ケータイ用語の基礎知識

第622回:Sailfish OS とは

 「Sailfish(セイルフィッシュ) OS」とは、スマートフォン用のOSの1つです。かつてノキアで開発されていた、「MeeGo OS」に携わっていた元社員らが設立した“Jolla”というベンチャー企業と、Merプロジェクトの提供するモバイル端末用のOSです。

 第一弾としてスマートフォン用のOSを2013年末にリリースすることが目標とされています。ちなみにSailfishとは英語で、大型の魚類のひとつ「バショウカジキ」を意味しています。

 もとになった「MeeGo OS」は、インテルとノキアが共同開発したスマートフォン用OSです。インテルの「Moblin」とノキアの「Maemo」を統合したオープンソースのLinuxベースのモバイルOSです。2010年の発表当初は、iOS、Android OSに対抗できる勢力として期待されていました。その後、ノキアは、2011年になってマイクロソフトと業務提携を行い、今後のスマートフォンの主軸をWindows Phoneにすると発表しました。そして、ノキアでMeeGoの開発に携わっていたメンバーらはスピンアウトし、このSailfish OSを作ります。

 Sailfish OSを後押しする企業群、Sailfish Allianceにはフィンランドの通信事業会社であるDNAや、モバイル機器向け製品に強い半導体メーカーのSTエリクソン、ノキアからQtの全事業を譲り受けたフィンランドのDigiaなどが参加しています。

JollaのWebサイトで紹介されているSailfish OS搭載スマートフォン

 最初のSailfish OS対応のスマートフォンは、DNAからリリースされる予定になっています。

 なお、残されたMeeGoに、Linux Mobile Foundationの提供するLiMo Platformをミックスしブラッシュアップしたものが、これもスマートフォン第3のOSとして期待されている「Tizen」となっています。

アプリはC++とQMLで作成、Androidアプリも動作

 Sailfish OSとSailfish SDK(ソフトウェア開発キット)は、かつてノキア、インテル、Linux Foundationで開発していた「MeeGo」のMerコアと各ツール類から構成されています。

 グーグルのAndroidやアップルのiOSと異なる部分としては、マルチタスクユーザーインターフェイスが用意されており、さまざまなアプリを同時に操作できる、ということが挙げられます。

Sailfish OSのサイトで案内されているアーキテクチャーのイメージ

 Sailfish OSは、ざっくり言うとLinuxベースのモバイル向けOSです。ベースとなったMeeGoからは、「Qt」という名前のフレームワークを受け継いでいます。Qtは、C++で書かれたフレームワークで、Linux、あるいはUNIX上のX Window System、Windows、Mac OSなど、さまざまなプラットフォーム上で動くアプリケーションを作成できます。

 Sailfish OSでは、電話機能やメッセージング、カメラなどの機能が搭載される階層(レイヤー)と同じ階層でサードパーティ製のアプリケーションが稼動できるようになっています。ユーザーによるプログラミングももちろん可能で、ソフトウェア開発キットは無償で、Sailfish OSのWebサイトから配布されています。

 Sailfish OS用のアプリケーションは、C++とQMLを組み合わせて書く、あるいはHTML5で作成することが可能です。ちなみに「QML」とは、QTフレームワークによって提供されるアプリ開発用の言語(宣言型UI言語、高レベルのスクリプト言語)です。QMLのコマンドを使えば、パワフルなQtライブラリを使ったアプリを手軽に実装できる、とされています。

 このほか、Sailfish OSでは、Androidアプリも動作します。オープンソースのAndroidライブラリを利用して実現しているとされています。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)