【GREE Platform Conference 2012】

田中社長が海外展開の本格化をアピール


 グリーは、「GREE」にゲームなどを提供する開発者や関係者を対象にしたカンファレンスイベント「GREE Platform Conference 2012」を開催した。海外向けの戦略やソーシャルゲームの最新動向、キャリアの戦略など「GREE」に関連するさまざまな講演やパネルディスカッションが用意されている。

 イベントの冒頭には、グリー 代表取締役社長の田中良和氏が登壇し挨拶を行ったほか、同社 執行役員 マーケティング事業本部長の小竹讃久氏が国内・海外のプラットフォームを統一する上での戦略や施策を説明した。


 グリー 代表取締役社長の田中良和氏

 

 田中社長は、「1年以内には半分の事業がスマートフォンにシフトする」と、同社においてもスマートフォンに事業がシフトしつつあることや、世界市場では新興国でも大きな普及が見込めること、スマートフォンの処理能力が家庭用ゲーム機に追いつくとする資料などを紹介しながら、こうしたスマートフォンおよび高性能化にグリーとしてどう対応していくかを示す。また、フィーチャーフォンの時代とは異なり、iOS、Android、HTML5といった世界統一的な仕様が登場していることで「日本で培ったものを全世界に提供できる」と意気込む。

 その同社の戦略として、「GREE Platform」をワールドワイドで展開することはすでに何度も紹介されてきた。田中氏は「全世界向けのプラットフォームを出せる」と、2012年4~6月期にも多数のタイトルを公開予定であるとし、これまで折にふれて語られてきた本格的な海外展開のスタートが、間近に迫っている様子を紹介した。

 これに先駆け、グリー自身が手がけたタイトルの配信が米国で開始されている。田中氏は、9カ所ある海外拠点のうち、5カ所でゲームの開発も行っていることを紹介し、そのうち日本以外では最大規模となるアメリカで開発されたゲームとして、iOS向けの「Zombie Jombie」「ALIEN FAMILY.」を披露。「Zombie Jombie」が無料アプリとしてApp Storeのランキングで4位に入ったことを報告し、「日本以外でも多くの人に受け入れられるという自信を得る、大きな出来事だ」と振り返った。

 同氏はまた、「試行錯誤の段階だが」と前置きはするものの、「今後、個別のゲーム単位で、どううまくやっていくのかが主眼になっていく。受け入れられない、ということはない」と語り、プラットフォームや文化といった大枠ではなく、ゲームタイトルに注力していく段階になるとした。

 同氏からはまた、単体アプリとして作りこむ「ネイティブゲーム」も高品質なものを開発中とし、「GREEレース(仮)」「ともだち★ドッグス」が紹介されたほか、メディアミックスプロモーションとして展開しているゲーム雑誌「ファミ通GREE」が6月末から月刊化することを発表。加えて、グローバル展開の一環としてPayPalと提携したことや、日本の主要なゲームメーカーとの提携、ゲームロフト、ユービーアイソフトといった海外大手ゲームメーカーとの提携を紹介。6月のゲーム業界関係者向けイベント「E3」に出展する方向で準備していることや、昨年の東京ゲームショウなど大型イベントに出展していることを示し、「グローバルでも同様のイベントに積極的に出展し、全世界の人々にアピールすることで、コンテンツを作っている方が世界に出るチャンスを作っていく」と語った。


「GREE Platform」として本格的なグローバル展開が開始されるグリーが提供したゲームはApp Storeで4位になったという。ちなみに、パナマとジャマイカでは1位とのこと

 

一部パートナーに影響、「社会に受け入れられることが重要」

「利用環境向上に向けた取組み」

 田中氏からは最後に、「利用環境向上に向けた取組み」と題したスライドが示され、社内に委員会を設置したことや、未成年ユーザーの利用制限、利用状況通知サービス、リアル・マネー・トレードへの対策など、さまざまな取り組みを実施していることが紹介された。最後に、と切り出して紹介されたこれらの内容だが、実際には各項目の説明に相応の時間が割かれ、「スピーディな対策が重要で、迷惑をかけることもあるかと思うが、積極的にやっていきたい」と、会場に集まった関係者に真面目に訴えるものとなった。

