第504回:Wi-Fi Direct とは
「Wi-Fi Direct」は、「Wi-Fi」に代表される無線LANの普及促進団体、Wi-Fiアライアンスが策定した仕様です。アクセスポイントがなくても、無線LAN搭載の携帯電話、タブレット、パソコン、デジタルカメラカメラ、プリンタ、携帯用ゲーム機などデバイス同士を無線で接続できるというものです。
2010年10月から、このWi-Fi Direct対応機器の認証がWi-Fiアライアンスによって始められています。この認証ではパソコン向けCPUなどを製造している米国インテルの「Centrino Advanced-N 6200」、通信チップメーカーのAtherosの通信カードモジュール「XSPAN Dual-band 802.11n PCIe Mini Card(AR928x)」、Broadcomの「BCM43224 Dual-Band 802.11n 2x2 MIMO PCIe Half Mini Card」などが認定を受けていることから、パソコンやスマートフォン、タブレットなどで、この機能に対応した機器の登場が予想され、いずれは日本市場でも対応機器が取り扱われるようになると考えられます。
世界で見ると、韓国Samsung製の新Androidスマートフォン「Galaxy S II」が、このWi-Fi Directに対応することを表明しています。2月にスペインのバルセロナで開催された展示会「Mobile World Congress 2011」のSamsungブースでは、ギャラリー機能からWi-Fiダイレクト対応機器を検索し、この機能を使って、画像を直接送信するようなデモが実施されていました。このように携帯電話からタブレットやゲーム機器などへのデータ転送や同期、アプリケーションの転送などの用途に使われることになるでしょう。
これまで携帯電話では、1対1通信といえば赤外線やBluetoothによるものが一般的でしたが、さらにその選択肢が増えることになりそうです。しかも、Wi-Fiですから、54Mpbsなど高速での通信が可能になるのです。
■Wi-Fiをそのまま使ったP2P接続方法
デバイス同士を直接結ぶWi-Fi Directは、全く新しい通信方式というわけではありません。実際には、これまで使われている無線LANの規格をそのまま使っています。
Wi-Fiの規格としては、5GHz帯の電波を使い、最大54Mbpsの通信ができるIEEE802.11a、現在最もよく使われる2.4Ghz帯で54Mbpsの速度を実現したIEEE802.11g、4×4MIMOを利用して最大600Mbpsの通信が可能なIEEE802.11nの無線通信の仕組みをそのままPeer to Peer(P2P)接続に利用しています。
セキュリティ接続に関しても、たとえばWPA2のような通常Wi-Fiで使われているものがそのまま使用できます。Wi-Fi Protected Setup(WPS)と呼ばれる、これまでもあったWi-Fiのセキュリティの設定を簡単に実行するための仕組みを利用することも可能です。
アクセスポイントなしで、1対1であるいは、複数台のデバイスで同時に接続することもできます。
接続方法は簡単で、先述したGalaxy S IIのデモのように、インテントで、あるいはデバイスについているボタンを押して通信開始を指定することで、接続可能な他のデバイスを探し、自動的に接続できます。これまでWi-Fiで可能だったアクセスポイントの検索と同じ仕組みで、Wi-Fi Directでも接続可能なデバイスを探すことが可能となっているのです。
接続待ちの状態だった場合は、他のWi-Fi Direct対応機から接続に「招待」される場合もあります。ユーザーは、この招待に応えて接続するかどうかを選択可能です。ただし、グループ接続への招待機能は全てのWi-Fi Direct対応機器にあるわけではなく、オプションの機能になっています。
Wi-Fi Directにはオプション、つまり機器によって対応してもしなくてもよい機能が多くあります。たとえば、Wi-Fi Direct Deviceで複数のグループのメンバーシップを同時に維持できる「複数グループ機能」、前に接続されたグループをあらためて再確立することなく作ったままにできる「永続グループ機能」などがそれにあたります。
ちなみに、1対1通信でもグループ接続でも、1台のデバイスがWi-Fi Directに対応していれば、もう一方は対応していない通常のWi-Fiのみ対応の機械でも接続、通信が可能とされています。非対応機器からすると、Wi-Fi Direct対応機器は、通常のインフラストラクチャモードのアクセスポイントに見えるというわけなのです。
2011/2/23 12:50