インタビュー

「HTC U11」は“AI社会”への下準備、VR「LINK」の狙い

HTC Chang氏が語る

 HTC NIPPONは、フラッグシップのスマートフォン「HTC U11」をauとソフトバンクの夏モデルとして日本市場に投入する。3日、台湾HTCでグローバルセールスプレジデントを務めるChialin Chang(チャーリー・チャン)氏が報道陣との電話会議に応じる形で、日本での戦略を紹介した。

Chialin Chang氏

HTC U11 HTV33

Chang氏
 我々の「HTC U11」をKDDIも本日から購入予約をスタートしました。グローバルでいち早く購入いただいた方の感触も非常に好調で「ベストフラッグシップモデル」となったという自負を持っています。日本では、たくさんの方々に知っていただくため、「攻殻機動隊」とコラボレーションしたプロモーションを展開しています。また、日本市場では、「HTC U11」で初めてローンチする新しいVRプラットフォーム「LINK」を先行投入する予定です。

――「HTC U11」を日本市場にはどのような形で打ち出していくのか。

Chang氏
 世界戦略とも共通で、新しいイノベーションをみなさんに提供していくことで広めていきたいと考えてます。今回の「HTC U11」では、“握る”操作を取り入れています。握ってカメラや、さまざまなアプリケーションを起動したりといった機能ですが、これは今後さまざまな形で機能に応用させていこうと思っています。

 イノベーションを押し出していくという技術上の取り組みもありますが、HTCをもっとたくさんの人に知っていただく必要があります。HTCは知名度が少ないので、なんらかのアイコンが必要です。さまざまな検討をしましたが、「HTC U11」の世界観とマッチしている「攻殻機動隊」と共同でプロモーションに取り組むこととなりました。

――“握る”機能は、今後どのように発展させていくのか。

Chang氏
 お客さまが「あったらいいな」と思われるような機能を追加できるよう、開発に取りかかっています。例えば、地図アプリでは、一度握ると地図アプリが開き、もう一度握るむと拡大される。これが音楽アプリですと、一回握るとアプリが開き、次に握ると音楽再生、もう一度握ると停止する。他にも電話アプリではかかってきた電話を受けたり、通話を止めたりといった機能追加を検討しています。

――日本市場における取り組みでは、どのようなものが障壁になってきたか。

Chang氏
 一番には競合となる相手が非常に強いことです。日本市場のほとんどすべてのメーカーがフラッグシップ端末を投入しているので、性能面の違いを見せるのが非常に難しい。これを打破するために、我々は一歩先のイノベーションをとりいれています。加えて、日本ではブランドの強さによって販売が左右される部分が非常に大きいので、HTCというブランドを強化していかなければならないでしょう。

 そこで、日本市場では、VRプラットフォーム「LINK」の先行投入という戦略を選びました。日本のユーザーには新しい技術に感心が高く、新しいイノベーションを世界に広めていくには格好のマーケットだと考えています。

――HTCの将来的な成長イメージをどのように描いているか。

Chang氏
 今後は、製品のラインナップをある程度絞りこんで、グローバル市場や日本市場に挑んでいきます。HTCはエントリークラスの製品には、十分な競争力があると思っていません。そこで、最先端のイノベーションを盛り込んだフラッグシップモデルで勝負していきます。ミドルレンジでも、なんらかのイノベーションを感じていただけるような製品にフォーカスして、機種数を絞って展開していきたいと考えています。

――モバイルVRは今後どのように発展していくと思うか。

Chang氏
 VRは今後の人々の生活において重要なポジションを占めていくと思われます。VRはコンシューマーだけでなく、エンタープライズにも浸透していくことで、グローバル規模でのモバイルデバイスの進化における非常に重要なマイルストーンとなっていくでしょう。

――モバイルとVRの融合はどのような形で進んでいくか。

HTC LINK

Chang氏
 VRは、今はハイエンドPCやハイエンドモバイルといったデバイスと繋いでという形。一方で、グーグルさんはオールインワンタイプのモバイルVRデバイスを発表しています。一時的にはオールインワンタイプ、モバイルタイプが共存する期間がありますが、将来的には用途に応じて統合していくでしょう。

 その中でHTCはただ、ユーザーが何を求められているのかをしっかりと分析し、製品として供給していくことができると思います。モバイルと繋がるか、またはスタンドアロンで動くかといういずれの形になるのかは、ユースケースに応じて考えて行く必要があります。

――VRへの対応はずいぶん進められたが、ARへの対応はどう考えているのか

Chang氏
 あまり多くは話せませんが、ARとVRを融合した「MR(Mixed Reality)」の分野では、近いうちに大きな動きがでてくるでしょう。我々もそれに対して準備をしていきます。

――人工知能(AI)の今後をどのように考えるか。

Chang氏
 コンピューターの処理能力がこれからもどんどん向上していきます。通信は多くのデータを流せるようになり、ソフトウェアも非常に複雑な処理ができるようになっています。一方で、人間は日々の生活の中で、大量のデータを作り出している。今後はそのデータをAIが処理することになると、生活に非常に大きなインパクトを与えていくことになるでしょう。

――スマートフォンの差別化が難しい。VRは大きな差別化ポイントになっていくのか。

Chang氏
 もちろん1つの差別化要因ではありますが、VRのみが差別化になるとは思っていません。AIが生活の中に取り入れられた未来の世界を想像してみてみてください。例えば、ユーザーを認識するために、カメラ機能が重要になっていきます。新しい操作方法として、自然な会話で機械に指示をするボイスコントロールも一般的になっていくでしょう。そういった世界に対応するための下準備としての機能を、「HTC U11」には盛り込んでいます。

 例えば、ボイスコントロールではGoogle アシスタント、Amazon Alexaという2大アシスタントをサポートしています。そのためにマイクを4つ搭載し、360度どの角度から話しかけられても聞き取れるようにしています。

 今後は、デバイスはCPUやメモリといった単なるスペックで語るものではなくなってくるでしょう。その一例がカメラです。「HTC U11」に搭載しているソニー製のカメラセンサーは、非常にいい部品ですが、他社のスマートフォンでも使われています。センサーだけでなく、さまざまな技術の組み合わせが「HTC U11」のカメラに表現力に繋がっています。

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