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「Nexus 5」ファーストインプレッション

「Nexus 5」ファーストインプレッション

“自由”も手に入る、高機能で低価格なAndroidスマートフォン

 グーグルは、10月31日(米国西海岸標準時)、Nexusシリーズの最新モデルにあたる「Nexus 5」を発表した。同日から、Google Playでの発売も開始している。また、11月1日にはイー・モバイルがNexus 5を取り扱うことを表明した。こちらのハードウェアはGoogle Play版とまったく同じで、SIMロックもかかっていない。唯一の違いは、Google Play版がイー・モバイル網(ソフトバンクの回線も利用する「EMOBILE 4G-S」)に接続できないのに対し、イー・モバイル版はそれが可能であるということだ。予約は発表日の1日から行われており、15日には発売が始まる。

Android 4.4を搭載したNexus 5。15日より、イー・アクセスからも発売される

 筆者は、このNexus 5を初日に購入(11月1日に注文して3日に届いた)して、1週間程度、国内外で使用してきた。ここでは、そこから見えてきたファーストインプレッションをお届けしたい。

ハイエンドモデルと比べても見劣りしないスペック

 まずは、「Nexus 5」という端末の位置づけや、スペックを確認していこう。Nexusシリーズは、グーグルがリードデバイスと呼ぶ端末だ。以前は開発者向けのリファレンスという色合いが濃かったが、最近ではグーグルのサービスを体験するための最良のモデルというように、立ち位置をやや変えている。“ベストなグーグル体験”を実現するために、OSのアップデートも適用されるタイミングが非常に早い。Nexus 5には最新のAndroid 4.4(KitKat)が搭載されているが、「Nexus 7」や「Nexus 4」などのアップデートも始まっている。

 Androidは、OSをメーカーがカスタマイズした上で、1つの製品に仕上げている。メーカーによって、ユーザーインターフェイス(UI)や搭載されている機能がまちまちなのは、そのためだ。一方のNexusシリーズには、いわゆる“素のAndroid”が搭載されている。逆に言えば、このシリーズのUIがAndroid標準というわけだ。比較的変化の少なくコードネームも同じJelly BeanだったAndroid 4.1~4.3までとは異なり、UIはAndroid 4.4で一新した。UIなどのソフトウェア面については、後述するのでそちらを参照いただきたい。

OSには、Android 4.4を採用する。バージョン名のKitKatは、お菓子メーカーとのコラボでも話題を集めた
UIは、いわゆる“素のAndroid”となる。これがAndroid純正のUIだ

 これまで登場してきたNexusシリーズのスマートフォンは、リードデバイスということもあってか、同時期に発売された端末より、ややスペックが抑え目だった。たとえば、Nexus 4についてはOSこそ最新だったが、LTEには対応していなかった。海外での発売時期が昨年11月ということもあり、仕方のない側面もあるが、ディスプレイも4.7インチ、1280×768ドットで、サイズや解像度は今年に入ってから発売されたハイエンド端末と比べると見劣りする。

 対するNexus 5はLTEに対応し、ディスプレイも4.95インチ、フルHD(1920×1080ドット)と精細になった。これに伴い、バッテリーも2300mAhに増えている。背面に搭載されたカメラはNexus 4と同じ8メガピクセルながら、光学式手ぶれ補正に対応している。チップセットは最新の「Snapdragon 800シリーズ」で、2.26GHzで駆動するパフォーマンスの高さもポイントと言えるだろう。

ホワイトの背面は、サラっとした仕上がりで指紋がつきにくい。ブラックはマットでゴムのような手触りがあり、カラーで質感も変えている
正面向かって右側面には、電源ボタンとSIMカードスロットを搭載する。SIMカードスロットは、ピンで押し込んで引き出す
左側面には、音量ボタンが搭載されている
本体上部には3.5㎜のイヤホンジャックが、下部にはmicroUSB端子を備える。スピーカーも、本体下部にある

持ちやすく、トップクラスのレスポンス

 4.95インチというと、サイズが大きくて持ちづらいと思われる向きもあるかもしれないが、Nexus 5は非常に持ちやすい。LGの技術を駆使した狭額縁設計になっているうえに、背面の左右がキレイにラウンドしているからだ。筆者はディスプレイのサイズがほぼ同じ「Xperia Z1」を常用しているが、比べてみると、「Nexus 5」の手にフィットする感覚は抜群だ。持ったときの感覚としては、夏モデルとしてドコモから発売された「GALAXY S4」と同等か、それ以上に持ちやすい印象を受けた。

