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「5G“で”世界を変える」、ドコモ吉澤氏が目前に迫った5Gを語る――DOCOMO Open House 2020の基調講演

 NTTドコモは、1月23日~24日の期間、都内において「DOCOMO Open House 2020」を開催している。初日となった23日、NTTドコモ 代表取締役社長の吉澤和弘氏が「5G、より豊かな未来の到来」と題して基調講演を行った。

 前回(2018年の同イベント)は「より豊かな未来を」としていたが今回は「到来」。これまでよりもさらに実現可能な未来が近づいてきたことをアピールするタイトルだ。

吉澤和弘氏

 吉澤氏は最初に、同社のこれまでの取り組みについて振り返る。通信サービスの提供に始まり、iモードやdメニューに代表されるプラットフォーマーとしての取り組み、dマーケットで提供される音楽や動画などのサービスの提供など多様なビジネスを展開していることを紹介しつつ、現在のドコモの事業はパートナーとの「共創」が重要であると語る。

2017年の「beyond宣言」で宣言したこともだいぶ現実になりつつある

 「5Gは手段。我々はそれを提供できるが、それを使ったサービスやソリューションはそれらを得意とするパートナーと連携しなくては難しい。ドコモだけでできることは限られる」と吉澤氏。つまり新たなサービスやソリューションを生み出すにはパートナーとの協力関係が非常に重要になってくるのが5Gの時代だ。

会員基盤のビジネス展開へ

 また、ドコモは今後、「会員を軸とした事業運営への変革」と「5Gの導入とビジネス創出」を方針としていくという。

 ドコモの現状は「まだまだ回線契約しているユーザーが中心」と見られがちであると吉澤氏は評する。実際には、ドコモでは回線契約以外にもクレジットカード、d払いに加えてDAZNやdマーケット含めて回線契約不要のサービスも多く提供する。そうしたサービスを通じて、回線契約以上にドコモが提供するサービスの「会員」の幅をもっと広げるのが今後の目標だ。

 特にポイントは、ユーザーにとって受け入れられやすく、d払いやiDなどの支払いを通じて付与される「dポイント」が利用できる店舗が多ければ多いほど、ユーザーの利用機会が増える。そこで得られたデータをさらなる加盟店拡大のために用いるなどのサイクルを用いて会員基盤の拡大を狙う。

 とはいえ、回線契約もやはり大事なドコモの柱だ。吉澤氏によると、去年導入された新料金プランの「ギガホ」と「ギガライト」は、現段階で契約者数1200万を突破。「2019年度末目標の1700万に近いところへ持っていけるのではないか」と語り、料金について「継続的にユーザーへの還元が必要と思っている。利便性のためにも磨き上げていく」とした。

 並行して、ユーザー接点の改革も推し進めていく。長いという声が多く聞かれるショップでの待ち時間・応対時間を半減させ、浮いた時間を利用して「スマホ教室」や一部のショップで実施している「5G体験コーナー」などを体験してもらえればと吉澤氏。

ドコモの「パーソナルデータ憲章」。情報の取り扱い規範が記されている。情報を扱う以上、セキュリティや透明性も確保している

 現在、ドコモの会員数は7300万。パートナーとして共創する企業は3200社。これからも両社が持つ強みをかけ合わせ、新たな付加価値を創造することを強調した。

5Gを起点にして社会を変える

 「5Gが世界を変えるのではなく、5Gで世界を変える」と吉澤氏。5Gは「主語」ではないという。5Gはあくまで手段であり、世界を変えるのは5Gを活用するソリューションだと説く。吉澤氏によると、多くの企業が進める「デジタル・トランスフォーメーション」にはIoTやAIなどさまざまな要素があるものの、中でも最も太い柱が5Gだ。

 ドコモでは企業、自治体、大学などのパートナーとともに263もの5Gの使用事例を作ってきた。商用サービス開始前にも関わらずなぜここまで早くそうした活動に取り組んでいるのかというと4Gが開始した頃の経験からだという。

 4G開始当初は「そんなに早い回線を誰が何に使うのか」や「そんなことにお金をかけるのか」という声が非常に多かったという。しかし結果的にはスマートフォンの普及を促進し、今や当たり前の動画サービスなどを定着させた立役者でもある。「5Gでも同じことを言われたくない」と吉澤氏。そのため5GのDAY1(開始直後)から「こういうことができる」という世界を作っておきたかったという。

 米中韓などではすでに5Gが始まっているが、5Gでできることが明確になっていない。吉澤氏は「我々もまだ見つけてはいないが、こういったこと(パートナーとの共創)をすることで早く明確になるのではないか」と吉澤氏。システムとしての5Gの導入が遅れているということに言及しつつも、「それに対して、なんの価値が提供できるのかが重要。早く(システムを)入れましたということが重要」とした。そのための共創プラットフォームとしての「docomo Open Innovation Cloud」も準備されている。

 ユーザーが直接実感するデバイスについても「スマートフォンがなくなることはなかなかないのではないか」とした上で、2~3年先になるとスマホの周辺機器としてあったARグラスやVRゴーグルもそれ自身が5Gでつながると語る。

新幹線との通信成功なども

 実は、ドコモは5G標準必須特許候補件数で世界6位。通信事業者としては1位だという。「標準化を先導していくという意味で、次世代の6Gも含めてやっていきたい」と吉澤氏。

 283km/hで走行する新幹線との5G通信に成功した事例を紹介。1Gbpsでの通信に成功。8K映像の伝送や新幹線車内から撮影した映像のアップロードも行われた。「高速走行中でのハンドオーバーは確かめておく必要があった。安定的にどんな条件でも機能することを確かめておかなくてはならない」という信頼性に対する譲らない姿勢を示した。

 この実験は、デバイスを搭載した新幹線が用意された3つの基地局の間を走り抜けるまで、わずか3秒のできごとだったという。

早くも6Gの話が

 総務省が次世代通信規格の検討を開始することに合わせて、ドコモも6G技術コンセプトのホワイトペーパーを公開した。吉澤氏は「もっと進化させるという意味では、より高い周波数を使うこともある。もしかしたらテラヘルツということも。100GBbps以上のデータレートや信頼性は9が7つほどの%でやらなければいけないということも」と性能目標について語り「どういうことができるのかを含め、さらなる議論を重ねて2030年代の6Gを攻めていきたい」とした。

吉澤氏おすすめという展示。リアルタイム翻訳や「Face Sharing」など目を引くものがたくさん