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ファーウェイや業界キーマンが語るIoTやモバイルの近未来

 ファーウェイは、モバイル・ブロードバンドの技術や業界の発展を目的とした講演イベント「グローバル・モバイル・ブロードバンド・フォーラム 2016」を11月24日、25日にかけて開催している。会場は千葉県の幕張メッセで、第7回目。日本で開催されるのは初めてとなる。

 イベントの協力パートナーにはGSMAとGTIが名を連ね、世界各国のキャリア関係者や、IoTで連携する企業の担当者が参加するイベントとなっており、講演やデモ展示を行う会場も英語を基本とした国際イベントとしての側面が強くなっている。展示コーナーやデモについては別記事で紹介している。本稿では24日に開催された講演から、ファーウェイ、チャイナモバイル、ソフトバンクのキーマンによるプレゼンテーションの模様をレポートする。

公演会場
展示コーナー

ファーウェイのケン・フー氏、IoTでコラボや研究開発を加速

 冒頭に登壇したのは、ファーウェイ 輪番CEO兼取締役副会長の胡 厚崑(ケン・フー)氏。同氏は自社の歴史や実績を一切振り返ることなく、「我々は今、モバイルアプリの中で生きている」と切り出し、「モバイルアプリは爆発的な成長を遂げており、あらゆる分野に進出している」、今起こっていること、そしてこれから起こることをどう予想していくか、それにどう影響を与えていけるかといったことに集中している姿勢を明確にする。

ファーウェイ 輪番CEO兼取締役副会長の胡 厚崑(ケン・フー)氏

 「今後どんなアプリが出てくるか予想するのは難しいが、技術を見ていくと予想できる部分もある」と同氏は技術的なトピックやトレンドに触れながら今後の流れを予想する。それによれば、キーになるのは「モバイルネットワーク」「センサー」「UI」「クラウドコンピューティング」「ビッグデータとAI」の5つで、モバイルネットワークがあらゆるものをオンラインにする未来が訪れる。センサーも小さく、性能は向上し、安価になっており、「物理的な世界をデジタルの世界に変える」とする。また産業分野ではセンサーとAIなど、キーになる技術が融合を果たし、製品開発やエコシステムが革新されていくとした。

 具体的に、将来にひろがっているビジネスチャンスとはどのようなものなのか。同氏はまず「ビデオ」を挙げ、現在でもトラフィックの60%を占める大きな市場だとし、今後もさらに市場が拡大することとあわせて、さらなるワイヤレスネットワークの拡張も求められているとした。

 IoTでは、対象となる分野は非常に広範囲におよぶことから、同氏は他企業とのコラボレーションを「新しい視点で、見直していかなければいけない」と指摘する。業界のパートナー企業とより良いコラボレーションが必要になり、パートナーシップは今まで以上に重要になるとする。

 ネットワークの技術面では、アプリの利用を念頭に置いた構築が重要になるとし、リッチな動画に耐える回線容量、NB-IoTなどIoTを促進する広域なエリア構築、モバイル網に接続する車両間通信などをポイントとして挙げる。これらは5Gや4.5Gの特徴にもなっているもので、5Gの策定がエコシステムやユースケースも同時に検討しながら進められていることを裏付けている。

 同氏は、こうした技術革新に加えて、エコシステムの構築も非常に重要であるとし、すでにいくつかのフォーラムや組織を設立あるいは参加していることを紹介。さらに踏み込んで、「XLabs Wireless」という取り組みを立ち上げることを発表し、「人」「車」「家」の3つ分野で、研究開発や応用を研究していくことを明らかにした。「人」を対象にした「mLab」では、心理面の研究やAR/VR関連の検証なども行い、エンターテイメントを含めて成功モデルを模索していくという。

 なお、「XLabs」は中国だけでなく欧州、北米、日本、韓国にも拠点の開設が検討されているという。北米ではインフラ関連の機器を販売していないものの、応用例の検討として拠点を設置する予定。