手にフィットするため、4.95インチと画面は大きいが、文字は打ちやすい
持ち方を少し変える必要はあるが、片手でも画面の上まで親指が届くのはうれしい

 こうしたベゼルの狭さと薄さが相まって、片手で持っても画面の上までギリギリ親指が届く。Androidは通知が画面上部にあるうえ、ここから設定用の各種ボタンを呼び出せる。アプリでタブが上部にあるものも多い。そのため、片手で持って親指がきちんと画面の上に届くのかというのは重要な要素だ。この点に関しては、Nexus 5は合格点に達していると言えるだろう。

ベンチマーク(「Antutuベンチマーク」で測定)でも、良好な結果を得られた

 最新のチップセットを搭載して、メモリ(RAM)も2GBと余裕があるため、レスポンスも非常にいい。軽快に動き、スクロールを高速でしてもきちんと指の動きに画面が追従する。細かな点では、タッチに対するバイブでのフィードバックもほどよく、気持ちよく操作できる。ベンチマークの結果も他のハイエンド端末と並ぶ。ただし、ここまでのスペックだと、スコアの高さと操作性の相関関係は弱くなる。どちらかと言えば、OSの性能が上がったことや、OSやハードウェアのチューニングをしっかりしていることの方が重要だ。その点でも、Nexus 5は非常に優秀だと断言できる。

「Google Now」が呼び出しやすくなり、より親切になったAndroid 4.4

 この最新のハードウェアの上で動くのが、KitKatとのコラボでも話題になったAndroid 4.4だ。見た目の特徴を挙げると、まずアプリのアイコンが大きくなったことに気がつくだろう。アンテナマークや電池マークのピクト表示があった画面上部と、3つのキーが置かれている画面下部の両方が透過になったことで、画面が広く感じられるようになったのも、Android 4.4での変化だ。

左のNexus 4(Android 4.3)と、右のNexus 5(Android 4.4)を比べると、アイコンが大きくなっていることが分かる。また、上下の黒帯も透過になり、画面から広々とした印象を受ける

 ホームアプリは、Gmailや位置情報などの各種履歴に基づき、乗り換え案内や天気などをプッシュで配信する「Google Now」が呼び出しやすくなった。今までは、ホームキーを上方向にフリックすると起動していたが、Android 4.4からはホーム画面の一番左に置かれるようになった。基準となるホーム画面の左にGoogle Nowがあり、追加の画面は右に配置される。

ホーム画面の左に、Google Nowが配置され呼び出しやすくなった。従来どおり、ホームボタンを上方向にフリックしてもよい

 アプリのショートカットやウィジェットを置く「ホーム画面」と、アプリ一覧の「ドロワー」という2段構成は、従来のAndroidと同様だ。ただし、ウィジェットの配置方法は変更になっている。Android 4.3までは、アプリのドロワー上部に「アプリ」と「ウィジェット」のタブがあり、そこで2つを切り替えることができた。対するAndroid 4.4は、ドロワーの中にアプリしかない。ウィジェットは、ホーム画面を長押しして呼び出す仕組みだ。この画面から、壁紙の変更や設定メニューを表示させることもできる。

Android 4.4から、ウィジェットの配置方法が変わった

 メーカーが自社ブランドで開発するAndroid端末では一般的な、通知上のボタンは非搭載だ。ただし、通知を引き出し、右上に表示されるボタンをタップすると、設定ボタンが現れる。ここには、「Google+」のプロフィールや、「画面の明るさ」「設定」「Wi-Fi」「モバイル通信の電波マーク」「電池残量」「機内モード」「Bluetooth」「現在地」の9つが表示されている。機内モードはタップするとオン・オフを切り替えることができ、それら以外は設定画面に移動する仕組みだ。Wi-Fi、Bluetooth、現在地については、長押しで直接オン・オフを切り替えられる小ワザも覚えておきたい。

