【Mobile World Congress 2015】
クアルコムはLTE高速化の切り札、「LTE-U」などを展示
(2015/3/5 14:14)
クアルコムはMobile World Congress(MWC)において、さまざまな要素技術の展示を行っている。MWCは業界関係者をターゲットとし、一般消費者はあまり入場していないこともあり、クアルコムでの展示はかなり専門性が高く、コンシューマ製品は同社製品の採用例の参考展示程度。業界をリードする企業が研究開発中の最先端の技術が多数展示されているため、来場者の多い、人気のブースだ。
通信技術の分野では、LTE-U(LTE-Unlicensed)やLTE/Wi-Fiのアグリゲーションの展示が注目を集めていた。いずれも新周波数帯を使うことなく、現行のLTEを高速化させる切り札として、クアルコムなどが強力にプッシュしている通信方式だ。
LTE-Uは5GHz帯など免許の要らない周波数帯域でLTEを使い、通常のLTEとキャリアアグリゲーションすることで、広い帯域=速い通信速度を確保しようという通信方式。LTE-LAAの呼び名で標準化がされていて、リリース10以降のLTE規格に盛り込まれるという。日本ではNTTドコモがファーウェイと共同で実証実験を行った実績がある。
LTE/Wi-Fiのアグリゲーションは、Wi-Fi(無線LAN)アクセスポイントを携帯電話事業者のコアネットワークに接続することで、携帯電話事業者のLTEネットワークの一部のようにWi-Fiを利用するという通信方式。通常の公衆無線LANは一般のインターネット回線に直結しているため、LTE接続時とはIPアドレスが違ったり、ハンドオーバーのようなことができないが、LTEとWi-Fiのアグリゲーションではもっとシームレスに利用できる。こちらはリリース13での標準化が予定されているが、すでに韓国KT社が商用サービス化に名乗りを上げているという。
クアルコムのブースではこれらの通信方式について、実際に米サンディエゴのクアルコムキャンパス内にある屋外試験用ネットワークを、リアルタイムでモニタリングできるという形式での展示が行われていた。LTE-UではWi-Fiと同じ5GHz帯を使うので、既存のWi-Fiとの干渉や全体の効率低下が懸念されるところだが、そうした部分も実際の環境でどのようになるかがわかる展示となっている。
屋外試験用ネットワークでは、LTE/Wi-Fiのアグリゲーションを行う6つの基地局と、単独のWi-Fiアクセスポイントが運用されている。ここでLTE/Wi-Fiのアグリゲーションを行っている基地局を順次、LTE-Uに切り替え、最後にWi-Fiアクセスポイントをオフにしていき、それぞれのスループットがどうなるかをモニタリングする。
LTE-Uに切り替わると、その基地局はスループットが倍増する。これはWi-FiよりもLTEの方が周波数利用効率が高いことによる。一方でWi-Fiアクセスポイントには影響がでないため、全体のスループットはどんどん向上していく。最後にWi-Fiのアクセスポイントをオフにすると、LTE-Uの基地局のスループットはさらに向上していた。
通信方式のデモとしては、カテゴリー9のLTEで20MHz帯を3波使ったキャリアアグリゲーションのデモも行われていた。デモ環境は有線接続だったが、それだけにスペック数値に近い実行速度が得られていた。ただし20MHz帯を3波確保できるネットワークは世界的に見ても、現在の携帯電話向け周波数では、まだ難しいと思われる。
カテゴリー11で導入される高次変調方式の追加による高速化のデモも行われていた。現在の64QAMまでの方式だと、帯域幅60MHzを使って最大450Mbpsとなるが、カテゴリー11で導入される256QAMを使うと、同じ帯域幅で最大600Mbpsを実現できる。といっても、256QAMはよりノイズに弱い方式となるため、基地局に近いなど電波状況が良い環境でしか効力を発揮できず、電波状況の悪い場所では64QAMやそれ以下の変調方式を利用することになる。
通信以外の技術しては、MWC初日のプレスカンファレンスでDerek Aberle氏が披露した超音波を使った3次元指紋認証技術も、試験機によるデモが行われていた。この技術では指をスワイプなどさせることなく、読み取ることが可能で、デモ機のセンサー部分に指を置くだけで指紋が画像として表示されていた。センサー部分は剛体のボディの内側に仕込むめるとのことで、試験機の1つはフロントパネルの下部中央に外側からではまったく見えない形で実装されていた。同技術は既存のSnapdragonで処理でき、採用製品が2015年後半には登場するという。
要素技術としては、より高い電圧でスマートフォンを充電する「Qualcomm Quick Charge 2.0」も展示されていた。これは充電器とスマートフォンが両方とも対応している場合、互いに通信して対応電圧を確認した上で、より高い電圧を出力するというもの。通常のUSBは5Vまでしか出力できないが、同技術では9Vや12V、20Vにも対応する。この技術は今回のMWCで発表されたGalaxy S6などにも採用されているが、NTTドコモのスマートフォンでは昨夏より「急速充電2」として標準的に搭載されている。