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MoMAに収蔵された「絵文字」の“父”、栗田氏が語った開発当時のエピソード

当時のエピソードを披露した栗田氏

 テキストだけではケンカする。少ない文字数でコミュニケーションするとき絵文字は必要だ。でも開発にかけられる時間はわずかだった――そんな開発秘話を語ったのは絵文字の開発をリードした栗田 穣崇氏(当時はNTTドコモ、現在はドワンゴ執行役員)だ。

 今や“emoji”(エモジ)という表記、発音で海外でも利用され、寿司などと同じように日本語そのままで海外でも使われるようになった絵文字。2010年の段階で、Unicodeに取り入れられ、国際標準となっていたが、2016年10月、世界の中でも現代アートの美術館として高い人気を誇るMoMAに収蔵されることになり、大きな話題を呼んだことは記憶に新しい。

 そのMoMAのFacebookページでは21日、館内のロビーで絵文字の展示が始まったことと、絵文字を題材にした動画を紹介する。折しもその日の夜、都内で当時の関係者によるちょっとしたパーティが開催された。絵文字の開発をリードした栗田 穣崇氏には開催をヒミツにしたまま、目隠しをして会場に招き入れ、MoMA収蔵を祝すサプライズパーティだ。そこで栗田氏からは、絵文字の開発にまつわる当時のエピソードが披露された。

少ない文字数だからこそ

 1999年2月に登場したNTTドコモの「iモード」。当時の様子については、本誌でも15年前、栗田氏にインタビューしており、その記事にも、iモード開発時、栗田氏が絵文字を考えた、というエピソードが紹介されている(※関連記事

 iモード以前から、ポケットベル(ポケベル)でテキストメッセージが流行。その中で、テキストだけではディスコミュニケーションになることは経験していたという栗田氏は、(ポケベルに含まれていた)ハートマークを付けるとどんな表現でも和らげられると考えた。今でこそ、やり取りする文字数の制限などないが、当時はメールなども送受信できる文字数に限りがあった。「少ない文字数でコミュニケーションするとき絵文字があれば(コミュニケーションの課題は)解決するはず」と考え、開発チームを率いていた松永真理氏に絵文字の開発を申し出た。

 1999年2月に登場したiモードだが、実は当初のサービス開始時期は、それよりも前、1998年12月に予定されていた。栗田氏が絵文字の開発を思いついたのは1998年3月のことで、サービス開始予定時期の8カ月前。そのため同僚の笹原優子氏に1カ月程度で形にしなければ間に合わない、と余裕のないスケジュールを示されたという。当初は端末メーカーに絵文字の開発も任せるつもりだったという栗田氏だが、そのメーカー側もどうしていいかわからず、結局、栗田氏自身が絵文字を作っていくことになった。

初めて描いた絵文字は「傘」

 200種類程度の絵文字を用意することになり、栗田氏はiモードコンテンツで利用されることを想定して銀行やコンビニ、天気などの絵文字をラインアップ。このうちメールで使うことを想定していたのは、ハートや感情を示す顔のアイコンなどだった。12×12ドットという限られた表現力のなかで、どんな絵文字がいいのか、栗田氏は方眼紙を用意して自ら筆を走らせた。

MoMAの公式ブログより

 一番最初に描いたのは「誰が書いても同じ」(栗田氏)という傘マーク。次いで絵文字開発のきっかけになったハートマークだった。また、思いついたもので一番良かったのは感情を示す顔の絵文字だったと振り返る。

 その一方で「失敗した」と笑顔で紹介したのは禁煙マーク。禁止を意味する斜線の方向が右上→左下へ走っているが、こうしたマークでは通常、逆方向(左上→右下)だという。

 栗田氏は、自身のTwitterで、「I (ハートマーク) emoji」と背中に記した特製パーカーを着て、近くMoMAを訪問することを明らかにしている。