「N-03C」開発者インタビュー
NECらしさを盛り込んだタフネスケータイ
ドコモからNECカシオモバイルコミュニケーションズ製の「N-03C」が発売された。今冬モデルで言うと、先行して発売されている「N-01C」と「N-02C」がNECブランド伝統の「μ」シリーズの血統を受け継ぐモデルだったのに対し、「N-03C」は耐衝撃性能を持つという、従来のNECブランドにはなかった、新しい方向性の端末になっている。
耐衝撃・タフネスケータイというと、カシオがau向けに展開しているG'zOneシリーズがある。G'zOneも同じくNECカシオモバイルコミュニケーションズが作っているタフネスケータイだが、最新モデルの「N-03C」と「G'zOne TYPE X」を比べてみても、まったくデザインテイストが違っているのが興味深い。
今回はこのN-03Cの開発を担当したNECモバイルコミュニケーションズのNTTドコモ事業部 商品企画グループの板本真一氏と商品戦略本部 クリエイティブスタジオ チーフデザイナーの竹井豊氏、第一商品開発本部 技術マネージャーの菊地好文氏に話を聞いた。
N-03C |
――まずコンセプトからお伺いします。なぜ今回、タフネスケータイを製品化されたのでしょうか。
板本氏
NECカシオモバイルコミュニケーションズの設立によりNECとカシオ、日立の携帯電話事業が統合されたので、そのシナジーを活かせるように、と企画しました。とくにドコモさまのラインナップに耐衝撃を謳っているモデルが無いので、そこをN-03Cで狙っています。実はユーザー調査によると、ケータイに求める機能として、防水の次に耐衝撃のニーズが強くあります。たとえば過去にケータイを壊された方、アウトドアスポーツをされる方、野外で働かれている方などが耐衝撃性能を求められているのだと思います。そういった幅広い人に手にとってもらいたいと考えました。
――同じNECカシオが作られているG'zOne TYPE-Xとは、同じタフネスでもデザインの方向性がまったく違います。N-03Cのデザインのポイントとは?
竹井氏
これまでカシオブランドでタフネスケータイのG'zOneをやっていましたので、それを意識しつつ、NECブランドとしてどのような世界観を出すか、ということを考えました。
NECブランドでは、そぎ落とすようにしてデザインしているので、N-03Cについても、そぎ落とすようにして普通のモデルとは異なる凹凸感やタフ感をデザインを作り出しました。
NECカシオの竹井氏 |
たとえばフロントパネルのエッジを見ていただくとわかりますが、背面パネルのエッジがそぎ落とされる形で斜めになっています。このような部分で、NECブランドがこれまで培ってきた、薄型小型化のDNAを引き継いでいます。また、カラーや仕上げについても、タフだからといって従来と違うのではなく、これまでのNECブランドケータイを引き継ぐ、きらっとした表現にしています。
ケータイではカシオブランドのG'zOneがありますが、NECブランドでも、NEC本体がタフネス性能を持ったノートパソコンを手掛けています。NECカシオ設立前から、タフネスケータイをやりたいという思いがあり、そういった思いが統合のタイミングに一致した、という流れもあります。
今後はスマートフォン市場が伸びる中で、スマートフォンにもタフネス性能が期待されるところだと思います。そういったところを含め、カシオブランドとは別にNECブランドによるタフネスケータイも発展させていきたいと考えています。
N-03C |
――タフネス、ということでデザイン面で制約があったりするのでしょうか。
竹井氏
耐衝撃を考えると、普通のケータイよりもサイズが大きくなります。たとえば通常の端末にないプロテクターなどが追加されています。そういった部分をデザインのフックにすることもできるのですが、しかしそれをやりすぎると、NECブランドの持つコンパクトなイメージから離れてしまうので、そぎ落とせるところはそぎ落とすようにしています。
ケータイは性能が同じなら小さい方が良いのですが、N-03Cはタフネス性を妥協してしまっては意味がないので、今回はこのようなサイズ感に落ち着きました。また、タフネス性能の試験をパスするということを考えたので、従来の端末とは違ったデザインプロセスも通っています。
――普通のケータイとあまり変わらないデザインでありながら、上端と下端にプロテクターパーツがついて、やはりタフネスっぽくも見えます。
竹井氏
デザインは従来の普通のケータイと同じままでタフネスに、という方向性もあったのですが、やはりタフネス性能のためにはプロテクターが必要になります。そのとき、ほかのパーツと同じ色・質感にしてしまうと、通常よりもサイズが大きく見えてしまうので、今回は色・質感を変え、プロテクターをデザイン面でのアクセントにしています。
BURTONとのコラボモデル |
――BURTONとのコラボモデルも特徴的ですね。
板本氏
NECはコラボモデルを得意としていますので、タフネスを感じるブランドということで、とくにN-03Cは冬モデルとして発売するので、今回はスノーボードのトップブランドであるBURTONさんとコラボレーションしました。
竹井氏
コラボモデルは今回、どのようなデザイン要素を抽出するとバートンさんらしさが出るのだろうと考え、街でも雪山を連想させる白をベースに、ロゴ部分に木目の印刷を取り入れ、これまでにない形でのタフネス感を出す、というコンセプトに合ったデザインに仕上げました。
待受画像や着信音などもバートン関連のコンテンツをプリセットする |
