【Mobile World Congress 2017】
「これからはAIがインターネットを変える」、MWCでLINEが語った「Clova」の戦略
2017年3月2日 16:26
LINEは、3月1日(現地時間)、Mobile World Congressの基調講演で、AI(人工知能)プラットフォーム「Clova」を発表。このプラットフォームを活用したLINE初となるハードウェアのスマートスピーカー「WAVE」は、初夏に日本と韓国で発売される。
ディスプレイ搭載型の「FACE」も2017年冬に発売予定。同時に、メーカーとの提携も発表され、ソニーモバイルやLGエレクトロニクスが、クローズドなパートナーとしてスマートデバイスや、スマート家電を開発していくことが明かされた。
LINEがAIプラットフォームに乗り出したのは、「モバイルがインターネットを大きく変えたように、これからはAIが変える」(代表取締役社長、出澤剛氏)からだ。
「スマートフォンのメッセージを介さない活動が、どんどん大きくなってくる。それは、今までにない、まったく新しい、非常に大きなエコシステムを構築する。その基盤になるクラウドAIプラットフォームが、次のプラットフォームになる」
一方で、AIや音声ナビゲーションを使ったサービスは、AmazonがAlexaを、グーグルがGoogleアシスタントを立ち上げており、特にAlexaに関しては、すでに幅広いデバイスが対応している。2017年1月に米・ラスベガスで開催されたCESでも、冷蔵庫や車、スマートフォンなど、幅広いデバイスがAlexa対応を表明していた。LINE側も、「すでにビッグプレイヤーがひしめている」(同)という認識を持つ。
その状況で、LINEがあえてこの分野に参入した狙いは、地域性とコンテンツにあるという。AIは「ローカルの言語、文化、サービスにいかに寄り添っていくのかが重要」(同)な技術。LINEは、日本をはじめ、台湾やタイなどでメッセンジャーサービスとしてシェア1位となる。対するNaverも、韓国では「圧倒的ナンバー1の検索ポータルサービスで、韓国はグーグルが検索でトップを取れなかった数少ない地域の1つ」(同)だ。
同時に、「さまざまなコンテンツの中から、いかに満足いく回答をするか。最適な回答に必要なコンテンツを、すでに自社で持っている」(同)というのも、LINEやNaverの大きな強みとなる。また、「機械学習は、学習させるデータの量と質で決まる」(同)ため、サービスの品質も向上させやすい。
実際、先に挙げたAlexaやGoogleアシスタントは、世界的に話題を集める一方で、進出している地域は非常に限定的で、米国や欧州の一部国のみでしか使えない。
出澤氏も「こういったものは、世界に溶け込んでいく。現地の言語、サービス、あるいはパートナーによるカルチャライゼーションが今までのインターネットサービスよりもさらに重要になる分野で、必ずしもシリコンバレーのプレイヤーが強い領域ではない」と語る。「この世界が来るのはおそらく間違いないことなので、我々としては早いタイミングで参入した」(同)というわけだ。
対応デバイスは、LINEのこれまでの戦略と同様、段階を経て順次広げていく方針だ。まずは、LINEが4月~6月の間に、日本と韓国で「Clova App」を公開。初夏にスマートスピーカーのWAVEを販売する。その次の段階として、ソニーモバイル、LG、タカラトミーなど、限定したパートナーが対応デバイスを開発。最終的には、サードパーティへAPIを開放する予定だ。
スマートプロダクト分野での協業が発表されたソニーモバイルは、「コミュニケーションサービスとしてLINEさんは非常にいい体験を提供しているし、ユーザーの数も魅力的だった」(スマートプロダクト部門 副部門長 伊藤博史氏)と語る。また、AIは「地位性があるもので、日本でウケるボイスアシスタントやAIは、まだまだこれから色々な形のものが登場してくるはず」(同)と、LINE側と同様、地域性が重要との見方を示した。