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KDDI、サービス付き高齢者向け住宅でタブレットを使った実証実験
KDDI、サービス付き高齢者向け住宅でタブレットを使った実証実験
(2013/3/27 14:03)
KDDIと笑顔のおうちクリニックは、サービス付き高齢者向け住宅において、医療業務支援ツールや情報提供ツールの提供を行い、情報通信技術(ICT)を活用した介護ビジネスの可能性や課題を検証する。実証実験では、タブレット端末を使った医療用の高機能なテレビ電話システムや、介護記録などの情報共有が試みられ、千葉県松戸市にあるサービス付き高齢者向け住宅「秋桜ビレッジ」で4~6月にかけて実施される。
KDDIは端末や回線、情報通信技術、将来的にはクラウド基盤などを提供し、介護ビジネスの可能性を探る目的がある。また、入居した高齢者と家族のつながりを支援する仕組み、高齢者の生活や趣味などを支援する仕組みといったエンドユーザーに近い取り組みのほか、在宅介護・在宅医療向けの基盤を構築する狙いもある。
実証実験では、最初のステップとして、入居している高齢者向けのナースコールにiPadを利用したテレビ電話システムを導入する。「秋桜ビレッジ」には最大50台という業務用の無線LANシステムが導入されており、施設内で利用されるiPadやiPad miniは基本的に無線LANで運用される。
入居者はベッド近くに置かれたiPadの画面にタッチするだけでナースコールを発信でき、施設のスタッフは、iPadのテレビ電話画面でお互いの顔を見ながら一時的な対応が可能。必要に応じて担当医師にそのままテレビ電話を繋いだり、テレビ電話会議のような形で3者でやり取りしたりできる。
テレビ電話のアプリおよびシステムは、笑顔のおうちクリニックが医療向けに開発したものをベースにしており、施設のヘルパーや医師などの管理者側では、入居者の各部屋に配備されたiPadの状態を一覧で確認が可能。管理者側からテレビ電話をかけた際は、入居者が画面に触れるなどの応答操作をできなくてもテレビ電話を繋ぐことが可能なほか、遠隔操作でメインカメラ(外側)に切り替え、音声で指示をしながら患部の写真を遠隔操作で撮影したり、同じ写真を双方で表示して問題カ所に印を付けたりといった画像共有機能も用意されている。
実証実験ではまた、従来は紙で管理されている介護日誌などの情報を情報共有ツールに入力し、他のスタッフや担当医師と情報を共有できるような仕組みの実験も実施される。
KDDIでは、検証を進め、2014年以降の商用化を目指すとしている。
iPadのテレビ電話でナースコール「一次判断がより正確に」
KDDI 新規ビジネス推進本部 戦略推進部 新規事業グループの村西美幸氏は、実証実験で「課題の洗い出しを行いたい」としているほか、高齢者本人が使ってみて、どう受け入れられていくのかも注視していくという。
笑顔のおうちクリニック 院長の杉浦立尚氏は、ナースコールの代わりにiPadとテレビ電話システムを利用する点について、「状況に応じてiPadで緊急度が分かるようになれば、一次判断がより正確になる」としており、従来の電話のみの場合と比べてより柔軟な対応が可能になるとする。また、医師からの指示や医師とのやり取りについて、履歴を残すことも可能なため、行き違いや勘違いによる指示や処方のミスを防げるといった側面も重要としている。加えて、安否の確認や就寝の確認といった場面では、同システムを利用することで、従来と比較して業務の負担を5割ぐらい軽減する効果があるという。
杉浦氏はまた、「入居者の満足度や医療の品質が下がってはいけない」としており、ICTの利用を画一的に進める姿勢には慎重な姿勢を示しているほか、電子カルテなどを含めた介護情報により、コミュニケーションを高めることが重要としている。
「秋桜ビレッジ」では4月より実証実験を行うため、20名の入居者の反応はこれから確かめるという。iPadのような端末がベッドサイドに置かれることについて、抵抗のある人、ない人と分かれそうだが、「秋桜ビレッジ」を運営する社会福祉法人 永春会 理事の吉岡俊一氏によると、こうした施設に入居する高齢者にとっては、より高度、より最適な医療を受けられるという期待が高まるため、多くの入居者に受け入れられるのではないかという見方を示している。
施設のスタッフ側についても、従来にないiPadを使ったシステムということで、使いこなしの度合いが課題となりそうだが、吉岡氏は、スタッフの年齢層も幅が広いため、iPadなどの利用に抵抗が無い人から、これまで触れたことが無い人までさまざまな人がいると予測している。こうした点も実証実験で注目していく項目になっている。