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ソフトバンク第1四半期決算、米スプリントでの戦略を明らかに
(2013/7/30 21:39)
ソフトバンクは、2013年度第1四半期(4月~6月)の業績を発表した。グループ全体の連結ベースで見ると、大ヒットしているスマートフォンゲーム「パズル&ドラゴンズ」のガンホーを買収した効果もあり、8期連続で最高益を記録した。
30日に行われた説明会では、あわせて7月に買収手続きを完了した米スプリント(Sprint)における今後の事業展開、ウィルコムの子会社化にともなうウィルコム株式の再評価などについても紹介された。
連結ベースで増収増益
ソフトバンクグループ全体での売上高は、8811億円(前年同期比21.4%増)、営業利益は3910億円(同92%増)となった。営業利益のうち、1491億円はガンホーの子会社化による一時益とのことで、それを差し引いた営業利益は2419億円となる。それでも前年同期より400億円近くの伸びとなり、増収増益を達成した。孫氏は「営業利益が毎年、92%伸びるわけではない」と述べて、今回はあくまで一時的な伸びとしたが、ガンホーからの収益は今後も見込める、とした。
携帯電話事業(ソフトバンクモバイル、イー・アクセス、Wireless City Planning)やガンホーなどが含まれるセグメント、国内移動通信事業の売上高は、6619億円(同26.8%増)、セグメント利益は1725億円(同24.4%増)となった。ガンホーとイー・アクセスの子会社化、ソフトバンクモバイルの売上増が影響している。
オペレーションデータ
第1四半期におけるソフトバンクモバイルの純増数は81万件に達した。これにグループであるイー・モバイルの純増数2万4000件、ウィルコムの純増数11万3000件を足すと約95万件となる。6月末時点での国内の累計契約数はソフトバンクモバイル3329万件、ウィルコム520万件、イー・モバイル434万件をあわせて4283万件。これにスプリントをあわせると9804万件となり、ソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏は、説明会において「6162万契約のドコモを逆転した」とアピールする。
なお、スプリントやウィルコムが正式に子会社となったのは7月から。以前よりソフトバンクの決算では、ウィルコムの契約数を合算した数値などが開示されていた。ただし、今回の国内移動通信事業の業績にウィルコムは含まれていない。
ソフトバンクモバイルのARPUは4460円、うちデータARPUは2860円となった。前年同期と比べ、総合ARPUは50円の減少、データARPUは150円の増加。これはスマートフォンが増加する一方で、みまもりケータイなどAPRUの低い端末が増加したため。また音声通話の利用減少で通話料収入も減少した。
ソフトバンクモバイルの端末販売数は、302.3万件(同43.7万件増)。解約率は0.99%(前年同期は1.03%)だった。
Windows Phoneへのコメント
質疑応答で、米スプリントでWindows Phoneが発売されたことに関して、日本での展開を問われた孫氏は、「どの程度のユーザーから評価されるのか。スプリントの取り組みを見て、ポジティブであれば検討したい。始まったばかりなので様子を見たい」とコメントした。
ウィルコムの価値を再評価
会社更生手続きを進めてきたウィルコムが、7月1日、手続きを終了し、ソフトバンクの連結子会社になった。
XGP事業、つまり現在のWCP(Wireless City Planning)を分離した後のウィルコムの株式は、会社更生手続きを進める中、3億円でソフトバンクが100%取得していたが、更生手続きを終えた今回、その評価があらためて行われた。その結果、ウィルコムの株式は1041億円の価値がある、と算定され、取得時の価格との差額、1038億円がソフトバンクの第2四半期における損益計算書に反映される。
繋がりやすさをアピール
今回の説明会では、夏モデル発表会などでたびたび触れられている、接続率の現状があらためて紹介された。
他社よりもネットワークが整い、繋がりやすくなってきている、という主張だが、ソフトバンクの調査によれば、約8割の他社ユーザーは信じられないままだという。
一方、KDDIグループのUQコミュニケーションズへ2.5GHz帯が割り当てられ、ソフトバンクグループのWCPには割り当てられなかった件を問われると、先週末、総務省で吐露した話をあらためて繰り返した。
ソフトバンク第2章は米国事業
国内事業1兆円などの目標を立てて邁進してきたソフトバンクだが、今回の決算では、米スプリントの買収手続きを終えたことを受けて、これまでの事業を「第1章」、そしてこれから主に米国で進める取り組みを「第2章」と位置付け、ソフトバンクが歩む道のりが新たな段階に達したことを印象付けた。
孫氏は、日本市場と米国市場を比較すると、現在ではスマートフォン、LTEが主流となるなど似た市場である、と指摘。その上で、かつてボーダフォンを買収した後のソフトバンクで掲げた「ネットワーク」「端末」「営業/ブランディング」「サービス/コンテンツ」と4つの分野へ注力する姿勢、いわゆる“4つのコミットメント”を振り返り、そのまま米スプリントでも同じ4分野で注力する方針を示した。
料金については、買収後の7月11日に新たなプランを米国で発表。端末についてはLTE対応スマートフォンの調達時に技術面、価格面での交渉に活用できるとしたほか、ネットワーク設備でも運営ノウハウの共有のほか、「世界で2番目の(規模の)ネットワーク機器購入者になる」として、スケールメリットが期待できるとした。また米スプリントが先頃、2.5世代にあたる携帯電話サービス(iDEN)を終了したことで800MHz帯が利用できるようになり、スプリント子会社のクリアワイヤの2.5GHz帯とあわせて、似たような周波数帯を日米で利用することになる、とした。
4つのコミットメントを米国でも展開することに加えて、孫氏は「コストシナジー」を5つ目のコミットメントとして掲げる。スプリント買収時に明らかにされていたものだが、今後4年間で年間平均2000億円の経費削減を実現する。
米国での事業展開、あるいは端末の共同調達などに向けて、ソフトバンクではシリコンバレーに新たな事務所を9月に開設する。独自技術を開発するほか、先端的な技術やサービスが集まる地の利を活かして、新興技術・サービスとの連携を図る。米国の拠点となる建物は、1000人規模のスタッフを収容できる2つのビル。ただ当初は数百人規模でスタートする。孫氏は月に一度は渡米して、現地での事業展開にも密接に関わる。
これまでWiMAXを展開してきたクリアワイヤでは、既にTD-LTEの基地局を建設しはじめているとのこと。ただし、現在は基地局が点在し、面としてのサービスエリアが整っておらず、年内一杯、整備を進めて、全国規模で利用できるネットワークになる、との見方が示された。また今後、クリアワイヤでTD-LTE対応のスマートフォンも登場するとされた。