第577回:AirPrint とは

大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我 ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連の Q&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 「AirPrint」は、2010年11月からAppleのiOS 4.2以降で利用できるようになった、ワイヤレス印刷の仕組みです。iPhoneやiPadなどiOS搭載のデバイスから、ネットワーク上にある対応プリンタを自動的に検出して、写真やメール、Webページなど、画面に表示されているものを簡単に印刷することができます。

 iPhoneやiPadなどで「AirPrint」を使うには、ソフトウェアのダウンロードや、ドライバーソフトのインストールは必要なく、数回画面をタップするだけで、印刷できます。「AirPrint」対応のプリンタは、既に数機種が発売されています。

 

設定なしの無線印刷

 それでは「AirPrint」の仕組みですが、たとえば、家庭内にWi-Fi(IEEE802.11b/g/n)のアクセスポイントが用意され、そのネットワークに、iPhoneやiPad、そしてプリンタがある状況で考えてみましょう。

 このネットワーク上でiPhoneなどのデバイスは、iTunesなどでも使われているサービス「Bonjour」(事前設定なしで機器同士を繋げる)で、機器(サービス)を探し、「AirPrint」対応プリンタと接続します。

 そしてiOS端末から、IPP(Internet Printing Protocol)と呼ばれるTCP/IPネットワークを利用して、プリンタに印刷の指示を出すようになっています。Wi-Fiの電波さえ届けば、部屋にいてWebブラウジングをしながら、別の部屋のプリンタでWebページを印刷する、というような芸当も可能なのです。

 ちなみに、印刷の指示はiPhone、iPad内ではバックグラウンドタスクとして行われるので、印刷が終わるまで待つ必要がありません。その代わり、タスクバーの左端に「プリント」が表示されます。これをタップすると部数など印刷の状況を確認できますし、印刷をキャンセルすることもできます。

 プリントを開始したらiPhoneの画面は、すぐ直前まで見ていたところへ戻って、作業を中断することなく、Webブラウジングや写真閲覧などの続きを楽しむことができます。なお、AirPrintは、iPhone、iPad標準で搭載されているSafari(ブラウザ)、メール、それにiWork、iBooksに保存されているPDFなどで利用できます。

 AirPrintを使った具体的な印刷の手順を見てみましょう。AirPrint対応アプリでは、iPhone、iPadなどの画面一番下の矢印ボタンをタップするとメニューオプションが表示されます。そのメニューオプションのリストには「プリント」という項目が表示され、選択します。

 AirPrint対応プリンタが、同じWi-Fiネットワーク上にいる場合、「プリンタを選択」すると、既にそこにはプリンタの機種名が表示されています。そこで「プリント」ボタンをタップすれば、プリンタからiPhoneで表示しているものを印刷することができるわけです。

 ちなみに、用紙サイズや印刷範囲、濃度などの情報はアプリ側が自動的に選ぶので、ユーザーが設定することはありません。写真をプリントする時、プリンタに写真用紙用の用紙トレイがついていれば、「AirPrint」は自動的にそれを選び、A4用紙では印刷しません。逆にメール、SafariなどはA4用紙を選んで印刷されます。

 仕組み上、「AirPrint」で印刷をするには、アプリも「AirPrint」に対応している必要があります。アップル純正アプリだけではなく、サードパーティ製アプリでも「AirPrint」に対応しているものが既にいくつか存在しています。

 




(大和 哲)

2012/8/28 11:40