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カシオが考える理想のスマートウォッチ像

カシオ計算機 取締役 専務執行役員 時計事業部長の増田裕一氏

 6月10日の「時の記念日」から東京都世田谷区の樫尾俊雄発明記念館で期間限定で実施されるカシオ計算機製多機能時計の一般公開に先立ち、同社が報道関係者向けに展示物を披露した。あわせて同社取締役 専務執行役員 時計事業部長の増田裕一氏から、これまでの歩みと今後の展望についての説明があった。

樫尾俊雄発明記念館
6月10日から一般公開されるカシオの多機能時計。一般公開時にはガラスケースの中に入った形での展示となる
常設の展示コーナーもあり、そちらではカシオ初の時計製品となる「カシオトロン」も展示されている

多機能デジタルから高機能アナログにシフト

スマートウォッチの登場がきっかけで腕時計が注目されている

 増田氏は、Apple Watchをはじめとするスマートウォッチの登場により、腕時計の存在が注目を集める状況となっているが、同社は数十年前からこうした分野での製品開発に取り組んできたことを、過去の商品ラインナップを振り返りながら解説。

 同氏が「今から考えれば技術や手段は稚拙かもしれないが、実は80年代、90年代の我々の商品にはそのコンセプトが先行して入っていた」と言うように、スケジュール管理、GPS、歩数計、脈拍計、音楽プレーヤー、カメラ、ゲームなど、現代のスマートウォッチがウリにしているような機能のほとんどは、カシオにより実現されていた。

 増田氏によれば、カシオが多機能デジタル時計の経験から、面白い機能が必ずしも日常生活において必要な機能とは限らないことや、多機能化を進めるあまりに操作が複雑になり、使いづらくなってしまうこと、機能がデザインに悪影響を与える場合があることを学んだという。

 こうした経験から、カシオは2004年に時計事業の軸足を多機能デジタルから高機能アナログに移すことを決断。これがスマートフォンとBluetoothで連携する「G-SHOCK GB-6900」や「EDIFICE EQB-500」といった近年の商品群の開発に繋がっている。

 「汎用の電子部品や半導体がものすごい勢いでばら撒かれる状況で、誰もがスマートウォッチを作れる時代に、他社と同じことをやっていてもダメ」と語る増田氏。同氏は、あくまでスマートフォンが主役となるApple WatchやAndroid Wearのようなアプローチではなく、腕時計としての使い勝手を最優先に考え、時計の機能を高めるためにスマートフォンを使うというのがカシオとしてのアプローチだと説明する。

 とはいえ、「時計の常識が邪魔する場合もある」(増田氏)ため、同社では、時計事業とは別に、新社長(樫尾和宏氏)直下の新規事業プロジェクトとしてリストデバイスの開発にも取り組んでいる。開発中の製品は、2016年のCESで披露される見込みだ。

製品写真

ビジネス

世界初のオートカレンダー付き腕時計「カシオトロン QWO2-10」:1974年(昭和49年)発売
世界初の世界時計・ストップウオッチ・カウンター・デュアルタイム付き腕時計「カシオトロン X-1」:1976年(昭和51年)発売
計算機能を搭載した「カルキュレータ クロノ C-80」:1980年(昭和55年)発売
英和・和英辞書機能を搭載した「英和和英デジタル T-1500」:1982年(昭和57年)発売
手書き認識機能を搭載し、文字盤上に数字を書いて計算できる「ジェナス リードセンサー」:1983年(昭和58年)発売
電話番号を記憶するデータバンク機能搭載「データバンク テレメモ10 CD-40」:1984年(昭和59年)発売
記憶した電話番号をプッシュ音で送信し、電話がかけられる「フォーンダイアラー DBA800」:1987年(昭和62年)発売
タッチセンサー採用で操作ボタン・リューズレスなデータバンクウォッチ「ビジュアルデータバンク VDB-1000」:1991年(平成3年)発売
漢字辞書機能や名刺管理機能を搭載したデータバンクウォッチ「漢字データバンク DKW-100」:1991年(平成3年)発売
アナログ時計のガラス面に文字が浮かび上がる二層液晶搭載データバンクウォッチ「マジックディスプレイ ABX-51」:1994年(平成6年)発売
二層液晶搭載のデータバンクウォッチシリーズ「ツインセプトシリーズ」から「ツインセプト ABX-55」:1995年(平成7年)発売
赤外線通信によるパソコンリンク機能を搭載「PCクロス HBX-100」:1998年(平成10年)発売
携帯電話が発信する800MHz帯信号を感知し、振動で知らせる「ビブセル VCL-100」:1998年(平成10年)発売
IC録音機能を搭載した「イージーレック DBC-V500」:1999年(平成11年)発売
非接触型ICチップ内蔵で電子決済「スピードパス」に対応した「Gショック GWS-900」:2004年(平成16年)発売

