【Mobile World Congress 2013】

ソニーモバイル鈴木氏が語る「Xperia」のロードマップ

ソニーモバイルの社長兼CEO、鈴木国正氏。ソニーの執行役 EVP(エグゼクティブ・バイス・プレジデント)も兼任する

 ソニーモバイルは、社長兼CEOの鈴木国正氏が出席するラウンドテーブルを開催、報道陣からの質問に答えた。

 「Mobile World Congress 2013」の会期中に開催されたプレスカンファレンスで、「ブレークスルーの1年」を宣言したソニーモバイル。「この1年、体力をつけえるという意味で、地道にやってきたことには自信がある」と語り、Xperia Zのようなフラッグシップ端末の開発の裏で、販売やオペレーターとの関係強化に取り組んできたことを明かした。販売拡大に向けた、オペレーションの改善も行った。

「世界を相手にするという意味では、ソニーそのものがそういう会社なので慣れていはいるし、ほかのどの企業よりも世界に張り付いている。ソニーと一緒になったことで力はついているが、それ以上に他社のスマートフォンで強いところは、やはりオペレーションがしっかりできている。我々自身も、速いサプライチェーンとディマンド(需要)が一緒に動けるような体制を作ってきた」

 こうした積み重ねをした上で、1月の米国での展示会「INTERNATIONAL CES 2013」で「Xperia Z」を、そして今回の「Mobile World Congress」で「Xperia Tablet Z」を発表したというわけだ。欧州でも発売が開始されたXperia Zは好調なスタートを切り、「1人1人が自信をつけ始めているところ」だという。

MWCでグローバルに向けて発表された「Xperia Tablet Z」。
CESで発表され、世界各国で大きな反響を呼んでいる「Xperia Z」。日本でもドコモから発売され、高い人気を誇る

 報道陣との一問一答は以下のとおりだ。

――鈴木氏が就任して、ソニーとソニーモバイルの壁を壊したことが大きいと聞いているが、苦労した点などはあったか。

鈴木氏

 昨年4月1日に平井がヘッドになったとき、組織の建てつけとしてUX(ユーザー体験)・商品戦略・クリエイティブプラットフォーム(ソニーブランドの製品を統一してUXを策定する部署のこと)ができた。もちろん前から話はしていたし、そこまで具体的な組織としてではなくても動いてはいたが、それを形にしたということ。確かに3年も4年も前の話をすれば縦割りな部分はあったかもしれないが、この段階になればあるものを横に展開するのは当たり前のことだ。

――サービスとの連携や融合は、どのように進めていくのか。

鈴木氏

 具体的には、プレスカンファレンスでお見せしたような(Music Unlimitedが統合され、夏にリリースされる)メディアプレイヤー(Walkmanアプリ)がある。メディアプレイヤーは必ず使うもので、使い勝手がいいことは非常に大切。「Xperia Z」の段階でも作りこんではいるが、そこにサービスがシームレスにつながっていく。メディアプレイヤーとサービスがシームレスにつながれば、彼ら(サービス側の人間)にとってもXperiaが道筋を作ることになる。

 今まではそれがバラバラだった。私もMusic Unlimitedを使っているが、別々に契約していた。これからはメディアプレイヤーを開けばサービス側に行けて、戻ってくることもできる。この経験を作ることが大切だ。

――ここ何年かはiPhoneが業界のベンチマークになっていたと思うが、アップルの変調も伝えられている。キャッチアップはどのようにしていくのか。

鈴木氏

 他社のことについてはあまりコメントしたくないが、ひとつは心地よい使い勝手とサービス。メディアプレイヤーの話だと、これはシームレスに気持ちよくつながる。アップルは、早いうちにそれを作りこんできた。そういう意味では、我々自身も使い勝手のよさを定義して進めていく。また、デザインと所有欲というのは必ずある。商品を持ったときの所有感、美しさについての意識も我々の中にある。