――カシオブランドのG'zOne TYPE-Xはモータースポーツをモチーフとしているのに対し、N-03Cはスノーボードブランドとコラボレーションする、というのが切り口が違っていて面白いですね。
竹井氏
通常のNECブランドのモデルは、どちらかというとAV機器などの延長線上にある、と考えてデザインしていますが、N-03CではそういったNECブランドがこれまでやってきたことを発展させつつ、造形的にもタフネスになるようデザインしました。たとえば普通、タフネスでブラックというと、マットな塗装でカメラのような仕上がりになりますが、そうすると静かでごつい塊のようなイメージにもなるので、N-03Cではブラックでも光を反射するような塗装・素材で仕上げています。
――BURTONコラボモデルの反響はどうでしょうか。
板本氏
いまのところ、N-03Cのバリエーションの中で、BURTONモデルが一番売れているときいています。当初は寒い地方の方が売れるかな、とも思っていたのですが、そういったこともなく、全国でご好評いただいているようです。スノボードをしない人、BURTONを知らない人でも、このデザインで手にとってもらえているのだと思います。
NECカシオの板本氏 |
――中身、ソフトウェアなどの機能面ではN-02Cとほぼ同じなのでしょうか。
板本氏
中身のソフトウェア面ではほぼ同等です。カメラの画素数が違ったり、インカメラやWi-Fiがないなどの違いはありますが、たとえばカメラの高速起動機能である「瞬撮」などの特徴はN-03Cにも搭載されています。
N-03C独自の機能としては、MP3再生に対応しました。これまでのモデルは、Windows Media Playerなど一部のソフトでしか転送できなかったり、MP3からフォーマットの変換が必要で、そういったところに不満を持たれていた方もいらっしゃいました。今回はMP3ファイルをそのままメモリカードの所定のフォルダ「PRIVATE/NEC/MP3」にドラッグ&ドロップするだけで、N-03C上で音楽を再生できるようになっています。
――N-01CとN-02Cは操作レスポンスの面で「さくさく」というのアピールされていましたが、N-03Cでも?
板本氏
購入した方のインターネット上の意見を見ますと、満足度が高く、そこに「さくさく」な部分も貢献していると考えています。基本的な機能の満足度は重要と考えておりますので、、ここは継続していかないといけないかな、と思います。
――NECブランドの製品になりますが、NECカシオとして、タフネス設計面でカシオのノウハウが活きているのでしょうか。
NECカシオの菊地氏 |
菊地氏
構造的にはカシオブランドの製品の設計を参考にしている部分があります。もちろん、通信方式からプラットフォームまで違うので、内部の部品レイアウトは完全に同じにはできず、そこは苦労したポイントでもあります。構造を変更すると強度にも影響が出るので、回路設計部門とかなりやりとりしながらデザインしました。
――そぎ落とすデザイン、というお話ですが、強度への影響もあるのでは。
菊地氏
強度的に影響がない部分をかなりそぎ落とした、というイメージです。NECカシオとなり、カシオ側の設計データを参照できたので、今回はシミュレーションを同じように行いつつデザインしました。
板本氏
企画やデザイナーからは「もっと薄くできないか」という要望も出まして、タフネス性能を維持しつつ、NECブランドのイメージである「薄型」も維持するよう、0.1mm単位で薄くしていきました。より多くの人に手にとってもらえるよう、開発とともに努力したポイントです。
――耐衝撃性能はMILスペックに準拠されていますが、これはどのようなものなのでしょうか。
耐衝撃テストで叩きつける「相手」となる合板。板の方がボロボロになっている |
菊地氏
122cmの高さから端末を26方向落とす、というMILスペックで規定されているテストをクリアしています。実際には、それよりも高いところからのテストも確認しています。こうした試験環境なども、NECカシオとなったことでのシナジー効果だと思っております。
――そういったテストをどのくらいやったらN-03Cは壊れるのでしょうか。
菊地氏
相当な回数試験を行いましたが、試験中には壊れませんでした。壊れるまでテストを繰り返すのは、かなり大変です。
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板本氏
具体的な試験回数はお話できませんが相当回数の落下に耐えています。メーカーとして耐衝撃を謳っていながら落としたら簡単に壊れた、では困るので、耐衝撃性能については作り込んでいます。
――上端と下端にあるプロテクターはどういったもので、どのような効果があるのでしょうか。
板本氏
床など平面に落としたとき、必ずプロテクターが先に当たるようになっています。
菊地氏
素材としては、エラストマー樹脂というものを使っています。触っても柔らかさを感じないかと思いますが、単体だと変形し、そこで衝撃力を分散するようになっています。
ヒンジ部と逆端にエラストマー樹脂のバンパープロテクターがある | ボディ外装自体も強固な素材・構造になっている |
――このプロテクター以外の部分は普通のケータイと違うのでしょうか。
菊地氏
レニー材という高強度ナイロン樹脂を使っています。普通のモデルでも一部、使われていますが、N-03Cの場合、ボディ外装の4パーツすべてにレニー材を採用しています。また、ボディ外装パーツも肉厚にするなど、構造的にも強度を高めています。
――本日はお忙しいところありがとうございました。
2011/1/31 13:16