 最後にケン・フー氏は「大きなチャンスのある旅の、スタート地点に立っている」とまとめ、モバイル通信があらゆる業種を巻き込んで大きな流れになっていく様子を示した。

チャイナモバイル、2018年に5Gを試験導入

 講演にはチャイナ・モバイル(中国移動) CEOの李躍(リー・ユー)氏も登壇、同社の今後の戦略を語った。同国の市場規模もあり、チャイナモバイルの4Gユーザーは5億人に迫るなど巨大な規模になっている。同氏は「4Gのブロードバンドで、人々の生活は大きく変わった。4Gの前にもeコマースはあったが、4Gとアプリが緊密に結びつけた。では5Gは? 5Gは社会そのものを変える。IoTで、より生活の深い部分での結びつきが強くなる」と語り、5Gは社会そのものにインパクトをもたらすとする。

チャイナ・モバイル(中国移動) CEOの李躍(リー・ユー)氏

 そのチャイナモバイルにおける5Gは、「2020年までに、というのが大きな目標」とした上で、「2018年にはプレコマーシャルとしてロールアウトしていく。2020年までに商用展開できるよう取り組んでいく」とし、グローバルの動向の中でも、比較的早期に展開していくことが明らかにされた。

 同氏はまた、近い将来ではユーザーひとりあたりの通信(ノード)が自動車などでの利用を含めて10ノードになると予想しており、10億ユーザーを抱える同社は100億のコネクションに耐えるネットワークが必要になるとし、現在の4Gを発展させながら5Gに移行していくとした。

 IoTの発展は、同時にビッグデータの時代の到来も意味しているが、同氏は「キャリアはビッグデータでの分野で唯一無二の優位性を持っている。いかに価値に結びつけるかが重要で、キーになるのは(解析のための)AI」と指摘。これは冒頭のファーウェイのケン・フー氏なども指摘している内容で、膨大で複雑な情報をAIで解析し“使える情報”にしていくのがIoTのもうひとつの側面になっている。チャイナモバイルでは、12月にもオープンなプラットフォームとしてIoTを開放していく方針という。アプリ専門の開発部門も立ち上げており、産業分野も含めて支援していくとした。

ソフトバンク宮内氏、IoTで「情報革命の元年」

 ソフトバンク代表取締役社長兼CEOの宮内謙氏も同イベントに登壇した。宮内氏は「テクノロジーはどんどん進化しており、過去できないと思ったことが、全部実現するのがこれから3~5年」と語りだす。自動運転、リモートヘルスケアなどさまざまな分野で革新が進んでいることなどに触れ、「安くて非常に早くて多様なネットワーク。IoTでシェアネットワークが始まろうとしている。核になるのはモバイルブロードバンドで、キーになるのはネットワークとCPUだ」と同社が注力しているポイントを開設する。

ソフトバンク代表取締役社長兼CEOの宮内謙氏

 キーになる「ネットワーク」として、5Gの大容量、高速、大量接続、低遅延という特徴を挙げた同氏は、すでにMassive MIMOの商用化を実現したことや、「過密エリアで商用化して、効果をどんどん表している。ネットワーク容量が10倍になった。全国で展開していく」とその効果をアピール。「ギガモンスター」として月間20GBなどの大容量プランを提供している背景も、こうしたネットワーク側の拡張があることを示唆した。

 同氏はまた、大量通信(IoT)についても本格的にスタートさせるとし、この日の午後に披露した「NB-IoT」のフィールド実験について「今日、本格的にスタートした」とアピールした。

 キーになるCPUは、同社が買収した英ARMのことで、すでに膨大な数が出荷され、さまざまな場所に採用していることを紹介。「IoTは一気に来る。膨大なデータがくる。それを処理するのはAI。IoTでAIはこれからもっとも重要な技術だ」と、ここでもやはり、ビッグデータとAIの組み合わせは不可欠という認識が示された。

 宮内氏は、「今後の世界は完璧にコネクテッド。すべてのモノがつながった世界で、生活が豊かになっていく。先を予測できる世界になる。すべての技術が揃ってきた。まさに情報革命があらゆるところに始まりだす元年だ」と締めくくり、IoTや5Gが大きく社会に影響することを語った。