 特に、未成年ユーザーの利用に上限を設ける施策については「一部のパートナーに影響があるかもしれないが、社会に受け入れられることが重要」と、理解を求めた。また、「コンテンツチェックの体制」「リアル・マネー・トレードへの対策」についても、グリーとして体制を強化するものの、「プラットフォーム全体として考えると、我々だけでは対応できない部分もある、各社でも、より強化をお願いしたい。労力や費用がかかる場合があるかもしれないが、そういうことを実施することが発展につながる」と協力を呼びかけた。

 同氏はこの話題に関連して最後に、「私としてもグリーとしても、真剣に対応していく。スピーディに対応していく。積極的にとりくんでいくことが重要で、賛同していただける会社と協力していく」と語り、協力的な会社と共に問題に対処していく方針を示した。

 

先行者利益を強調、「グローバル市場は再スタートできる機会」

グリー 執行役員 マーケティング事業本部長の小竹讃久氏

 講演ではこのほか、グリー 執行役員 マーケティング事業本部長の小竹讃久氏が登壇し、グローバルマーケットに展開するためのSDKの概要が説明された。また、集まった関係者にグローバル市場向けのタイトルの投入を呼びかけるものとなった。

 小竹氏は、「10億人が利用するサービスを目指す中で、現段階では1.9億人で、約20%の進捗」と現状を示した上で、「グローバルマーケットにいよいよ挑戦していくことになる」と語り、グリーとして1.9億人の会員とサポートを提供する体制を示し、パートナー各社にはコンテンツの提供を呼びかけた。

 海外の各地域の市場では、依然として伸びしろの大きい地域があることを同社の調査によるグラフで示した小竹氏だが、プラットフォームとコンテンツの成長サイクルは「日本でも世界でも変わらない」とした上で、「早くコンテンツを提供すると、プラットフォームからは流し込みが続き、より多くのメリットを享受し続けられる。先行者のメリットは大きく、これは、早い時期にアプリを出していただきたいというメッセージ」と先行者利益を訴える。

 同氏からは、主に日本でこれまで展開してきたタイトルについて表彰したことが紹介され、「最初からコンテンツを出している方が多く、ユーザーをより多く獲得し、勝ち組のパターンに持っていけた。グローバル市場は再スタートできる機会。このタイミングで本気で取り組むパートナーがいるとありがたい。より多くのチャンスを得られるのではないか」と、グローバル向けコンテンツの提供が呼びかけられた。


グリーの調査によるモバイルゲームマーケットの市場 

 

 同氏からはこのほか、プラットフォームがグローバル市場向けと統一されることによる変更点が紹介され、従来のタイプの会員登録をしなくても課金が行える簡易認証システムを提供することなども示された。また、詳細な提供時期は後日の発表とされたものの、SDKの提供が4~6月期に開始されることが紹介された。

 広告プラットフォームについては、「グローバルで展開すべく準備をしている。マネタイズの支援をしていく仕組みを整えている」と説明され、アプリ紹介サイトのICSと提携し「GREE専用枠」を確保、外部サイトからの集客でも支援していく方針を示した。

 小竹氏からは最後に、田中社長と同様に環境向上への取り組みが触れられ、特にコンテンツチェックの体制については「会社の中に持っていただけないか」と体制づくりを提案。「業界の健全な発展のためには必要なこと。本来であれば説明に伺うのが筋だが、スピーディに施策を行っていくので、足りない部分が出てくるかもしれない。必要な施策だと思っているので理解をいただきたい」と協力を訴えた。


プレゼンテーション

 




(太田 亮三)

2012/3/23 15:25