ケータイ用語の基礎知識

第726回:3D Touchとは

スマートフォンのタッチパネルで、指で押された「力」を検知する

 3D Touchは、アップルの新機種「iPhone 6s」と「iPhone 6s Plus」で搭載されている、圧力を感知するディスプレイ、およびそれを利用したユーザーインターフェイス(UI)のことです。

 スマートフォンで利用されているタッチパネルでは、ユーザーの指がディスプレイに触っているか、そうでないかのみを知ることができます。一方、「3D Touch」用タッチパネルでは、それに加えて、「どれだけ強く押したか」を検知できるようになりました。

 システムからは、アプリケーションには「タッチパネルが検知できる最大の力に対して、何%の力で押されているか」という形で圧力が伝わります。アプリ側では「30%以下=タップのみ」「50%以下=押した」「それ以上=強く押した」と、しきい値を設定しておけば、「今回押された圧力は70%=画面が強く押された」と判断するわけです。

新しい操作「Peek」「Pop」

 これまでは、iOSの標準のユーザーインターフェイスでは、押す動作である「Tap(タップ)」や長押しの「hold(ホールド)」ができましたが、iPhone 6s/6s PlusのiOS 9.0以降ではさらにやや強めに押した場合に「Peek(覗き見)」、さらに強く押す動作を「Pop(ポップ)」と呼ぶようになりました。これまではiOSのホーム画面では、アプリケーションのアイコンをタップすると実行されていましたが、Peekではそのアプリでのプレビューやメニューがバルーン表示されます。

 Peek状態でさらに強く押すと、バルーンがはじけてそのアプリの画面になったり、メニューが実行されたりします。「メール」アプリの場合、アイコンをPeekの強さまで押すとプレビューが表示され、さらに強く押し込むとメールが画面全体に表示されるようになるわけです。

 この一連の動作のことをアップルでは「クイックアクション」と呼んでいるようです。その名前のとおり、これまでいくつもの箇所をタップしなければならなかった操作がワンアクションでできるようになるのです。

 これまでも、Windowsのような、2つのボタンのマウスを利用できる環境であれば「右ボタンを押す」といった動作で、アプリケーションのメニューを表示できました。一方、基本的に指で操作するスマートフォンでは、そうした操作ができません。しかしアップルは、今回のiPhone6s/6s Plusで、「感圧タッチパネル」をスマートフォンに採用することで、新しい操作体系でメニューを表示できるようにしたのです。

 iPhone6s/6s PlusのiOS 9.0では、Apple Watchでも使われた「タプティック・エンジン(Taptic Engine)」を使って、ハプティクスを実現しています。これは、非常に細かく振動を設定できるバイブレーターで、ディスプレイをユーザーの操作に応じて微妙な振動を与えます。たとえばディスプレイが強く押された場合、あるいはより強く押された場合、それぞれ10ミリ秒、15ミリ秒の振動がディスプレイに掛けられるようになっています。

微細な距離の変化を捉える静電容量センサー

 感圧に対応した3D Touchディスプレイの構造はどうなっているのでしょうか。アップルのWebサイトでも解説されているように、静電容量を感知する容量性センサーを、ディスプレイのバックライトに組み込んでいます。

Apple ホームページより。3D Touchでは、Retinaディスプレイのバックライト部分に容量性センサーを敷き詰めている。これにより、指で押されたディスプレイの微妙なたわみを検知することで圧力を計っている

 静電容量を検知するセンサーは、どのような仕組みで圧力を検知しているのか、それはディスプレイの表面のガラスがどの程度たわむかを観察することで実現しています。

 一見すると、常に真っすぐになっているように見える液晶ディスプレイですが、指で強い力で押すと、押された部分がわずかにたわみます。これは顕微鏡で確認ができる程度の小さなものです。

 iPhone 6s/6s Plusでは、バックライトに組み込まれた容量性センサーの層が、微妙な静電容量の差異を計ることで、このごくごく小さなたわみを検知し、それによってどの程度の圧力がかけられているのかを判定しています。iPhone 6s/6s Plusのディスプレイにシートを貼っていても、3D Touchによる操作ができるのは、静電容量の「差異」を計測しているためなのです。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)