RIMが「BlackBerry World 2012」開催、「BlackBerry 10」公開


RIMのPresident & CEO、Thorsten Heins氏

 カナダのリサーチ・イン・モーション(RIM)は、米国・フロリダ州のオーランドで「BlackBerry World 2012」という開発者向けのイベントを開催した。初日にあたる1日(現地時間)にはキーノートセッションが行われ、1月に同社のPresident & CEOに就任したThorsten Heins氏らが登壇。BlackBerryというプラットフォームの強みや、年内に製品が登場するという「BlackBerry 10」が紹介された。

 キーノートの冒頭、Heins氏はBlackBerryを「ハードとソフトが統合された、モバイルサービス」と解説。他のスマートフォンと大きく異なる点として「生産性」を挙げ、「BlackBerryは成功を作り上げるためのもの」と語った。実際、スマートフォン全体と比べ、アプリケーションのダウンロード率や、各種ソーシャルネットワークサービスやツールへのアクセス率が、BlackBerryは高いという。たとえば、スケジューラーなどのツールを毎日利用する人の割合は、一般的なスマートフォンが65%なのに対し、BlackBerryでは92%となっている。こうしたデータを引用しつつ、Heins氏は「BlackBerryのターゲットは目的を持った人」と語る。次期プラットフォームのBlackBerry 10では、この生産性をさらに高め、「普通のスマートフォン以上のもの」(Heins氏)を提供していく方針だ。

 続けてHeins氏は、BlackBerryプラットフォームの最新版にあたるBlackBerry 10を紹介。ハードウェアは開発者向けのα版とのことで、製品は「年内遅めの時期には登場する」(Heins氏)見込みだ。BlackBerry 10は、RIMが買収したQNX社のOSをベースに開発された。ドコモから発売中の「Black Berry Bold 9900」などに採用される「BlackBerry OS 7.0」とはベースとなる技術が異なり、マルチタスクやタッチに最適化されたユーザーインターフェイス(UI)も備える。現在、タブレットの「BlackBerry PlayBook」にもQNXベースのOSが搭載されているが、BlackBerry 10はこの系譜を受け継いだプラットフォームといえるだろう。キーノートではOSの詳細については言及されなかったが、「Cascades」と呼ばれるUIや、ソフトウェアキーボード、カメラ機能などのデモで、特徴の一端を垣間見ることができた。

キーノートでは、オーガニゼーションツール(スケジューラーなど)の利用率が高いというデータが示されたHeins氏が披露した、BlackBerry 10搭載のデモ機
画面が重なるように表示されるUI

 UIには、開いた画面が積み重なっていくようなエフェクト採用されており、フリックでスムーズに切り替えられる。BlackBerryの特長ともいえるキーボードの打ちやすさも、ソフトウェア上に再現。アルファベットを打っていくとキーの上に単語の候補が表示され、フリックするだけでその文字を入力できるという。カメラについては、“過去を写せる”機能が紹介された。これによって、目をつぶってしまったり、表情がいまいちだったりといった失敗を防ぐことが可能だ。仕組みは明かされなかったが、おそらく撮影時に動画で残しておいた映像を、あとから写真に切り出しているものと思われる。

写真内の顔を認識し、その部分の時間をさかのぼることが可能
キーの上に単語の候補が表示されるベースとなるQNXのOSは車載システムにも採用されている
RIMのVice President of Global Alliances & Business Development、Martyn Mallick氏

 また、同キーノートではRIMのVice President of Global Alliances & Business DevelopmentのMartyn Mallick氏が、BlackBerryのエコシステムが優れている点を強調。「アプリを提供するパートナーに100%コミットしている」と語った。Mallick氏によるとアプリのエコシステムが成功する鍵は3つあり、「プラットフォーム、ツールとグローバルな配信の仕組み」がそれにあたるという。RIMはBlackBerryというプラットフォームを展開しており、SDKなどのツールも提供している。その上で「BlackBerry App World」というストアで、全世界にアプリを配信。「クレジットカードがない人もいるが、ペイパルやキャリア課金も利用できる」(Mallick氏)と、有料アプリに対する支払い方法の多様性に触れながら、BlackBerryが3つの要素をすべて備えていることをアピールした。キーノートセッションには、音楽アプリやカメラアプリ、ゲーム、電子書籍アプリなどの開発者もゲストとして登壇し、BlackBerry 10で実現する従来以上にリッチなアプリを披露した。

成功の鍵は、プラットフォーム、ツール、配信の3つにあるというキーノートには、アプリの開発者も登壇した。写真はパノラマ写真を簡単に作成できるアプリで、ジャイロセンサーを利用しているという
スマートフォン向けゲームアプリの大手Gameloftは、BlackBerry 10向けに開発しているタイトルを紹介Fishlabsというゲーム開発会社も、BlackBerry 10向けに家庭用ゲーム機並みのクオリティのタイトルを開発している
PixelMagsの開発する電子書籍アプリ。定額プランも用意している

 キーノートセッション終了後、プレスルームで開発者用のα版BlackBerry 10を搭載したデバイスに触ることができた。RIMのアジア・パシフィック地区広報担当によるとハードはデモ用リファレンス機で、ディスプレイは1280×768ドットで4.2インチとのこと。OMAPのデュアルコアCPUを搭載しており、スペックとしてはグローバルで発売中のPlayBookに近いという。カメラの画素数なども不明。メニュー内にはNFCという項目もあったが、ハードとしては搭載していないという。なお、デモ機には日本語フォントも内蔵されており、ブラウザでは本誌を表示することができた。

側面にはボタンや各種端子を備える
画面ロックボタンやイヤホンジャックも装備端末下部にはスピーカーが内蔵されていた
カメラ起動時のUI。なお、キーノートで紹介された機能は利用できなかった画面を下から上にフリックするとタスクを切り替えられる。PlayBookに近いUIだが、これはあくまで仮のものだ
設定メニュー。NFCの項目も表示できたBlackBerry 10を搭載した開発者用の試作機。本誌も表示できた

(石野 純也)

2012/5/2 15:45