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ソフトバンク第3四半期決算は増収増益
スプリント買収効果で規模も拡大
(2014/2/12 17:04)
ソフトバンクは、2014年3月期の第3四半期決算を発表した。連結・累計の売上高は4兆5617億300万円(前年同期比94.4%増)、営業利益は9242億2800万円(前年同期比46.3%増)、税引前利益は7981億4100万円(前年同期比37.5%増)、純利益は4882億3100万円(前年同期比58.1%増)となった。
決算説明会に登壇したソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏は、米国の通信事業者であるSprintの買収などにより売上や利益の規模が拡大したことを説明。一方で、Sprint買収がなくても利益を確保できたと解説し、国内事業を含めて事業の拡大をアピールした。
孫氏は決算説明会を通じて、国内事業のほか、米国での通信事業、中国でのコンテンツ事業も拡大させたことで規模の面でも“強者の立場”を得たとし、日本でもAndroidスマートフォンの販売が他社と比較して好調で、国内の法人向けにGoogle Appsを最も多く提供していること、「パズドラ」がGoogle Playで好調なことなどにも触れて、“iPhone離れ”が加速している様子を窺わせた。
孫氏は、2014年3月期の第3四半期決算を受け、2014年3月期全体の決算予想を踏まえた数字として、20年で売上高が100倍の6兆円以上、営業利益が300倍の1兆円以上、時価総額が50倍の9兆円になると説明。スプリント事業が加わったことで、EBITDA(償却前営業利益)が10期連続最高益で1.3兆円になることを含め、第3四半期の連結業績は冒頭のように大幅な拡大で過去最高を記録したことをアピールした。
孫氏はNTTドコモ、KDDIと比較して、売上高、営業利益、純利益のいずれでもナンバー1になったと説明し、「雲の上だった存在を大きく上回った。一貫して利益を増大している。どの角度でも(2社を)凌駕した」と強調。一方で、KDDIに続いてドコモもiPhoneの取り扱いを開始したことなどに触れて、「これまでのように簡単に利益を伸ばせるわけではない。常に新たな解決策を見出して、成長させてきたのがソフトバンクの歴史」として、「国内も継続して利益を成長させていく」とした。
純増10万は“誤差”“井の中の蛙”
その国内事業、通信事業では、スプリント事業を加えたことで「日米の合計でちょうど契約数が1億件を突破した」と、規模が急激に拡大したことをアピールする。孫氏は、「1カ月で純増が5万だ10万だとか、MNPが3万だとかは、1億からすれば誤差。日本国内だけの井の中の蛙で考えるのではなく、全体最適を図る。トータルでどのように進めていくのか、そういう目線になっている」と語り、グローバルなキャリアとなった同社にとって、純増数の競争はすでに誤差の範囲と切り捨てた。
孫氏はまた、ARPU(1契約あたりの月間平均収入)についても触れ、「ほかの2社がARPUを下げている中で我が社は歯を食いしばって維持した」とし、ARPUの維持が、他社と比較して好調な業績に結びついていると解説した。
イー・モバイルとウィルコム、「どっちみちソフトバンクだ」
端末の販売については、iPhoneがドコモから販売されることで、最大の危機が訪れるといった予想や、iPhone 5s/5cの累計販売シェアが各社30%代で横並びになったことを示した上で、「これでどうなるか? Androidで1位になった」とAndroidの販売を拡大させたことを説明。過去1年間の新規のスマートフォン販売シェアにおいて、イー・モバイルとウィルコムを含めたスマートフォンの販売シェアが1位になったとしアピールし、「イー・モバイルとウィルコムを足しているのか、と言われるかもしれないが、いいじゃないか。どっちみちソフトバンクだ」と、グループの効果を強調した。
VoLTEは「我々も提供する」