通知はシンプルだが、ボタンを押すと設定用のパネルが現れる
ホームアプリをインストールしていると、設定メニューに「ホーム」が加わる。ここで、ホームアプリの変更や削除が可能だ

 Google Playからダウンロードしたホームアプリをインストールすると、「ホーム」という項目が設定に加わる。これもAndroid 4.4の機能だ。従来のAndroidでは、一度デフォルトに設定してしまったホームアプリを変更するのは、少々手間がかかった。アプリの一覧から該当するホームアプリを探し、デフォルト設定をオフにしなければならなかった。これを、ボタン一発で切り替えられるのが設定の「ホーム」だ。カスタマイズがより容易になったと言えるだろう。

電話帳から検索して、直接店舗などに電話をかけることができる

 電話帳に「検索」が組み込まれたのも、グーグルらしい発想と言えるだろう。これは、位置情報を組み合わせて、キーワードに関連した電話番号をインターネットから取得する機能だ。たとえば、ここに「居酒屋」と入力すると、現在地付近の居酒屋が表示される。表示された候補をタップすれば、そのまま電話がかかる。ブラウザを開き、検索結果を見て電話番号を打ち込むという手間がなくなるわけだ。ただし、電話番号が合っているかどうかの確認はしたい。タップしてブラウザを開くか、電話をかけるかの選択肢ぐらいは出てほしいと思ったのが、率直な印象だ。

 このように、より親切になり、見た目も変わったAndroid 4.4だが、やはりメーカー製のUIに比べると機能が少々物足りない印象を受ける。たとえば、各機能の設定ボタンは、通知上から直接タップできた方が、手数が少なくなる。「最近使ったアプリ」の一覧も、相変わらず1つずつしか消すことができない。基本的な部分では、マナーモードの設定へのショートカットがないのも、素のAndroidらしい部分だ。こうした点は、メーカー製のUIではほぼ解消されている。

 ただし、この機種はあくまでNexusシリーズということは忘れてはいけない。標準のUIはあくまで、基本的な機能が組み込まれているだけだ。メーカー製のAndroid端末であれば、ここに手を入れるのはメーカーだが、Nexusシリーズの場合はユーザーがアプリで解決するのが王道だ。これを面倒と感じるか、自由と感じるかは、ユーザー次第と言えるだろう。同様に、Nexus 5はプリインストールアプリが非常に少ない。これも考え方次第だが、キャリアの端末にはプリインストールアプリが多すぎて取捨選択が面倒と思っている人にはうってつけだ。逆に、初期状態である程度アプリが充実していた方がいいという人には、物足りない印象を与えるかもしれない。

強化されたカメラ機能、画質は期待以上

背面には、8メガピクセルのカメラを搭載。本体からやや出っ張っている。光学手ぶれ補正対応だ

 Nexus 5は、カメラ機能の強化も売りになっている。スペック的には8メガピクセルだが、光学手ぶれ補正に対応しているため、画質の向上も期待できる。ソフトウェアとしては、新たに「HDR+」に対応した。

 ためしに、初期設定のまま何枚か写真を撮ってみたが、画質は先代のNexus 4から大きく向上していた。明るい場所ではクッキリと写り、暗い場所でもノイズはそこまで多くない。カメラ機能に定評のあるXperia Z1と同じシチュエーションで撮り比べたものを並べてみたので、以下の作例を見てほしい。

 なお、Xperia Z1は、以前「みんなのケータイ」でも指摘したとおり、暗い場所で「プレミアムおまかせオート」を設定していると、極端にピントが合いづらくなる。屋内での色味も、シチュエーションによってかなりおかしくなる。そのため、Xperia Z1は手動設定で明るさを少しだけ上げ、ISOは自動にして、フォーカスは「マルチフォーカス」を選択している。

 結論から言うと、明るい場所ならXperia Z1と比べてもそん色ない写真が撮れる。暗い場所はさすがにセンサーの差もあり、Nexus 4の方がディテールは甘くなるが、色味などを含めたトータルでの仕上がりは悪くない印象だ。スマートフォンのカメラとしては平均以上と言える。

