俺のケータイ of the Year

AQUOS PHONE ZETA SH-02E

AQUOS PHONE ZETA SH-02E

法林 岳之編

 スマートフォンが拡大し、定着し始めた国内市場だが、今年発売されたモデルを振り返ってみると、スマートフォンであるがゆえの難しさも見え隠れするようになってきた。たとえば、デザインはスレート状のデザインが中心であるため、ぱっと見の印象がどうしても似通ってしまい、各社の新モデルをズラリと並べた写真を見てもどれがどれなのかがすぐにわからなくなってきている。プラットフォームもiPhoneを除けば、Androidが圧倒的に大多数を占めているため、どうしても機能的に似通ってしまい、なかなかユーザーが選びにくい状況になってきたのも気になる点だ。

 また、ハードウェア面ではいよいよフルHD表示が可能なディスプレイを搭載するモデルが登場してきたが、その一方で、シャープのIGZOのように、スマートフォンの省電力性能を大きく改善できるディスプレイも登場し、2013年以降のディスプレイ競争の激化を予想させる状況になりつつある。

 逆に、メーカー間の競争があまり激しくない中で、かなり大きな課題を残したのがCPUだろう。今年の夏モデルでは各社の主力モデルに搭載されるはずだった米クアルコム製Snapdragon S4の供給が大幅に遅れたため、端末メーカーはカラーバリエーションを減らしたり、新モデルの投入を見送るという前代未聞の事態に陥った。秋モデル、冬モデルでは状況が改善し、供給問題はほぼ解消されたが、これだけ市場に大きな影響を与えたのであれば、本来はもっと責められるべきであり、直接、一般消費者を相手にしていないとは言え、米クアルコムは市場に対し、何らかのコメントを出すべきではなかったのだろうか。

 端末メーカーからのコメントという点では、米アップルが一連のiOS 6向け地図騒動に対し、同社CEOのティム・クック氏の謝罪が思い出されるが、スマートフォンではキャリアだけでなく、端末メーカーやサービスプロバイダが大きな役割を担うため、その分、今後は市場でも大きな責任を求められることになってくるだろう。

 そんな状況を踏まえ、2012年の端末を振り返り、個人的に印象に残ったものをピックアップしてみよう。まず、NTTドコモでは、これまでのスマートフォンにはない『ペン』という新しいスタイルを提案したサムスン電子の「GALAXY Note SC-05D」と「GALAXY Note II SC-02E」、防水防じんに加え、耐衝撃性能を実現しながら、スマートなデザインにまとめたNECカシオ製「MEDIAS U N-02E」、スタンダードなデザインながら、豊富なカラーバリエーションとキャプレス防水を実現したLGエレクトロニクス製「Optimus it L-06D」が挙げられる。なかでもGALAXY Note IIはエアビューやマルチウィンドウなど、ユーザービリティの面でも新しいチャレンジをしており、今後の展開が注目される。

 auでは初のフルHD液晶を搭載したHTCの「HTC J Butterfly HTL21」、耐衝撃性能と唯一無二の個性を発揮するNECカシオの「G'zOne TYPE-L CAL21」、オトナ向けのデザインと機能を備えた京セラの「URBANO PROGRESSO」、IGZOによる新世代ディスプレイを搭載したシャープの「AQUOS PAD SHT21」などが挙げられる。ただ、端末よりも4G LTEサービスのエリア展開の早さなどが目立つ印象で、auならではの個性を持つ端末が今ひとつ打ち出されていないことが気になる。

 ソフトバンクについては、定番の強みをキープし続けるアップルの「iPhone 5」、放射線測定機能を搭載した「PANTONE 5 107SH」、リードデバイス以外ではもっとも早くAndroid 4.0搭載を実現した「AQUOS PHONE 104SH」などが挙げられる。他社に比べ、モデル数が少ないことが気になるが、そんな中でもPANTONE 5 107SHのように、他社にはないモデルをラインアップしてきたことは評価できる。

 これらの状況を鑑みて、最終的に筆者が「俺のケータイ of the Year」として、選んだのは、NTTドコモのシャープ製端末「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」だ。改めて説明するまでもないが、IGZOによる液晶ディスプレイはこれまでのスマートフォンと明らかに一線を画した省エネ性能を持ち、同社の省電力技術「エコ技」との相乗効果により、スマートフォンの不満として、もっとも多く挙げられてきたバッテリーの持ちを大幅に改善したことが挙げられる。それ以外にも「文辞技」や「クイックツールボックスEX」など、シャープならではの工夫もしっかりと盛り込まれており、使い込んでいくほどに楽しめるスマートフォンに仕上げられている。ストラップ穴がないなど、不満点がないわけではないが、長く使いたい、快適に使いたいというユーザーの思いにしっかりと応えてくれた「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」に、2012年の「俺のケータイ of the Year」を贈りたい。

法林岳之