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ヘルスケアデータとゲノム解析で妊婦の疾患対策、ドコモと東北大
(2014/11/19 19:17)
NTTドコモと東北大学 東北メディカル・メガバンク機構は、妊婦に特有な疾患を予防、あるいは早期に発見できる方法を確立し、なおかつ原因の特定に向けて、2019年3月まで共同研究を実施する。
最大300名の妊婦に、ドコモから提供されるウェアラブル端末などでヘルスケア関連データを収集、そして東北大側でゲノム解析を行い、「環境」と「遺伝」という2つの側面から病気への対策を探る。
「遺伝」と「環境」を調査
「約5人に1人」「年間で約20万人」――この数字は、「妊娠高血圧症候群」「妊娠糖尿病」「早産」などを経験した妊婦の割合だ。これらの症状は、母子の健康へ与える影響が大きい一方、発症メカニズムはいまだ解明されていない。
一般的に、疾患は「遺伝」と「環境」が複雑に作用して発症する、とされている。これは「医学部に入ると、必ず最初に教えられる」(東北大東北メディカル・メガバンク機構の八重樫伸生 副機構長)話だという。
今回の実験で、ドコモでは子会社のドコモ・ヘルスケアのサービス「わたしムーヴ」を使ってもらうことで、妊娠した女性の血圧、体重や体温の変化、睡眠時間、活動量など記録する。そして東北大側では、唾液や血液を採取して、DNAのなかで遺伝情報を持つゲノムの解析を行う。それぞれの強みを活かして難問に挑むことになった。
ドコモがヘルスケアデータを収集、東北大がゲノム解析
日々のヘルスケアデータは、本当に役立つのか、という疑問に、東北大の八重樫氏は、いくつかの事例を挙げて解説する。1つは東日本大震災の後、妊娠高血圧症候群が増加したというもの。
八重樫氏が副機構長を務める東北大 東北メディカル・メガバンク機構という組織は、東日本大震災の後に設立された。津波によって医療施設も被災して、特に医師不足が深刻化。カルテなども津波で失われた。そして被災した住民を長期にわたってケアすることも求められる。そうした背景で誕生した東北メディカル・メガバンク機構によれば、震災前年の2010年と、震災が発生した2011年の3月、4月、5月の3カ月間、妊娠高血圧症候群の発生率を調査した結果、2011年のほうが発生率がはっきりと高かった。
また妊婦の血圧に関する調査では、たとえば夏(7月)に出産する予定の妊婦と、冬(1月)に出産予定の妊婦を比べると、冬に出産予定のほうが血圧の変動幅が大きいことも分かっている。また血圧測定は、緊張しがちな病院ではやや高めの数字が出やすい。ウェアラブルデバイスを使うことで、毎日、自宅で血圧を測定すれば、より高い精度でデータを収集し、傾向をチェックできる。
ちなみに妊婦の母が妊娠していた時の血圧が高いと、妊婦自身の血圧も高めになる、という遺伝的要素での相関関係もあるのだという。環境、そして遺伝、それぞれでチェックすることで高血圧症候群の早期発見・予防に繋がるのではないか……と期待されている。