ロックマンなどを手がけた稲船敬二がソーシャルゲーム発表


 グリー、インデックス、comceptの3社は、ゲームクリエイターの稲船敬二がプロデュースするスマートフォン向けソーシャルゲームアプリを「GREE」で提供すると発表した。第1弾タイトル「Dr★モモの島」(仮)の提供時期は10月で、Android向けのほか、iOS向けにも提供される予定。利用料は基本プレイが無料のアイテム課金制。11~12月には第2弾、2012年月~2月には第3弾も予定されている。

 「Dr★モモの島」(仮)は、可愛いモノが大好きなマッドサイエンティストの少女「Dr.モモ」が世界一の「カワイーモン」を創りだすために、不思議な生物がいる不思議な島、不思議な世界を舞台に、さまざまな動物を採取・合体させていくというソーシャルゲーム。開発中につき詳細は明かされていないが、従来にないエンターテイメント性やキャラクター、世界観などがしっかりと構築されたタイトルになるとされている。

 アプリの企画・開発を行うcomceptは、稲船氏がカプコンを退社後に設立した会社のひとつで、同氏が代表取締役を務める。稲船氏は1987年カプコンに入社し、「ロックマン」「バイオハザード 2」「鬼武者」「デッドライジング」「ロストプラネット」など多数のヒット作を手がけた。2010年11月にカプコンを退社し、comceptおよびinterceptを設立している。10月よりスマートフォン向けSNS「GREE」に提供されるソーシャルゲームアプリ「Dr★モモの島」は、comcept設立後に稲船氏がプロデュースする初のタイトルになる。なお、comcept自体はソーシャルゲーム専門ではなく、コンソール(家庭用ゲーム機)タイトルも手がけていく見込み。グリーはプラットフォームやアドバイスを提供し、インデックスはコンテンツ制作や運用のノウハウなどで協力していく。


 

「大手ゲームメーカーでできなかったゲーム」

左からグリー 執行役員 マーケティング事業本部長の小竹讃久氏、インデックス 代表取締役社長の小川善美氏、comcept 代表取締役の稲船敬二氏

 22日には都内で記者向けに発表会が開催された。グリー 執行役員 マーケティング事業本部長の小竹讃久氏は、「稲船さんのような方が作るソーシャルゲームを楽しみにしている。1億人以上がいる世界に対して届けられるのは非常に嬉しい」と期待を述べ、「スマートフォン向けはまだ日も浅く、コンテンツ数は多くない。コンソール畑の人が参加するなどで、今までとは違うタイトルを増やしていければ」とスマートフォン向けの展開も拡大していく方針を示した。

 インデックス 代表取締役社長の小川善美氏は、「カプコンを退社したと聞き、思い切って話をしてみた。稲船氏はソーシャルゲームにものすごく興味津々で、これから手掛けるゲームをやらせていただきたいと懇願して今日に至った」と、カプコン退社後の稲船氏にアプローチした様子を語り、「スマートフォンはいろいろな可能性を秘めている。インデックスはこれまでコンソールタイトルを作ってきたが、全く新しい、世界に届くプラットフォームで稲船さんのコンテンツを出せる。ぜひ期待して下さい」と人気ゲームクリエイターによるソーシャルゲームの制作に自信を見せた。


小川氏(左)と稲船氏(右)

 comcept 代表取締役の稲船敬二氏は、20年以上に渡って家庭用ゲーム機のタイトルを制作してきた経験から、「その中で、ゲームというものを理解したつもりでいた」とするものの、ソーシャルゲームが市場を席巻している状況を「ゲーム業界自体が注目しなければならない」とし、「ぜひやりたいと思っていたところに、インデックスから声がかかった」と協業に至る経緯を説明した。

 稲船氏が考えるソーシャルゲームの面白さとは、気軽さ、ゆるいつながりのソーシャル性、情報をつなげて発信できるバイラル性の3つであるとする。その上で、“これからのソーシャルゲーム”として同氏が加えるのは、エンターテイメント性、魅力的なキャラクター性、背景にあるストーリー設定、(スマートフォン)ならではの操作感・体感性、とし、「20年以上ゲームを作っている人間が参入すると、もっとユーザーにとっていいアプローチができるのではないか。より新しいソーシャルゲームにしていきたい」と意気込みを語った。3作連続リリースが予定されていることについて、「数カ月といった短い期間で、反応を見ながら、実験性を含めて」開発していく方針とした。

 稲船氏はまた、「ファミコンの時代は今のソーシャル(ゲームの状況)に近い。3~6カ月で作って、3年会社にいると10本出している人もいた。今なら3年会社にいても自分のタイトルはまだ出ていない、なんてこともある。タイトルは出すことで経験値が積める。(タイトル数が増えると)ユーザーが望むものにどんどん近づけられる」と語り、ソーシャルゲームでは開発者とユーザーの距離感が比較的近いことを前向きに解説した。


稲船氏が作るソーシャルゲームとは
ソーシャルゲームの面白さ稲船氏のソーシャルゲームに対するアプローチ

 

 「Dr★モモの島」(仮)については、「稲船らしくないと思われるかもしれないが、やりたかった内容で、実は稲船らしいタイトル」と紹介。「大手ゲームメーカーにいた頃から、子供向け、血まみれのゾンビ、侍と、いろんなものを作ってきた。(自分は)わりと勇気がある人なので、成功にしがみつかない。いままでのタイトルを作りつつ、ほかのも作る。好きなことをやるのはすごく大事」とゲーム作りに対する姿勢を語った上で、「だから、ソーシャルゲームにチャレンジしていく。大手ゲームメーカーでできなかったゲーム」と、同氏の中でも新たな挑戦になっている様子を語った。

「Dr★モモの島」(仮)のイメージと稲船氏
3作連続のリリースを予定「Dr★モモの島」の大枠の世界観

 

「基本プレイ無料は、面白くなければ相手にされない」

 質疑応答の中で、クリエイターとしてかき立てられる点を問われると、稲船氏は「1億人という会員数で、年齢層も広い。やってやるぞという気になる」とし、「基本無料というのは、面白くないゲームは相手にされない。面白かったら遊んでもらえ、まともに勝負できる」と、パッケージ売り切り型のコンソールゲームとは異なる側面での競争も示唆した。

 技術的な制約については、「ファミコンでやってきて、ノウハウは持っている。それ(プラットフォーム)に合わせて作っていけばいい」と懸念材料にはならないとし、「ファミコン時代もそうだが、シンプルな内容に、だんだんと要素が増えていった。シンプルを極めた作品はゲームとして面白い。ソーシャルゲームを作る上では、シンプルさを作った上で、盛り上げる付加をしていくか。よりシンプルで面白いゲームを作れるかということで、やりがいがある」と語った。

 同氏はまた、「女の子が主人公のゲームは作ってこなかったのでやりたかった。男女問わずどちらにも受ける感じになっているのではないか」と、広い層に訴えかけるビジュアルになっているとし、「新しいゲームというのは、新しいプラットフォーム、新しいゲーム性で成り立っている。怖がらずにチャレンジしていきたい。絶対にいいゲームにしたい」と意気込みをみせた。

 




(太田 亮三)

2011/7/22 18:17