第503回:Android 3.0 Honeycomb とは

大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我 ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連の Q&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 「Honeycomb」は、蜂の巣を意味する英単語です。モバイル機器向けソフトウェアプラットフォームである「Android」は、開発バージョンごとに代々、お菓子の名前が付けられています。最新版であるバージョン3.0のコードネームは「Honeycomb」と名付けられました。

 Androidの開発コードネームの命名の背景について、詳細は公表されていません。マレーシアを中心とした東南アジアには材料にミルクの代わりにコンデンスミルクを使って焼いたスポンジケーキの「蜂の巣ケーキ」がありますので、この辺りから「Honeycomb」と名付けられたのかもしれません。

 

新規のユーザ向け機能

 今回紹介する「Android 3.0 Honeycomb」は、主にタブレット向けに最適化されたバージョン、という点が特徴の1つです。

 Androidはもともと、QVGAやHVGAなどの小さな画面でも使えるようにデザインされてきたユーザーインターフェイスを採用していましたが、最近では7インチや10インチといった大画面かつ高解像度のタブレットなどのデバイスに対する要求も高くなってきています。そこで、これらのデバイス向けアプリケーションに合うよう、あらためてデザインされたわけです。

 そのようなわけで、「Honeycomb」では、目で見える範囲において以前のバージョンから最も大きく変更されるのは、そのユーザーインターフェイスデザイン、ということになります。

 これまでのAndroidとは違い、広い画面を贅沢に使い、ホログラフィックUI(ユーザーインターフェイス)と呼ばれる、3次元的なユーザーインターフェイスデザインが採用されています。ホーム画面には、従来より大きなウィジェットを置けるほか、設定画面などでもこれまでのリスト画面から、大項目-小項目と二段組みでリストが表示できるようになりました。

開発者向けに先行公開されているAndroid 3.0 SDK(ソフトウェア開発キット) Preview 1版のエミュレータで表示したAndroid 3.0 Honeycombの画面ホーム画面の構成が変わりホログラフィックUIが採用されているほか、設定画面の2段構成リストなど、大画面をリッチに使っている

 ホームスクリーンは、これまでと異なり、画面上部にあったバッテリー残量表示など「システムバー」として画面下部に表示されるようになりました。表示エリアの余裕を活かし、メール到着の通知なども従来のアイコン表示だけでなく、ポップアップ表示などがされるようになっています。

 ほかにも、ホームスクリーンは、従来より大きなウィジェットを表示して複数サイトのニュースが表示されるようになるなど、より柔軟なカスタマイズが可能になっています。従来のAndroidでも可能だったように、これらの動きにバイブレーションも加えて、デバイスとユーザーとのインタラクティブ感を持たせることもできます。

 

技術的な変更箇所

 ユーザーインターフェイス以外の変更点としてわかりやすい点はいくつかの機能強化が挙げられます。たとえば「最近使ったアプリの履歴表示」「ビジュアルなマルチタスク」「キーボードの再デザイン」「テキストのコピーペースト機能の強化」「ブラウザ・カメラ・ギャラリー・連絡帳・メールアプリのアップデート」などがあります。

 また、デバイス管理用アプリケーションの開発者は、ストレージの暗号化、パスワードの有効期限、パスワードヒストリー、パスワードに複雑な文字を含むかなど、新たなポリシーをサポートできるなど、セキュリティ面も改善されています。

 技術的な部分でも、Android 3.0 Honeycombは、いくつかの変更が加えられています。そのなかでも、特にゲームなど、ハードウェア能力が必要なソフトの開発者にとって嬉しい変更点は、グラフィック関連の改良でしょう。

 Honeycombでは、新しいアニメーションフレームワークを採用し、2Dグラフィックは、ハードウェアとしてアクセラレーションを搭載していれば、それを利用することでメインCPUに負荷をかけずに表示できるようになります。

 タブレットサイズのデバイスでは、画面解像度も高く、そのグラフィックを生かすためにグラフィックアクセラレーターだけでなくCPUパワーも高い部品を採用する傾向なります。グーグルでは、Honeycombにおいてカーネルをマルチコアプロセッサアーキテクチャーに最適化したとのことで、大画面のハイエンドデバイス向けバージョンであると言えます。

 

従来型アプリも手軽に新UI対応に

 Android 3.0では。タブレットなどに向けて、新たなユーザーインターフェイスがデザインされました。その一方で、スマートフォンなど、より小さな画面サイズ向け、あるいは旧バージョン向けに開発されたアプリケーションには、互換性が保たれています。

 ユーザーインターフェイスにおいて大きな変更が加えられながらアプリケーションの互換性を保つのに、さほど苦労しないというのも、Honeycombの特徴の1つに挙げられるかもしれません。

 Honeycombだけの機能を使うには、専用のプログラム(コード)を書く必要がありますが、従来バージョンのアプリケーションと同じ機能を備えながらユーザーインターフェイスだけはHoneycomb風にするには、アプリケーションを作成する際、そのアプリの概要を説明するXMLファイル(マニフェストファイル)で、属性を1つ追加するだけとなっているのです。

 こうした、アプリの互換性については、グーグルが日本において開催した報道関係者向け説明会でも強調され、特に重視されているようです。

 



(大和 哲)

2011/2/15 15:22