孫氏からは、同社が新たな料金体系として発表した“VoLTE時代の革新的な料金”も解説された。VoLTEそのものの提供について同社から明確な発表は無いままだったが、質疑応答の時間には「我々も提供する」と明らかにされている。
その新定額サービスは「実質話し放題・無料の新サービス」と紹介し、「5分以内の通話なら毎月1000回まで。ほとんどの人にとって話し放題の体系」と同社の解釈を説明する。「アメリカではいくつか出始めている」と、米国の料金体系に影響を受けている様子も窺わせたほか、質疑応答の中では「5分以上しゃべるケースはウィルコムの『だれとでも定額』でも少ない。5分で一回切ってもいい。5分が経過すると課金されるが、少なくともアメリカではこうした料金体系が中心になっている」と説明し、分かりづらいとの指摘には「分かりづらいというのは、どういう意味か分からない。明朗会計。非常にシンプル」とその内容にも自信を見せた。
法人市場もナンバー1
孫氏からはまた法人向け市場でも大きなシェアを獲得していることが解説され、iPhoneの法人向け販売で「日本の法人におけるスマホでは、間違いなくナンバー1、一般の携帯電話を足しても、恐らく売上ではナンバー1。iPadもナンバー1、Google Appsも世界で最も販売しているのがソフトバンク。スプリントを加えたことでAppleの世界最大の顧客がソフトバンク。Googleでもソフトバンクが1位」とナンバー1を連発。
さらに、「ウルトラ集客」といったO2Oのソリューションでも「恐らく世界最大のO2Oの実践者」として事例をアピール。「個々のマーケットだけでなく、法人、O2O、ビッグデータなどで日々、ビジネスモデルを進化させている。価格だけでなく複合的に進化させており、だから売上が伸びている。だから利益が伸びている。単純なただの回線ではない」と、法人向け市場でもさまざまな工夫を凝らしている様子を語った。
設備投資はピークを終え“巡航速度”に
ネットワークの状況については、同社が公開している“接続率”の指標を使い、音声通話の接続率、パケット通信の接続率が向上してきたことを説明。このうちパケット通信の“接続率”については、ランドマーク別パケット接続率として全国の駅、大学、ショッピングモール、百貨店、家電量販店、コンビニ、ファミレス/ファーストフード、ホテル/旅館、テーマパーク/レジャー施設、ゴルフ場、海水浴場、サービスエリア、道の駅のいずれもでナンバー1になったとし、調査の中で唯一スキー場だけが「金メダルをとれなかった」とするものの「少なくともauは抜いた」とした。
同氏はこれらの結果を踏まえた上で、設備投資をこれまで前倒しで行ってきたとし、「2013年度でピーク。ここからは巡航速度になる。鉄塔の建設が最もコストがかかるが、これがほぼ一巡した」と説明し、今後の設備投資額をこれまでより少なくする方針を明らかにした。
インターネット事業、中国市場にも注力
インターネット関連企業を傘下に大量に抱える同社だが、孫氏からはYahoo! JAPANがeコマースの新たな施策により多数の出店要請を獲得している様子や、中国のアリババが提供するeコマースの取扱額が大規模になっている様子を紹介。アリババについては「ビジネスモデルが一気に開花した。本格的な利益を出す、そういうポジションの会社に進化した」とし、このほかにも「パズル&ドラゴンズ」が好調なガンホー・オンライン・エンターテイメントが「Google Play」上の会社別の世界売上ランキングで11カ月連続世界ナンバー1になっていると紹介。買収したスーパーセルもApp Storeで11カ月連続世界ナンバー1として、コンテンツ事業の好調ぶりも示した。
孫氏からこの日初めて明らかにされたのは、中国のモバイルアプリ検索エンジンで最大シェアを獲得しているというWandoujiaの筆頭株主になった(オプションを行使した場合)という点。中国市場のスマートフォンのOSはAndroidが圧倒的なシェアを獲得しているが、アプリマーケットのほとんどは「Google Play」ではなく、独自のAndroidマーケットが多数乱立している状態という。Wandoujiaのインストール比率は50%を超えるとのことで、ユーザー数は3億人超になるとし、「グループのゲームやアプリを、3億人に対して販売できる網を持った。ちゃんとそこ(中国市場)にも種を植えている」と、中国市場にも着実に足がかりを作っている様子を明らかにした。