健康・フィットネス

ラップメモリー機能を搭載した「SDB-300W」:1986年(昭和61年)発売
脈拍測定機能を搭載したスポーツウォッチ「JP-100W」:1987年(昭和62年)発売
加速度センサーで歩数・距離・時速を計測するエクササイズウォッチ「EXW-50」:1989年(平成1年)発売
消費カロリー、歩数、距離のいずれかを算出できる腕時計:1991年(平成3年)発売
腕時計型の血圧計「血圧ウォッチャー BP-100」:1992年(平成4年)発売
運動強度がわかる脈拍計付き腕時計「JP-200W」:1992年(平成4年)発売
運動時に燃焼した脂肪量を算出できる「ファットバーニング FBR-10W」:1993年(平成5年)発売
ピッチを計測・記録できるマラソンウオッチ「ラップ&ベースメモ RPS-100W」:1993年(平成5年)発売
踏み台昇降運動時の脈拍数から持久力をが5段階で評価する腕時計「フィットネスモニター FIT-100」:1994年(平成6年)発売
胸ベルトの心拍センサーで計測し、心拍数を時計に無線転送・表示するランナー用ウオッチ「CHR-200J」:2005年(平成17年)発売
世界最小・最軽量(発売当時)のGPS応用機器、腕時計型のスピードメーター「PHYS GPR-100」:2006年(平成18年)発売

エンターテイメント

テレビ・ビデオのリモコン機能を搭載した腕時計「腕リモ CMD-10」:1993年(平成5年)発売
赤外線による通信機能で、離れた相手にメッセージ送信や対戦ができるゲームウォッチ「サイバークロス JG-100」:1994年(平成6年)発売
相手の攻撃を振動で知らせるゲームウォッチ「サイバークロス JG-200」:1995年(平成7年)発売
加速度計によりパンチ力やキック力を計測できるゲームウオッチ「サイバーマックス JG-300」:1996年(平成8年)発売
世界初の腕時計型MP3プレーヤー「リストオーディオプレーヤー WMP-1」:2000年(平成12年)発売
世界初の腕時計型デジタルカメラ「リストカメラ WQV-1」:2000年(平成12年)発売
2.5万画素CMOSセンサーを搭載し、カラー撮影のできる腕時計型デジタルカメラ「リストカメラ WQV-3」:2001年(平成13年)発売
反射型STNカラー液晶搭載の腕時計型デジタルカメラ「リストカメラ WQV-10」:2001年(平成13年)発売
世界初のクロースアップマジック機能を搭載した腕時計(トランプ付き):2006年(平成18年)発売

アウトドア

温度測定機能・温度アラームを搭載した腕時計「サーモメーター TS-1000」:1982年(昭和57年)発売
気圧・高度・水深計を組み込んだセンサーウォッチ「BM-100WJ」:1989年(平成1年)発売
月の満ち欠けをグラフィック表示、日の出/日の入り時刻も概算表示する「ムーングラフ GMW-15」:1989年(平成1年)発売
光センサーの計測メジャー機能搭載、地図をなぞって実際の距離を算出する「マップメーター MAP-100」:1989年(平成1年)発売
地磁気センサーを用いた電子方位計を搭載「CPW-100/200」:1993年(平成5年)発売
紫外線計測機能を搭載した夏向けの20気圧防水ウオッチ「UV-700」:1994年(平成6年)発売
離れた所から温度を測る放射温度計機能を搭載した「サーモスキャナー TSR-100」:1994年(平成6年)発売
世界初のGPS内蔵で現在地計測、方向距離ナビ、緯度・経度記録機能搭載のアウトドアウォッチ「プロトレック サテライトナビ PRT-1GP」:1999年(平成11年)発売
パソコン上で緯度・経度データが管理できるGPSナビ機能ウオッチ「プロトレック サテライトナビ PRT-2GP」:2000年(平成12年)発売

EDIFICE - スマートフォンリンク

スマートフォンアプリ上で地図をタップすると針が動いてタイムゾーン合わせができる「EDIFICE EQB-500」:2014年(平成26年)発売
スマートフォンと連携するワールドタイム機能を改善させた「EDIFICE EQB-510」:2015年(平成27年)発売

湯野 康隆