ケータイ用語の基礎知識
第650回:サファイアガラス とは
(2014/2/18 12:33)
iPhoneのカメラ部分のカバーガラスにも
「サファイアガラス」は、高純度のアルミナ(Al2O3)を人工的に巨大結晶へ成長させたものです。サファイヤクリスタル、単結晶サファイアなどと呼ばれることもあります。その名前の通り、宝石のサファイアと同様の組成をしています。
純度という観点からみると、宝石よりも混ざり物が非常に少なくなっています。ちなみに、アルミナへ微量のクロム(Cr)が混ざると赤く発色してルビーに、鉄(Fe)やチタン(Ti)が混ざると青く発色してサファイアになります。
化学的な特性は、宝石のサファイアやルビーなどととほとんど同じで、非常に高い強度、そして耐摩耗性を持っており、他のガラスと比べると、傷がついたり割れたりすることが非常に少ない、という特徴があります。
優れた光学特性も備えています。光を非常によく通す、高い透過性がありますので、レンズなどに使うと、光を取り込みやすく、写真が暗くなりにくくなります。このほか、極めて安定した誘電率、電気絶縁性も持っています。
このことから、サファイアガラスは、現在、さまざまなな場面に利用されています。たとえば超高周波領域の基盤材料、絶縁素材、各種真空機器、光通信用のキャップなど、ハイテクかつ高精度を必要とする分野で使われています。
一般ユーザーに身近なところでは、高級時計の風防でも利用されますし、携帯電話関連ではiPhone 5/5s/5cのカメラ部分のカバーガラス、あるいは、iPhone 5sの「Touch ID」のセンサーを保護するホームボタンの素材として、このサファイアガラスが使われています。
高級携帯電話ブランドメーカーであるVertuのAndroidスマートフォン「Vertu Constellation」では、ディスプレイにサファイアガラスが使用されています。
コストは高いが、補って余りあるメリット
サファイアガラスには、さまざまな合成方法があります。その代表的なものとして、ベルヌーイ法、EFG(Edge-defined Film-fed. Growth)法などがあります。
ベルヌーイ法は、1902年にフランスの化学者ベルヌーイによって開発された人工宝石の製造法です。摂氏約2000度を超えるバーナーの火炎の中にアルミナ粉末を落として炎で溶かし、その後、冷える時に再結晶し、大きな結晶にするという方法です。
EFG法は、1971年に米国のラベレらによって開発された合成方法です。高温のアルミナを溶かし、液体状にしてから、種となる結晶をつけ、ゆっくりと引き上げながら結晶を成長させるという手法です。このEFG法は、人工宝石が工業用材料として普及する、そのきっかけとなった画期的な方法です。
しかし、いずれの方法でも、アルミナを高温で一度溶かさなくてはならないため、合成には非常に多くのエネルギーを使います。また、できあがったサファイアの結晶は非常に硬く、その加工にはダイヤモンドを使う必要があるなど、高コストになる要因が多く、結果として材料としての単価は、化学ガラスなどと比べて非常に高くなるというデメリットもあります。
しかしながら、先に挙げたような、他の素材にはないメリットがあります。そのため、現在ではハイテク部品に欠かせない素材の1つとなっているのです。