【Mobile World Congress 2015】

クアルコム、次世代チップ「Snapdragon 820」や最新技術を紹介

Aberle氏

 2015 Mobile World Congressにおいてクアルコムはプレスカンファレンスを開催し、CEOのDerek Aberle氏が同社の最新の取り組みを紹介した。

 まず通信技術の分野では、今後のデータトラフィックの増大に対応するべく、LTE-UとLTE/Wi-Fiのアグリゲーション技術に取り組んでいることを紹介する。いずれも免許が不要な周波数帯域(Unlicensed Band、アンライセンス周波数帯)での通信を免許を要する通常のLTEと組み合わせることで、足りない帯域幅を補うという技術。5GHz帯などの利用が想定されている。

 とくにLTE-UはLTE-LAAとも呼ばれ、LTEの規格の一部として標準化されていて、2016年には一部の事業者が商用サービスを開始するという。クアルコムではこうしたアンライセンス周波数帯に対応したチップセットなども開発しているほか、アルカテル・ルーセントやT-Mobileとともに、アンライセンス周波数帯の利用を推進していくことを発表している。

LTE-UとLTE/Wi-Fiのアグリゲーション
MWCではLTE-U関連でさまざまな取り組みが紹介されている
モバイル隣接分野にもクアルコムは製品を提供している

 モバイルに隣接する分野でも、クアルコムはさまざまな分野に製品やソリューションを提供している。Aberle氏はその中から自動車分野とウェアラブル分野、ヘルスケア分野を取り上げ、さまざまな製品を投入していることを紹介する。

 スマートフォン分野では、クアルコムが2014年に9億1900万のMSMチップセットを出荷し、第5世代の3G/4Gマルチモードモデムを発表したこと、最大600Mbpsのカテゴリー11のLTEデモを公開することなどを紹介し、スマートフォン分野をリードするポジションにいるとアピールする。

 Snapdragonチップセットについては、ハイエンド向けだけでなく、あらゆる層に製品を提供しているとも語る。たとえばミドル層向けの新製品であるSnapdragon 620やSnapdragon 425には「X8」というモデムが搭載されていて、下り最大300MbpsのLTE通信やMIMOのWi-Fiにも対応するという。

スマートフォン分野ではチップセットなどで業界をリード
上から下まで幅広い層をサポートするSnapdragonのラインナップ

 さらに発展途上国市場向けにはチップセットだけでなく、メーカーが安価にスマートフォンを開発できるリファレンスデザイン、「QRD」を提供していることも紹介。QRDはAndroidだけでなくWindows Phoneのスマートフォンにも適応可能で、すでに20カ国以上の国でQRDを利用したスマートフォンが登場しているという。

VRディスプレイ「Vive」を手にするHTCのChou CEO

 ハイエンド層向けとしては、最新のSnapdragon 810がさまざまなメーカーに採用していると語り、ゲストとしてHTCのCEOであるピーター・チョウ氏も登場した。チョウ氏はSnapdragon 810を搭載する最新モデル「HTC One M9」やVRディスプレイ「Vive」を紹介しつつ、「今後もクアルコムと協力していく」と語った。

 さらにクアルコムが開発中のユニークな要素技術として、業界初のモバイル向けに開発された超音波3次元指紋センサー技術も発表された。同技術を採用した製品は、今年の後半には登場するという。

3次元指紋センサー技術
3次元指紋センサー技術の利用イメージ
Zerothについて

 最後に次世代チップセット向けの機能として、モバイル機器上でコグニティブ・コンピューティングを実現するプラットフォーム「Zeroth」も発表された。コグニティブ・コンピューティングとは、膨大なデータベースを元にモノや事象を認識・判断するという、いわば人間の思考をコンピュータで再現することを指す言葉。データ量も処理量も膨大になるため、大型サーバーが用いられることの多い分野だが、Zerothはモバイル機器上でも実現できるスケーラブルなシステムとしてデザインされている。

 Zerothにはさまざまな機能があるが、カンファレンスの中では映像認識の機能を使い、カメラに風景写真や静物写真、人物などを写すと、被写体がどのようなものか、どのような状態かを認識し、画面に表示するというデモが行なわれた。

Zerothの例。建造物・屋外・空と雲が認識されている
Zerothの例。食べ物・屋外と認識されている
手首にはめられた腕時計、とまで認識されている
人物は識別も可能で名前が表示されている
次世代チップセットについて

 このZerothは次世代のプレミアム向けチップセット、Snapdragon 820向けの機能となる。Zerothの発表にあわせ、Snapdragon 820の先行情報公開もなされた。Snapdragon 820は今年後半にサンプルが登場するもので、細かいスペックは明らかにされなかったが、独自カスタムの「Kryo」という64bitコアを搭載し、FinFETプロセスを採用しているという。Aberle氏は「プレミアム層を再定義する」とアピールした。

白根 雅彦