ケータイ用語の基礎知識

第823回:プロビジョニングとは

SIMに通信に必要な情報を書き込む

 「プロビジョニング」とは、ネットワークなどの設備を使えるように準備しておくことです。携帯電話・スマートフォン関係の用語としては、“SIMカードに携帯電話のネットワークに通信するために必要な情報を書き込むこと”を指します。その名は、英語で「食料などを供給する」といった意味の“provision”が元になっています。

 SIMカードには、携帯電話のネットワークに接続するため、必要なデータが書き込まれています。具体的には、「ICカード識別番号(ICCID、Integrated Circuit Card ID)」「国・地域と事業者識別番号(MCC/MNC、Mobile Country Code/Mobile Network Code)、「携帯電話番号(MSISDN、Mobile Subscriber Integrated Service Digital Network Number)」などです。

 携帯電話のネットワークでは、それぞれの機器がMNCを確認して自分のネットワークを使って通信してよいか、あるいはMSISDNなどのデータベースを参照して現在の契約状態でアクセスしていいかなどを判断します。

 逆に言えば、これらの情報がSIMに書き込まれていないと回線を利用できないわけです。これらの情報を書き込む作業を「プロビジョニング」といいます。

 キャリアショップで携帯電話を購入したときや、量販店のカウンターで即時開通の通話SIMを購入した場合、SIMカードを台紙から外す前に何か機械にいれてデータを書き込んでいるところを見たことがある方もいるかもしれません。このときに、プロビジョニングは行われています。

 プロビジョニング装置は、携帯電話事業者のデータベースなどとも連動しており、たとえばSIMに書き込んだMSISDNはこれだよ、ということなどを通知します。これによって、新しくプロビジョニングを行ったSIMカードを使って通信できるようになるのです。

 なお、通常、ICCIDはカード固有の番号ですのでカードが作られた時点で決まっており、通常のプロビジョニングでは書き込みは行いませんが、テスト用のSIMカードなどではICCIDをプロビジョニングで変更する、というケースもあるようです。

遠隔操作でプロビジョニングする「eSIM」

 従来のSIMカードと異なり、遠隔操作でプロビジョニングができるSIMも存在します。それがeSIMと呼ばれるものです。

 「第676回:eSIMとはで解説したように、従来のSIMカード型のほかにチップ型も存在します。遠隔操作でプロビジョニングが可能であれば抜き差しが不要なため、ICチップにしてもいいわけです。このような形状であれば、SIMトレイや開閉口も不要となります。

 遠隔操作でプロビジョニングするための仕様は、世界中の携帯電話事業者が加盟する「GSMA」によって策定されています。その仕様「Remote SIM Provisioning Version 2.0」では、M2M向けとして一斉にプロビジョニングを行う方法と、1台1台の端末からプロビジョニングを求める方法という2つのやり方が定義されています。このうち後者は、主に、IoTデバイスやウェアラブル端末、タブレットなどのデータ通信を行う機器で使われることが想定されています。

 国内でもNTTドコモやソフトバンクといった携帯電話事業者が運用を開始しています。たとえばソフトバンクでは、「Remote SIM Provisioning Version2.0」仕様に沿ったeSIM対応機器として、「Apple Watch Series 3」の GPS+Cellularモデルを提供しています。「Apple Watch Series 3」の GPS+Cellularモデルでは、購入した際には内部のeSIMには回線をつかうためのプロファイルが記載されていません。親機として使うiPhoneの「Watch」アプリを利用して、iPhoneで回線契約している事業者の情報をApple Watch内のeSIMにリモートプロビジョニングし、契約情報、通信ネットワーク接続に必要な情報を登録することで、回線が利用できるようになるのです。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)