ケータイ用語の基礎知識

第858回:Lアラート とは

 「Lアラート」は、自治体などが発する地域(ローカル)の災害情報を集約し、テレビ、ネット、携帯電話などで一括配信する仕組みです。災害情報共有システムとも呼ばれます。多くの人にとって、災害時の安心・安全に関する情報をスピーディに伝えられるように整備されています。

 マルチメディア振興センターが運営しており、テレビのデータ放送やラジオのほか、スマートフォンのエリアメールや、たとえばYahoo!防災速報、goo防災アプリといった防災情報アプリへ提供されます。

 2018年5月現在、福岡県を除く46都道府県で、Lアラートへの避難情報発信システムが既に運用されており、これらの地域で災害があった場合、地域にいるこれらの機械に緊急速報が配信される仕組みができています。

もともとは地デジデータ放送の活用

 もともとLアラートは、地上デジタルテレビ放送のデータ放送の活用を念頭に開発されました。

 2005年の愛知万博にあわせ情報を配信するための共通フォーマットが策定されました。それが、TVCML研究会によって、汎用的な情報伝達ができるようなXMLフォーマットに修正されたものが元になっています。

 当時は、携帯電話のエリアメールや、アプリのプッシュ配信と言った個向けの一斉情報配信手段がまだあまり知られていなかったため、地上波デジタルテレビのデータ放送でより速く詳細に、災害などの公共情報を伝えられることが想定されていたのです。

 一方、総務省では2008年、「地域の安心・安全情報基盤に関する研究会」で公共情報を共有する基盤の必要性や要件等を研究し始めました。これが先ほどのデータ放送配信などと統合され、一般財団法人であるマルチメディア振興センターによって、「公共情報コモンズ」として運営されるようになりました。

 2014年にはJアラートと一対になった運用を進めるために改称したのが現在の「Lアラート」になります。現在のLアラートは、災害の発生時に自治体などから提供された情報を「携帯電話」「データ放送」で提供するようになっています。

現在も対象は拡充中

 Lアラートは、都道府県などの自治体が災害を検知した場合「Lアラート」に専用回線で、コモンズネットワーク、LGWAN(Local Goverment Wide Area Network)に発信されます。

 コモンズネットワークには、全国にコモンズノードシステムと呼ばれるシステムがあり、ここがLアラート専用のXML形式で書かれたデータを各種標準形式(配信先によってTVCMLやメール、SOAPなど)に変更します。

 コモンズネットワークには自治体配信情報(避難勧告や避難指示)、Jアラート配信情報(弾道ミサイル・航空攻撃情報)、気象情報など(指定河川洪水予報・地震の震源震度に関する情報)などが流れます。ノードからは、放送事業者、携帯電話事業者、災害アプリを運用するポータル事業者らとVPN、あるいはインターネット経由で繋がっています。

 ここでたとえば「○○県西部に大雨・土砂災害の恐れあり」などというような情報が流れると該当地域の放送データ、携帯電話の一斉配信メール、アプリのプッシュ配信などの形で流されるようになっています。

 情報発信は、市町村、都道府県、それに中央省庁である消防庁、気象庁からも行われます。消防庁から発信されるのが「Jアラート」で、気象庁からは「気象情報」が配信されます。

 Jアラートも、大雨災害警報も、スマートフォンなどでは同じエリアメール・緊急速報メールやプッシュでの配信ですので、混同されやすいのですが、配信元は別です。

 将来的には、通信電気ガス交通などのライフラインからもLアラートに緊急情報の収集を、また、サイネージやカーナビなどへの拡充が予定され、現在も対象が増え続けています。実際に、2017年10月からは東京電力のエリアにおいては「停電発生状況」が東京電力パワーグリッドから提供され、停電が発生した市町村(政令市は区単位)で停電情報が提供されるようになっています。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)