左がNexus 5で、右がXperia Z1。どちらもディテールまで鮮明で、甲乙つけがたい。個人的には、Nexus 5の方がおいしそうな色に見える
イルミネーションを撮ると、さすがにセンサーの実力差が明確に出て、右のXperia Z1の方が明るい。とは言え、トータルでのバランスは左のNexus 5もそこまで悪くない
Nexus 5は左で、バーのような暗い室内でもクッキリ撮れたのは、光学手ぶれ補正のおかげ。ただし、Xperia Z1(右)の方がやはり明るく撮れる傾向がある

 画質以上に印象がよかったのが、使い勝手だ。操作感はiPhoneシリーズに近く、フォーカスを合わせたい場所にタップして、シャッターを押すだけ。スマートフォンのカメラが苦手とする暗い場所でもフォーカスの迷いが少なく、すぐに写真を撮ることができた。特に、暗所でのフォーカスのスピードに関しては、カメラが売りのXperia Z1以上だったことは明記しておきたい。

 今までのNexusシリーズは、お世辞にもカメラの画質が高いとは言えなかった。筆者は海外のみの販売だったNexus Sから歴代のNexusシリーズを、主に海外出張用のメイン端末として使い続けてきた。ただ、どの機種もカメラの画質には満足できず、写真を撮るときだけ、国際ローミング中の普段使いの端末を取り出すことが多かった。そのため、正直なところ、Nexus 5のカメラにもあまり期待していなかったが、仕上がりを見て、いい意味で期待を裏切られたと感じた。

 余談になるが、グーグルは、Google+で写真の見せ方にこだわっているといい、愛用する写真家も多いという。Nexusシリーズのカメラの画質が向上した背景には、こうした取り組みが影響しているのかもしれない。

数値より持ちのいいバッテリー

 2300mAhのバッテリー容量でLTE対応と聞き、実際に利用する前は少々電池の持ちが不安だった。Androidの冬モデルでは3000mAhを超えたバッテリーを搭載する端末が多いが、それでも筆者の使い方では1日持てばいい方だ。常用しているXperia Z1は、ヘビーに使おうとするとどうしても途中で継ぎ足し充電する必要がある。それよりバッテリーの少ないNexus 5は、夕方ごろには電池残量がゼロになってしまうのではと思ったものだ。

 こちらについても、カメラと同様、いい意味で期待を裏切られた。午前10時ごろから、いつもと変わらないペースで使い続け、途中1時間程度テザリングもオンにしたが、21時過ぎまでバッテリーはゼロにならなかった。端末の使用状況を確認してみたところ、もっともバッテリーを消費するディスプレイは、合計で2時間1分31秒点灯していた。TwitterやFacebookといったアプリは、それぞれ10分程度。グーグルの各種サービスはプッシュをオンにして、メールも50通ほど受信している。3通ほど、それに対して返信もした。レビュー用に写真も10枚程度撮っている。

10時間強利用したが、まだバッテリーは15%残っている。ちなみに、ディスプレイ点灯時間は2時間47分54秒。移動中は常にSNSやニュースをチェックしていたため、思ったより長時間使っている

 音楽再生をXperia Z1に任せていたり、Bluetoothで接続する機器が普段使いの端末より少なかったりといった違いはあるが、それでも電池はよく持った方だ。仕事でヘビーに使わない日なら、十分、丸1日は使えそうだ。なお、今回はドコモのSIMカードを利用し、LTEに接続している。

 ちなみに、韓国に出張した際には、現地のプリペイドSIMを挿してNexus 5を使ってみたが、こちらは3Gで接続していたこともあり、日本にいるときよりも電池が持った印象を受けた。

ネットワーク、料金を選べる“自由”

 1週間、Nexus 5を使ってみて、値段以上に高い満足度を得られる端末だと分かった。もちろん、これは、日本市場に合わせた細かなカスタマイズは行われていないグーグルのリードデバイスということを加味した上での評価だ。たとえば、Nexus 5はNFCを搭載しているものの、おサイフケータイには非対応だ。赤外線通信やワンセグ、フルセグといった機能もない。また、防水・防塵にも対応していない。その点では、ユーザーを選ぶ端末とも言えるだろう。実際、毎日の生活におサイフケータイが欠かせない筆者の場合、どうしてもNexus 5はメイン機にしづらい。同様に、お風呂で毎日使うため、防水は欠かせないという人もいるだろう。