スプリント事業「利益反転を実現させたい」
日米双方において注目を集めている、スプリントの買収による米国での通信事業については、買収後、利益率、営業利益が対前年比で反転したことを強調。「これまでも、真っ逆さまに落ちている会社を買収し、利益を反転させてきた。ぜひスプリントにおいてもこれを実現させたい。ネットワークへの設備投資を一気に進め、呼損率(かけてもつながらない率)も一気に改善した。通信速度も改善を進めていく」と直近で取り組んでいる課題を示し、最近買収した流通関連のブライトスターと組み合わせて業績を拡大させていく方針を示した。
米国のキャリア、「上位2社が寡占状態をエンジョイしている」
質疑応答の時間には、スプリントの下位で米国シェア4位、米T-Mobileの躍進に“どう対抗していくのか”と問われた。孫氏は「さまざまな噂が流れている。コメントするべき状況にはない。経営者としてコメントすると、影響を与える」と回答。
さらに、「ひとつだけ言えるのは、アメリカは競争状態といっても激しい状況にはない。ネットワークについても、世界一のレベルではない。価格競争も激しい状況にはない。これだけは事実として言える」とコメントし、「上位2社(AT&Tとベライゾン)が寡占状態をエンジョイしている」と、米当局が示しているような現在の施策では、十分な競争にはなっていないとする見方を示した。
「孫なのに不遜」世界トップクラスの企業を目指す
孫氏は、「成長は止まっていない。この2年で倍になる。いまだに発展途上だ。EBITDAでは世界で54位になるが、1位はたいして遠くない。孫なのに不遜だと言われるが、どうせなら元気よく、でっかい目標をたてる。時価総額は世界81位になるが、まだまだ遠いが、大して遠くもない」と語り、世界有数の企業の仲間入りを果たす夢を語り、決算説明会を終えた。
「端末で差別化していたのがiPhone時代。これからはネットワーク」
質疑応答の時間ではこのほか、通信方式などを含めた国内の競争力について問われた。孫氏は、「今までは端末で差別化していた。それがiPhone時代。これからは今まで弱みであったネットワークが一番の強みになる。そして、世界をベースにした規模の経済で、購買力でも規模の経済が働く。これまでは(規模が小さいという)オーソドックスな部分で一番負けており、弱者の立場の戦略をうたなければいけなかった。これからは強者の立場になる。曲芸のような無理をせずに、着実に一歩一歩、伸ばしていける」と回答し、規模を活かした王道的な展開に舵を切る方針を示した。
Androidの販売シェアでソフトバンクが1位になった点を改めて問われると、「地道な努力をしており、結果が出るまでは大きなことは言わないと考えていた。結果が出たのでコメントした。ただ、日本は世界の中でもiPhoneの普及率が高い国。Androidの販売シェア1位は、一時的なことかもしれない。Android自体が日本で大きく伸びているわけではないので。Androidでは鳴かず飛ばずだったので、初めて1番になってはしゃいで言ってしまった。すぐにシェアが落ちないように頑張らないといけないが」と、プレゼンテーション中とは打って変わってトーンダウンした回答で、Appleへの配慮も滲ませていた。
スマートフォンの販売数について、伸びが鈍化するとの懸念に対しては、「買い替えサイクルや、物珍しさもある。KDDIからiPhoneが出たことでキャンペーンも加速させた。そうしたさまざまな反動があるかとも思う」と、一定の影響があるとするが、販売台数自体はまだ伸びると予想する。「最近は、新機種が出ても極端な差がないと思うユーザーも増えてきたのではないか。1ユーザーあたりの保有月数が長くなっている。これは、販売費用が少なくて済み、安定的に収入を上げやすい形。現金札ビラバンバンで激しい戦いの、別の意味でコスト増はあるが、保有月数が伸びるのは経営的にはプラスで作用する」との見方を示している。