――テレフォニカとソニーモバイルが共同でFirefox OSについて取り組むという発表があったが、いつごろ、どこで商品が登場するのか。

鈴木氏

 まず、あれはあくまで技術提携の話。テレフォニカとして、戦略的にあのOSを商品化していきたいということだと思うが、我々とは技術の議論をしっかり進める。商品や、マーケタビリティを検討するのはこれからで、今のところは未定だ。

――他キャリアの展開もあるのか。

鈴木氏

 すべての可能性はある。

――かつてのXperiaはWindows Mobileでやっていて、Symbianなどのプラットフォームを持っていた。そのリソースをAndroidに集中させてきた経緯がある中で、このタイミングで別のOSを検討する理由はどこにあるのか。

鈴木氏

 今すぐに、いくつかのプラットフォームをやる体力があるわけではない。一度経験していることでもあり、そういった発表をしたつもりもない。ただ、技術的な考察はしなければいけない。ソニーモバイルは、ほかのオープンOSもWindows Phoneも、すべてに対してドアをオープンにしているし、フィジビリティースタディー(実現の可能性に関する調査)はしている。前から言っていることだが、OSの可能性は見ていかなければいけない。

――マルチスクリーンの中で、どういった戦略を描いているのか。

鈴木氏

 ひとつはUXで、共通化されていくことが大事。これが大きな競争力になる。また、「TV SideView」のようなアプリの作りこみがよくなっていけば、テレビとタブレット、スマートフォンの連携がさらに強くなる。

 NFC対応の商品も確実に増やしている。オープンな規格だが、ワンタッチをプログラムしているのは我々。全体として使い勝手がよくなっている。

――昨年は特にXperiaのラインナップが多く、どれがフラッグシップか分かりづらかった印象も受けた。

鈴木氏

 おっしゃっていることは、私も感じている。ポートフォリオは分かりやすく絞り込んでいくことになる。

――海外で出しているローエンド向けをやめるということもあるのか。

鈴木氏

 それはない。ローエンドも継続していく。

――VAIOが薄く軽くなり、Xperiaが高機能になると、かぶりが出てくる気がする。

鈴木氏

 今はそんなに悩むことはない。Windowsはどう見てもスレートであり、タッチでありの方向に向かっているが、VAIOにはプロダクティビティ(生産性)と、クリエイティビティ(創造性)がある。Windowsを使ったVAIOは生産性が高く、創造性を刺激するものを作れる。

――世界シェアの目標は。

鈴木氏

 トップ3のキープレイヤーになる。今はみんなで3位といった状況で、うちもデータによっては3位になったり4位になったりする。そこから抜け出た3位になろうとしている。もちろん2位でもいいが、現実的なところを言えば、しっかりとした3位になりたい。

――何年後という目標は。

鈴木氏

 特にない。それよりも、地域ごとにしっかりポジションを作りこむことが大事。グローバルで一気に何かをやっても上手くいかない。国ごとに、しっかりポジションを作っていく。

――100ドルスマホのような廉価版はありえるのか。

鈴木氏

 フラッグシップではUXの作りこみを行っている。これを徹底してやらない限りは、下のラインの話ができない。私自身もソニーに30年いる中で経験しているが、下から入って成功したことは一度もない。作りこむことのエネルギーも、プレミアムの商品で光ってくる。

――スマートフォンが成熟化しつつある中で、今後のXperiaはどこに向かうのか。

鈴木氏

 それぞれのカテゴリーで、徹底して技術投資していく。ハードに近いところのテクノロジーに、ソフトが入ることもあるが、これを磨き続ける。

 もうひとつがアプリでありサービス。これは顧客に近いところで、作りこみの仕方も長年サービスを続けてきてよく分かってきた。この部分を、もっともっと強くしていく。

 コネクティビティにもこだわりたい。商品と商品が話をして、つながることの心地よさを追求したい。これらをトコトンまでやれば、本当にいい商品ができると思っている。

石野 純也