【Mobile World Congress 2015】

「ソニーにとって、依然としてモバイルは重要」

ソニー平井社長、ソニーモバイル十時社長が語ったXperiaの今とこれから

 ソニーモバイルは3月2日(現地時間)に、Mobile World Congressの会場内でプレス向けイベントを開催した。同イベントには、ソニーのCEOである平井一夫氏が登壇。続けてソニーモバイル 代表取締役社長の十時裕樹氏が平井氏に招かれて登壇、同社の方針を語った。

ソニーの平井社長
ソニーモバイルの十時社長

 トップバッターを飾った平井氏は、2月18日に開催された中期経営方針説明会での内容に触れ、「2週間前に、ソニーモバイルがどのように変化するかを発表した」と語る。同説明会では、モバイル事業を「事業変動リスクコントロール領域」に設定しており、事業環境の変動によっては、他社との提携や売却も辞さない考えを示していた。

 一方で平井氏は、「1つだけ変わらないことがある。それは、モバイルがソニーにとって、とても重要な事業だということだ」と強調。経営再建後は、モバイルはソニーのビジネスをリードする存在であることを語った。

 平井氏に続いて登壇した十時氏は、ソニーモバイルの強みを「ソニーの歴史やテクノロジー」と「ベンチャースピリッツ」だとする。十時氏はソニー銀行などの設立に関わったバックグラウンドがあり、ソニー社内のベンチャーの立ち上げも行い、スマートロックの「Qrio」や、電子ペーパーを使った腕時計の「FES Watch」が、実際に製品として発表されている。十時氏はこうしたベンチャースピリッツを、ソニーモバイルにも注入していく方針だ。

「Xperia M4 Aqua」を紹介する十時社長
ソニーのテクノロジーに加え、ベンチャースピリッツも強みだという

 また、十時氏は新たに発表された「Xperia M4 Aqua」を「スーパーミッドレンジ」と評する。フラッグシップより価格を抑えながら、同価格帯の他社製品よりも優れた機能、デザインを持つというのがこのジャンルの製品だ。十時氏は、こうしたカテゴリーの製品がグローバルでのボリュームゾーンになっていくという見方を示している。

同イベントに合わせ、「Xperia Z4 Tablet」と「Xperia M4 Aqua」が発表された

「スーパーミッドレンジ」とは

 イベント終了後には、十時氏が報道陣の取材に応えた。主な一問一答は以下のとおり。

――「スーパーミッドレンジ」という概念を示していたが、具体的にはどうようなものか。

十時氏
 ワールドワイドではここ(Xperia M4 Aquaなど)がボリュームゾーンで、オペレーターの意見を聞いてみてもそうだが、やはりミッドレンジが求められている。「Value for money」(支払った金額以上の価値があることを示す英語の慣用句)で、コンシューマーにどういったものを作っていけるのか。あえて、スーパーミッドレンジという言い方をした。グローバルで、中心になるモデルを絞っていくが、モバイルは生活必需品で、(ほかの製品をつなぐ)ハブやターミナルの要素が強くなるのではないか。

――これまでも、ミッドレンジをやっていたが、そことの違いは。

十時氏
 今後を楽しみにしてほしい。何を尖らせ、何をそぎ落とすのかが大切になる。

――フラッグシップは年2回から変えるのか。

十時氏
 国ごと、オペレーターごとに異なるが、ワールドワイドでは年1回というコンセンサスができつつある。1つの端末を長く使うようになってきていることもあるが、そこは国やオペレーターによって考える。

――So-netと組んでXperiaを出すというが、そこについてのコメントは?

十時氏
 So-netはMVNOやMVNEをやっている。そことうちのデバイス(Xperia)を使って一緒にやるのは、グループとしてとても自然な行為。

――イベントでは新ビジネスに言及があったが、ソニーモバイルでどのようなものを出すのか。

十時氏
 どういうものかについては、時間が経てばおいおい明らかになる。ソニーモバイルは、新しいことをやる文化の触媒になれるのではないか。通信機能を持つデバイスは(スマートフォン以外にも)非常にたくさんある。どういう価値を提供できるのかを、(こだわって)やっていきたい。ただ、スマートフォンは非常によくできたターミナル。まずはその周りに、どういうプロダクトを並べるかだと思う。

――「Xperia Z4 Tablet」の勝算は?

十時氏
 プレミアムなタブレットは数を追うのではなく、限られた地域やオペレーターとやっていきたい。

――日本では発売されるのか。

十時氏
 それについては、おいおいお話させていただきたい。

――日本で求められるハイスペックと、海外のミッドレンジにずれが出てきているのではないか。

十時氏
 いいご指摘で、日本はかなりハイスペックに寄っている。日本のプロダクトをそのままグローバル展開するのは難しい。

――平井CEOが、提携や売却の可能性も示唆していたが、コメントは。

十時氏
 利益が出ていないと、そういう話になるということ。私はターンアラウンド(経営再建)に注力して、プロフィタブル(収益性がある事業)にしていく。

――イベントでは、端末を見下ろすのではなく、上を向くようなユーザーエクスペリエンスを作りたいと言っていた。具体的にはどうするのか。

十時氏
 ウェアラブルは1つの可能性だと思う。ただ、今の(ウェアラブル端末の市場)規模はスマートフォンの1/50。それをどこに持っていくのか。現時点では、B2Bの方がいいのかもしれない。

――ありがとうございました。

石野 純也