ケータイ用語の基礎知識
第821回:ASSP とは
2017年9月5日 13:48
「ASSP」というワードをご存知でしょうか。今回紹介する「ASSP」とは、LSIの一種です。その名前は、「特定応用向け汎用品」を意味する英語“Application Specific Standard Produce”から来ています。
スマートフォンをはじめとする製品では、その分野でよく使われる機能が存在します。たとえば、液晶ディスプレイには画像を表示するという機能があります。画面表示では、単純に画像を表示するだけではなく、たとえば輪郭を強調したり、色合いをビビッドにしたりするといった画像処理を行います。
また最近では、「スマートフォンにAI専用プロセッサを搭載する」というような話も出てきています。画像処理に特化したLSIや、アプリ用CPUなども、スマートフォンに必要な作業をするLSIです。こうした特定の応用に向けた汎用LSI(使い方は限られているが、どの企業でも使える)のことを「ASSP」と言います。
共通処理をLSI化、外販しコストを下げる
かつては、画像処理やエンコード、デコードといった作業も自社で開発し、LSIにパッケージ化、あるいはDSP用のプログラムとして搭載するということが、よく行われていました。
しかし、似たような処理を自社で開発するのはそれなりにコストがかかります。それならば、他社から買ってきた方が早い、それも場合によっては自社で開発するより優秀な処理が利用できるという発想がでてきたのです。
自社製品では必要ないような余分な処理があったとしても、有力企業から買ってきた方が安くつくという事例はよくあります。
優秀な処理をウリにしているメーカーとしてみても、他社に販売できれば単価を安くできます。しかも複数のメーカーに対して供給できれば、その分、生産個数を多くでき、さらに1個辺りのコストを下げて競争力を上げられるわけです。
同じような機能を持つASSPが複数の企業から出ていることもよくあります。たとえば、アプリケーションプロセッサーもそうした製品です。ARM社の技術を使った互換プロセッサーは数多く存在しています。この場合、同じ命令を利用したプログラムでも、より安価、あるいはより高速な実行ができるCPUや、より省電力で実行したり周辺の機能を取り込んでいたりするといった特徴がそれぞれのASSPにあります。一口にARM互換プロセッサーといっても、それぞれの特徴からすみ分けていたり、あるいはあるメーカーのものが圧倒的なシェアを持っていたりすることもあります。
よく似たカテゴリーに「ASIC」と呼ばれるLSIもあります。これも特定用途向けLSIのことですが、ASSPのように同じ機能を複数の会社に売るのではなく「特定の機能をあるメーカー(製品)向け専用に作る」LSIのことです。一種類の機能を大量に必要とする場合、ASSPのように汎用品を使うより、専用部品のほうが設計は楽で、コストも安く付くという場合があるのです。
ASSPとASICのどちらを使用するか(あるいは論理回路など汎用ICを利用して回路を組んでしまうということもありますが)は、、メーカーや製品の設計次第で、場合によっては、ASSP、ASIC両方を利用する、というようなことさえもあります。