス提供を行う。