【Mobile World Congress 2016】

ソーラー充電スマホを出展、京セラが語る海外事業や新技術の狙い

 例年のような一般来場者向けの展示は見送った京セラだが、商談用ブースは構えており、主に海外事業者などとの交渉は行っていた。同社は、「Mobile World Congress 2016」に合わせ、ソーラーチャージ可能なスマートフォンのプロトタイプを開発。そのデモを行っていた。

京セラの能原氏

 京セラは、米国を中心に、カナダ、欧州にも高耐久モデルを展開しており、最近では、スマートフォンのOSをベースにした「次世代フィーチャーフォン」を海外でも発売。「DuraXE」という名称で、米国のAT&Tと、カナダのTelusが販売を行っている。また、「DURA FORCE XD」という5.7インチの高耐久ファブレットも、1月に発表した。

 MWC2016年の会場で、通信機器経営戦略部長の能原隆氏に、プロトタイプの狙いや、海外事業の進展などを聞いた。

昨年から今年にかけて発売された海外モデル
次世代フィーチャーフォンも、海外に展開済み

タフネスモデル、海外でも競争激しく

――京セラでは高耐久モデルと安価なモデルを展開していますが、前者は海外でもライバルが増えてきた印象があります。

能原氏
 日本でも、いつの間にかMILスペックをうたわれる製品が増えてきました(笑)。私たちは、用途に応じた工夫をしようということを、今考えています。

――海外モデルは、増えているのでしょうか。

能原氏
 モデル数という意味ではあまり変わっていませんが、高耐久モデルの比率は増えていて、ポジションを徐々にそちらに移しています。法人用途が1つあるのと、もう1つはコンシューマーで、スポーツやアウトドアといったマーケティングも行っています。

高耐久モデルのラインナップを拡大中
高耐久モデルは、販売数も増加している

ダカールラリーでは、ホンダのチームが使用。コンシューマー向けにも訴求を行う

――北米での競争はいかがですか。シェアは変わらずでしょうか。

能原氏
 維持というのが、正しいですね。北米は競争が激化していて、ポストペイドの2強には、アップルさんとサムスンさんがいて、その次にLGさんがきます。一方で4位以降には、私どもを加えて、alcatelさん、HTCさん、ZTEさんがいて、競争をしている状況です。

 米国の4大携帯電話事業者のうち、T-Mobileにだけは納入していませんが、高耐久モデルに関しては、強いですね。

――そこは、ほぼ独占的ということですか。

能原氏
 そうですね。一部でサムスンさんが(タフネスの)ActiveのモデルをAT&Tに供給されていますが。

国内外で異なるフィーチャーフォン戦略

――次世代フィーチャーフォンですが、日本ではLINEなどのアプリが入っています。海外ではいかがですか。

能原氏
 あまりそういう話はありません。というのも、米国で今出しているのが、高耐久モデルだからかもしれません。

――北米で出す意義は、どこにありますか。

能原氏
 事業者(キャリア)サイドから見ると、新製品を出さなければ、お客様がいなくなってしまうことにつながります。彼らも今まで一生懸命スマートフォンに移行させようと、さまざまなタイプの端末を出してきましたが、結論としては、一定数のフィーチャーフォンは残るという話が出ています。そうご判断しているようですね。

――日本のモデルはあまり通信をさせない作りになっていますが、それは海外でも同じでしょうか。

能原氏
 同じですね。日本では、いわゆるガラケーをよく使っていただく方をどう切り替えるかですが、アメリカではフィーチャーフォンを使う方は、本当にケータイを電話としてしか使わない。ARPUを上げる仕組みを入れても、あまり効果がないようです。

高耐久ファブレットの「DURA FORCE XD」
次世代フィーチャーフォンの「DURA XE」も、高耐久モデルだ

ソーラー充電端末について

――ソーラー充電端末のプロトタイプについて、詳細を教えてください。

ソーラー充電スマートフォンの仕組み。パネルはサンパートナー製

能原氏
 昨年も(パネルを開発した)サンパートナーと共同で試作機を開発しましたが、今年のものは性能がだいぶ高くなり、3分の充電で1分の通話が可能になるぐらいの技術的なスペックが見えてきました。

 効率性を追求したのと、去年のものより液晶のサイズが大きくなり、面積が広くなったからです。これなら、屋外で作業している方が、首からぶら下げておくだけで充電できる。1つのテクノロジーとして、今後の商品化を検討したいと思います。

 今は、発電効率と液晶の透過率がトレードオフになっていて、最終的にどこに落とし込むのかを考えています。今現在のプロトタイプは85%にしていますが、それでもほかの端末より、若干暗めになってしまうので、ここをどうするのかが課題です。

――製品化の目途や、時期を教えてください。

能原氏
 できるだけ早く、と考えています。部品の量産化や品質の担保もありますが、2017年ぐらいに出せたらいいなと思っています。

――日本でも、発売されますか。

能原氏
 ご興味を持っていただけるお客様がいれば、ですね。日本に限らず、グローバルでも武器の1つとして、いろいろな方とお話をしています。

――フル充電には、どのくらいの時間がかかりますか。

能原氏
 というより、ハイブリッド自動車のような打ち出し方を考えています。これだけで使うというより、気づいたら充電されているようなイメージですね。

ソーラー充電対応機
太陽光に近い光を当てると、充電が始まる

――ウェアラブル的な端末への応用はいかがですか。

能原氏
 決してないわけではありません。これは、いろいろなことに使える技術です。(ソーラー充電だけでの使用は)通信手段をLTEにすると、ウェアラブルでは小さくてとてもまかないきれませんが、Bluetoothレベルに抑えばなんとかなります。用途は、いろいろとありますね。

――欧州はSIerを通じて、法人向けだけでの提供と聞いていますが、他の市場のようにコンシューマー向けに挑戦しないのでしょうか。

能原氏
 そのためには、マーケティング的なプロモーションをいっぱいやる必要があります(ので、コスト的に見合わない)。特徴を出していただけるSIerと一緒に、と考えています。

Windows 10 Mobileはどう取り組む

――Windows 10 Mobileスマートフォンに関しては、いかがですか。

能原氏
 モノづくりの観点で言えば、ハードウェア的にはほとんど(Androidから)変更なくできるようになりました。載せるか、載せないかは、お客様のデマンド次第です。今年に入り、日本でもいくつかのメーカーが出されることになりましたが、私どもの認識としては、もはやWindowsは特別なものではありません。

 1年前は、Windowsをやっていることそのものにバリューがありましたが、それはありません。(マイクロソフトさんの方針や市場の反応を)勉強しながら、対応を決めていきたいですね。

――本日はありがとうございます。

石野 純也