 ただし、“それがないからNexus 5が悪い端末”と言いたいわけではない。こうした機能は、本来、ユーザーがある程度取捨選択できるのが望ましい。店頭に並ぶ端末がどれも“全部入り”では、極論すると何を買っても同じということになる。また、機能や仕様は盛りこめば盛りこむほど、端末の価格に跳ね返ってくる。割賦販売が一般的になり、本来の価格が見えづらくなってしまったが、ここ最近は、キャリアの扱う端末の価格が高騰している。ドコモの冬モデルであれば7~9万円程度、もう少し安いKDDIのものでも7万円前後はする。毎月の割引で事実上、端末の価格が相殺され、ハイエンドモデルを気軽に購入できるこの制度のメリットを否定するわけではないが、手に入れたものに対していくら払っているのかはもっと意識した方がいい。少なくとも、今の販売方式以外の選択肢はもっとあってしかるべきだ。

Google Playでは、16GB版が3万9800円、32GB版が4万4800円で販売されている

 インターネットサービスが主な事業で端末の販売で利益を出す必要がないグーグルが販売していることもあり、Nexus 5は本体価格が3万9800円~と非常に安い。ここにMVNOの“格安SIM”を組み合わせれば、毎月のランニングコストも抑えられる。最初に本体の代金を支払ってしまえば、機種変更の際に負担が大きくなることもない。

イー・アクセスでは、一括購入時のみ、価格がGoogle Playと同じになる。先払いという負担感はあるものの、分割払いよりトータルのコストは安い。写真は1日に開催された会見時のもの

 これは、イー・アクセス版のNexus 5を買っても同様だ。本体価格を一括で支払えば、同社でも端末価格は3万9800円になる。さらに、毎月の割引が通信料に対して、毎月1680円の割引を受けられる。その際の月額料金は2515円と、MVNO各社に十分対抗できるコストパフォーマンスだ。料金プランに対する2年縛りはあるが、解約したい際には違約金を払ってしまえばそれでおしまい。端末の残債が残り、その上で2年縛りがかかるのとは大きな差がある。SIMロックがかかっていないため、手元に残った端末はそのまま別のキャリアで使える。

 Nexus 5の特徴を一言で言い表すキーワードは、“自由”なのかもしれない。端末のカスタマイズはユーザーの手に委ねられ、キャリアの選択肢もMVNOまで含めれば複数ある。国に縛られることもなく、海外に持ち出した際は、現地のSIMカードで現地キャリアの料金が適用される。それを可能にする幅広い周波数帯への対応も、Nexusシリーズのメリットだ。先に挙げたように、日本で人気のある機能の一部には対応していないが、それを補ってあまりある自由がNexus 5にはある。ユーザーを選ぶかもしれないが、刺さる人にはとにかく深く刺さる。そんな端末と言えるだろう。コストを抑えられるため、フィーチャーフォンを維持しながら、2台目の端末として持つにもオススメできそうだ。

 とは言え、日本ではSIMカードのみを気軽に買える環境が、まだ十分整っていない。Google Playで端末を購入し、回線だけを契約するケースでは、買いやすさで言えば、ドコモとドコモから回線を借りたMVNOがほぼ唯一の選択肢になる。イー・アクセスも、Google Playで購入したNexus 5は受け入れていない。ソフトバンクは3Gのみパケット定額制の対象。KDDIの場合、SIMフリー端末の受け入れは行っており、LTE用のプランも契約できるものの、残念ながらNexus 5がCDMA方式に対応していないため、音声通話まで使いたい人にとっては現実的な選択肢にはなりえない。また、データ専用のプランはSIMフリー端末用には用意されていないという(なお、筆者宅で試してみたところ、auのSIMカードは認識したが、ネットワークサーチをしても電波を検出できなかった。これは、Nexus 5が800MHzのLTEに対応していないためかもしれない)。

 タブレットを中心に徐々にSIMフリー端末が増えてきており、ついにNexus 5のようなスマートフォンのフラッグシップモデルも登場するようになった。こうした状況になりつつある半面、プランの選択肢が豊富なのはドコモとその回線を使うMVNOだけだ。その他のキャリアの取り組みはまだまだ不十分と言わざるをえない。もっと積極的にSIMフリー端末の受け入れを行ってほしいというのが、筆者の本音だ。

石野 純也